第4話 私だけが知る未来
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それでは本編をどうぞ。
「無理はするな」
たった一言なのに。
なぜか頭から離れなかった。
美桜はベッドへ倒れ込む。
神殿から戻ってきたばかりだった。
広い部屋。
ふかふかのベッド。
豪華な家具。
昨日まで高校生だった自分には落ち着かない空間だ。
「好きにするといい、か……」
思い出してしまう。
ユリウスの顔。
紫色の瞳。
少しだけ優しくなった表情。
そして。
「災難だったな」
その言葉。
昨日から初めてだった。
自分の気持ちを理解してくれた人は。
「いい人だったなぁ……」
思わず呟く。
少なくとも。
カイルよりはずっと。
すると。
ふと違和感を覚えた。
「あれ?」
美桜は身体を起こした。
待って。
私は何か忘れている。
大事なことを。
ものすごく大事なことを。
ユリウス。
第二皇子。
神に愛された皇子。
そして――
「あ」
思い出した。
小説だ。
昨日読んだ小説。
美桜は顔を青くした。
「そうだった……!」
慌てて記憶を掘り起こす。
『神に愛された皇子と聖女の恋』
読んで損した小説。
あの意味不明な終わり方の。
「えっと……」
美桜は指を折りながら整理し始めた。
まず。
自分。
聖女。
皇太子カイルの婚約者。
これは確定。
そして。
神に愛された第二皇子ユリウス。
ここまでも確定。
問題はここからだ。
「確か……」
物語後半。
聖女断罪イベントが発生して…
ユリウスが毒殺される。
誰がやったかは書かれていなかった。
ただ。
突然死んだ。
そして。
神が激怒した。
「意味わかんないよね」
普通。
犯人を探すだろう。
なのに。
あの神様。
国を沈めた。
理不尽すぎる。
「でも……」
美桜の表情が真剣になる。
理不尽でも。
現実になる。
ここは小説の世界なのだから。
ユリウスが死ねば。
神が怒る。
国が滅ぶ。
「王都崩壊」
「洪水」
「国土の半分消滅」
「数十万人死亡」
口にするだけで恐ろしい。
そして。
一番問題なのは。
「いつ死ぬんだっけ……?」
美桜は考え込んだ。
小説の記憶をたどる。
確か。
物語終盤だった。
でも。
正確な時期は覚えていない。
「最悪だ……」
肝心なところが曖昧だった。
そもそも。
あの小説。
設定はあるのに説明が足りない。
伏線も回収しない。
犯人も分からない。
本当に読んで損した。
「いや」
美桜は首を振る。
今は文句を言っている場合じゃない。
未来を知っているのは自分だけ。
ユリウスが死ぬことも。
国が滅ぶことも。
誰も知らない。
「だったら……」
美桜は立ち上がった。
窓の外には王都の街並みが見える。
平和そのものだ。
笑っている人もいる。
働いている人もいる。
子どもたちもいる。
誰も知らない。
数ヶ月後、もしくは数年後。
この国が滅ぶことを。
「止めなきゃ」
小さく呟く。
まだ方法は分からない。
犯人も分からない。
どうすればいいかも分からない。
それでも。
一つだけ分かることがある。
ユリウスを死なせてはいけない。
それだけは絶対だ。
美桜は窓の外を見つめた。
そして。
ぎゅっと拳を握る。
「未来を変えなきゃ……」
こうして。
未来を知る聖女の戦いが始まった。
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