表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
7/18

第7話 皇太子の苛立ち

読みに来てくださってありがとうございます。


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


それでは本編をどうぞ。

部屋へ戻った美桜は、机の上に黄色い花を置いた。


「綺麗だなぁ……」


福寿草によく似た花。


この世界では違う名前なのかもしれない。


美桜は花を見つめながら、今日の出来事を思い返していた。


ユリウス。


不思議な人だった。


会話は続かないし。


何を考えているのか分からない。


でも。


優しかった。


「王宮も同じだ。誰も信用するな」


あの言葉が頭に残っている。


もしかして。


私に忠告するために呼び出したのかな。


美桜はそっと花に触れた。


ユリウスは何かを知っている。


そんな気がする。


「用心しないとね……」


小説の未来は変わっていない。


ユリウスは毒殺される。


そして国は滅ぶ。


未来を知っているのは自分だけだ。


もっと情報を集めなければ。


犯人を見つけるためにも。


未来を変えるためにも。


「そうだ」


美桜は花を持ち上げた。


「押し花にしようかな」


栞にしてもいいかもしれない。


そんなことを考えている頃。


王城では――。


◇ ◇ ◇


「第二皇子殿下が聖女様を庭園へお呼びになったそうです」


侍従の報告を聞いた瞬間。


バンッ!!


カイルは机を叩いた。


侍従がびくりと肩を震わせる。


「何だと!?」


「は、はい……」


「二人きりか!?」


「そのようです」


面白くない。


非常に面白くない。


カイルは立ち上がった。


聖女は自分の婚約者になるはずだ。


なのに。


なぜユリウスが呼び出す必要がある。


「ユリウスめ……!」


昔からそうだった。


父王はユリウスを褒める。


家臣もユリウスを褒める。


国民もユリウスを褒める。


神に愛された第二皇子。


誰もがそう呼ぶ。


「今度は聖女までもか!」


バンッ!!


再び机を叩く。


「殿下、机が……」


「黙れ!」


侍従は心の中で泣いた。


また始まった。


皇太子の暴走である。


「まさか聖女の力を自分のものにするつもりか!」


「い、いえ、そのような話は……」


「そうはさせん!!」


カイルは勢いよく部屋を飛び出した。


◇ ◇ ◇


コンコン。


部屋の扉が叩かれた。


「聖女」


聞き覚えのある声だった。


美桜は嫌な予感がした。


扉を開ける。


そこにはカイルが立っていた。


「私の愛しき婚約者よ!」


開口一番がそれだった。


まだ会って数日。


婚約もしていない。


なのにこの男は何を言っているのだろう。


美桜は殴りたくなる気持ちを必死に抑えた。


「婚約者ではありません」



「……何?」


カイルの笑顔が固まった。


「私は婚約を受けておりません」


「だが伝統で――」


「お断りします!!」


ズバッ。


遠慮なく切り捨てる。


カイルが固まった。


しばらく固まった。


本当に固まった。


「なぜだ!?」


数秒後、ようやく復活した。


「私は皇太子だぞ!?」


「知っています」


「将来の国王だぞ!?」


「それも知っています」


「ではなぜだ!?」


美桜は小さくため息をついた。


断罪イベント。


ユリウス毒殺。


国の滅亡。


言えるわけがない。


「今は聖女としての役目を優先したいんです」


「役目?」


「はい」


美桜は真面目な顔になった。


「私はこの国のことを何も知りません」


カイルが黙る。


「聖女の仕事も」


「歴史も」


「貴族のことも」


「王宮のことも」


「何も分からないんです」


それは事実だった。


召喚されてからまだ日も浅い。


誰も教えてくれなかった。


部屋を与えられ。


婚約を申し込まれ。


それだけである。


「 …………… 」


カイルは考え込んだ。


そして。


「あ」


美桜は思った。


今気付いたな、この人。


「確かにそうだな」


遅い。


とても遅い。


「家庭教師を付けよう」


「本当ですか?」


美桜の顔が明るくなる。


「助かります!」


その笑顔を見て。


カイルは少しだけ満足した。


だが。


次の瞬間。


今日の報告を思い出す。


――第二皇子殿下が聖女様を庭園へお呼びになったそうです。


カイルの眉がぴくりと動いた。


「そういえば」


「はい?」


「ユリウスとは何を話した」


美桜は首を傾げる。


「庭園を案内してもらいました」


「それだけか?」


「毒花の話とか」


「毒花?」


「あと花の話とか」


「花?」


カイルはますます面白くなかった。


なぜだろう。


内容はどうでもよさそうなのに。


面白くない。


非常に面白くない。


「……そうか」


返事をしながら。


カイルの胸の中では。


ユリウスへの対抗心が静かに膨らみ始めていた。

読んでくださってありがとうございます!


毎日少しずつ更新しています。


「続きが気になる!」と思っていただけたら、とても嬉しいです。


感想や応援も励みになります。


また次回お会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ