第5話 断罪されるのは私でした
読みに来てくださってありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは本編をどうぞ。
翌朝。
美桜は机の上に紙を広げていた。
「よし」
未来を変える。
そう決めた。
問題は方法だ。
美桜は紙に大きく書く。
ユリウス毒殺事件
そしてその下に。
犯人 ?
動機 ?
方法 ?
時期 ?
「うわぁ……」
見事に全部分からない。
美桜は机に突っ伏した。
「詰んでるじゃん……」
ふと。
別のことを思い出す。
「あ」
そういえば。
聖女断罪イベント。
確か。
ユリウス毒殺事件の前だったはずだ。
「ん?」
「ちょっと待って」
「聖女断罪…」
美桜は固まる。
「断罪される聖女って……私?」
怖っ。
思わず肩を抱く。
昨日まで普通の高校生だったのに。
気付けば聖女。
しかも将来断罪予定。
意味が分からない。
「断罪イベントっていつだっけ……」
記憶を探る。
だが。
思い出せない。
思い出せそうで思い出せない。
「肝心なところが抜けてるんだよなぁ……」
美桜はため息をついた。
そして立ち上がる。
「少し外を歩こう」
部屋にいても何も思い出せない。
気分転換も必要だ。
美桜は部屋を出た。
◇ ◇ ◇
実際に歩いてみて分かった。
王城は想像以上に広かった。
高い天井。
長い廊下。
大きな窓。
窓の外には美しい街並みが広がっている。
雑談している侍女たち。
眠そうに立つ兵士。
庭の手入れをする老人。
忙しそうに食事を運ぶ使用人たち。
皆。
普通に生きていた。
笑って。
働いて。
それぞれの日常を過ごしている。
「本当にいるんだな……」
思わず呟く。
ここは小説の中の世界。
そう理解していたはずなのに。
こうして人々を見ていると。
ようやく実感が湧いてきた。
この人たちは。
未来に国が滅ぶことを知らない。
ユリウスが死ぬことも。
私が断罪されることも。
何も知らない。
「この人達を救う……」
美桜は空を見上げた。
「ユリウス皇子を救う……」
そして苦笑する。
「私、普通の高校生なんだけどなぁ」
本当に。
そんなことができるのだろうか。
「あー……」
ふと。
あの女性の顔を思い出した。
召喚される前に会った。
銀色の髪の綺麗な人。
『私のユリウスを助けてくれない?』
あの人。
やっぱり神様だったのかな。
『きっと貴方ならできる』
そう言っていた。
「いや、何を根拠に?」
美桜は思わずツッコんだ。
普通の高校生なんだけど。
成績も普通。
運動も普通。
聖女なんてやったことない。
当たり前だけど。
「ほんと、何で私だったんだろ」
答えは返ってこない。
だけど。
ここまで来てしまった以上。
もう逃げられない。
美桜はふっと笑った。
「いいよ」
神様に向けてか。
あの女性に向けてか。
それとも自分自身に向けてか。
「来たからには、期待に応えてあげる」
そして拳を握る。
「見てなさい」
「運命なんか、ひっくり返してやるんだから」
その時だった。
「聖女様」
後ろから声がした。
振り返る。
神官だった。
「あれ?」
「どうしたんですか?」
神官は軽く頭を下げる。
「第二皇子殿下がお呼びです」
美桜は目を瞬いた。
「ユリウス様が?」
「はい」
神官は穏やかに頷く。
「庭園をご案内したいとのことです」
庭園。
何か用なのかな?
昨日会ったばかりなのに。
どうしてだろう。
分からない。
だけど。
美桜は小さく笑った。
「すぐに行きます」
未来を変える。
そのためには。
まず。
ユリウスという人を知らなければならない。
そう思いながら。
美桜は神官の後を追った。




