↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
5/13

第五話 二人目の犠牲者

 第五話 二人目の犠牲者


 夜の森は静かだった。


 虫の声。


 風の音。


 木々のざわめき。


 三年前と何も変わらない。


 玲司は音も無く森を進んでいた。


 足跡を消し。


 気配を殺し。


 呼吸すら制御する。


 学校で見せる軽薄な笑顔は無い。


 そこにいるのは訓練された工作員だった。


 ◇


 目指す場所は決まっている。


 地下施設。


 傭兵達の拠点だった場所。


 爆発で崩壊したはずの場所。


「生き残りがいるなら必ず利用する」


 玲司は呟く。


 補給拠点。


 隠れ家。


 武器庫。


 理由はいくらでもある。


 ◇


 やがて森が開けた。


 崩れたコンクリート。


 地下施設の入口。


 三年前と比べてかなり崩れている。


 しかし残っていた。


 玲司はしゃがむ。


 地面を確認した。


 そして目を細める。


「やっぱりな」


 足跡。


 それも複数。


 誰かが利用している。


 しかも最近だ。


 ◇


 その時だった。


 ガサッ。


 玲司は反射的に物陰へ飛ぶ。


 数秒後。


 一人の男が現れた。


 軍服。


 深い傷跡。


 無精髭。


 手にはライフル。


 昼間目撃された人物だった。


 ◇


(いたな)


 玲司は観察する。


 記憶を探る。


 だが思い出せない。


 三年前の傭兵達の中にはいなかった。


 少なくとも直接会っていない。


 新しい人間だ。


 あるいは後から来た者。


 ◇


 男は周囲を警戒する。


 そして小さな無線機へ向かって話し始めた。


「こちらハウンド」


 英語だった。


「予定通り進行中」


 玲司の表情が変わる。


 進行中?


 つまり事故ではない。


 ◇


「被験者の確保はまだだ」


 男が続ける。


「だが候補は見つかった」


 被験者。


 その単語に嫌な予感を覚える。


 ブーストだ。


 間違いない。


 ◇


「必要なら処分する」


 無線が切れる。


 男は施設へ入っていった。


 玲司は追いたかった。


 しかし。


 ◇


 ドォォォン!


 遠くで悲鳴が響いた。


 キャンプ方向。


 玲司の顔色が変わる。


「しまった!」


 ◇


 全力疾走。


 森を駆ける。


 枝を飛び越える。


 崖を下る。


 身体能力は高校生離れしていた。


 三年間の訓練の賜物だ。


 ◇


 キャンプが見えてきた。


 異変は遠目にも分かった。


 悲鳴。


 怒号。


 泣き声。


 大勢が騒いでいる。


 ◇


 玲司が飛び込む。


 そして。


 光景を見る。


 ◇


 死体だった。


 また。


 血だまり。


 倒れる男子生徒。


 胸に深々と刺さったナイフ。


 ◇


 二人目。


 ◇


「健吾!」


 誰かが叫ぶ。


 玲司は目を見開いた。


 森崎健吾だった。


 サバイバルオタク。


 昨日まで生きていた男子生徒。


 ◇


 その時。


 姫川が震える指を伸ばした。


「やっぱりよ……」


 皆が振り向く。


 その先。


 ◇


 李美月が立っていた。


 死体のすぐ近くに。


 ◇


 空気が凍る。


 ◇


「また……」


 高城が呟く。


 絶望したような顔。


「おい、嘘だろ……」


 久我ですら青ざめる。


 ◇


 美月は首を振った。


「違う!」


 涙を流す。


「違うの!」


 だが。


 もう誰も聞いていなかった。


 ◇


 一回目は偶然。


 二回目は?


 ◇


 人間は偶然だと思わない。


 ◇


「二回だぞ」


 男子生徒の一人が言った。


「さすがにおかしいだろ」


「でも!」


 美月が叫ぶ。


「本当に私じゃ……」


 ◇


「黙れ!」


 怒鳴り声。


 女子が後退る。


 男子達も険しい顔になる。


 恐怖が限界だった。


 ◇


「もう無理だ」


「危険すぎる」


「閉じ込めろ」


「監禁しよう」


「縛った方がいい」


 ◇


 次々と声が上がる。


 玲司は見ていた。


 最悪の流れだ。


 ◇


 集団心理。


 恐怖。


 生贄探し。


 ◇


 犯人が見つからない時。


 人間は誰かを犯人にしたがる。


 ◇


 そして。


 ついに。


 誰かが口にした。


「死刑にするべきじゃないか」


 ◇


 静まり返る。


 だが誰も即座には否定しない。


 ◇


 教師は泣いているだけ。


 高城も混乱している。


 久我は反対したいが少数。


 ◇


 美月は震えていた。


 絶望した顔だった。


 三年前と同じ。


 助けを求める目。


 ◇


 玲司は静かに拳を握る。


 限界だった。


 ◇


 その時。


 暗闇の森の奥。


 誰にも気付かれず。


 一人の男が笑っていた。


 傷だらけの傭兵。


 ◇


「そうだ」


 男は呟く。


「もっと疑え」


 ◇


 その手には。


 小瓶が握られていた。


 中には青い液体。


 人を怪物へ変える薬。


 ◇


 ブースト。


 ◇


 そして男は笑う。


「実験は成功だ」


 ◇


 一方で玲司は決意していた。


 遊び人ごっこは終わりだ。


 もう時間がない。


 このままでは美月が殺される。


 ◇


 次の夜。


 玲司はついに動き出す。


 暗殺者として。


 真犯人を狩るために。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。