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【完結】小説のバッドエンドを回避するため恋愛お預けで孤児院通いをしていたら断罪されました。でも地下牢を抜け出して神に愛された皇子を救ったら、なぜか溺愛されています  作者: 杜英智
最終章 それぞれの未来

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第33話 最後の選択

読みに来てくださってありがとうございます。


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


それでは本編をどうぞ。

その頃。


ユリウスは執務室で書類に目を通していた。


王の容態は安定した。


そして。


次代の王はユリウスに決まった。


正直に言えば。


今でも実感がない。


いや。


実感がないのではない。


納得しきれていないのだ。


兄上が王になるものだと思っていた。


兄は兄なりにこの国を想っていた。


不器用で。


遠回りもした。


間違いも犯した。


それでも。


王になるために努力を続けてきた。


その姿を誰よりも知っている。


だからこそ。


今でも時々思う。


本当に私で良かったのだろうかと。


王も。


兄も。


ローゼン公爵も。


皆が私を選んだ。


正直に言えば。


少しだけ腹立たしくもあった。


勝手だな、と。


神もそうだった。


母上もそうだった。


気付けば。


いつも誰かに選ばれている。


だが。


ユリウスは小さく息を吐いた。


もう決まったことだ。


逃げるつもりもない。


王になるのなら。


この国を守ろう。


皆が託した未来を守ろう。


そして――


脳裏に一人の少女が浮かぶ。


いつも騒がしくて。


真っ直ぐで。


誰よりも優しかった少女。


美桜。


もし。


美桜がこの国にいてくれるのなら。


この国を守りたいと思える。


そう思った。


「ユリウス様」


側近が声を掛ける。


「こちらの書類です」


「そこへ置いてくれ」


その時だった。


コンコン。


扉が叩かれる。


「入れ」


そこに立っていたのは。


「ユリウス皇子」


美桜だった。


ユリウスはすぐに立ち上がる。


「美桜」


足早に近付いてくる。


「どうした」


「何かあったのか?」


美桜は少しだけ笑った。


「少し、いいですか?」


ユリウスは頷いた。


「ああ」


◇ ◇ ◇


二人は庭園を歩いていた。


柔らかな風が吹く。


色とりどりの花が咲いている。


見慣れた景色。


それなのに。


今日は少し違って見えた。


美桜は足を止める。


「ユリウス皇子」


「ん?」


美桜は少し迷った。


どう言えばいいのか分からない。


だが。


隠してもいけないと思った。


「セレスティア様に会ったの」


ユリウスの足が止まる。


「母上に?」


美桜は頷いた。


そして。


今日あったことを全て話した。


帰れること。


選ばなければならないこと。


一時間後に返事をすること。


話し終わる頃には。


二人の間に沈黙が落ちていた。


風だけが吹いている。


やがて。


ユリウスが口を開く。


「帰れるのか」


静かな声だった。


「うん」


「そうか」


それだけだった。


だが。


表情からは、何もわからない。


美桜の胸が痛む。


「ユリウス皇子は」


勇気を出して聞く。


「どうしてほしい?」


ユリウスは驚いたように振り返った。


しばらく考える。


そして。


静かに首を振った。


「分からない」


正直な答えだった。


「帰るなと言いたい気持ちはある」


美桜の胸が大きく鳴る。


「だが」


ユリウスは空を見上げた。


「お前には家族がいる」


「友人もいる」


「本来いるべき場所がある」


優しい声だった。


だからこそ苦しい。


「私は」


ユリウスは続ける。


「お前の人生を縛りたくない」


美桜は唇を噛んだ。


涙が出そうになる。


「でも」


ユリウスは少しだけ笑った。


「お前がいなくなるのは寂しいな」


「……想像以上に」


その言葉に。


美桜の涙腺が一気に緩んだ。


その優しさが。


胸にしみた。


ユリウスは少し困ったように笑った。


思えば。


初めて会った日から。


ユリウス皇子はずっと優しかった。


「災難だったな」


「無理はするな」


いつも。


私の気持ちを一番に考えてくれた。


危険な時は。


何度も体を張って守ってくれた。


私はずっと。


「ユリウス皇子を救わなきゃ」


それしか考えていなかった。


でも。


一緒に過ごす時間が増えるたび。


笑った顔を見るたび。


その優しさに触れるたび。


気付かないうちに。


私の心は。


ユリウス皇子でいっぱいになっていた。


しかも。


冷静に考えなくても。


顔が良すぎる。


反則だ。


あんな真顔で見つめられたら。


好きになるに決まってるじゃん……!


私は。


もっとずっと前から。


この人に惹かれていたんだ。


二人は並んで歩く。


沈黙は不思議と苦しくなかった。


しばらくして。


庭園の片隅に咲く黄色い花が目に入った。


初めて二人で話した日に見た花。


福寿草によく似た花だった。


懐かしい思い出。


美桜は空を見上げた。


この世界へ来てから。


本当に色々なことがあった。


断罪。


毒殺。


王位争い。


神。


前聖女。


毎日が大騒ぎだった。


「ユリウス皇子」


「なんだ」


「私ね」


美桜は笑った。


「最初は、毎日帰りたいと思っていた」


ユリウスは黙って聞いている。


「でも」


「今は違う」


「この国も好きになった」


「皆も好きになった」


そして。


美桜はユリウスを見る。


紫色の瞳。


いつも自分を支えてくれた人。


「貴方のことも」


言葉が止まる。


顔が熱い。


心臓がうるさい。


ユリウスは何も言わない。


ただ待っていた。


美桜は小さく笑う。


そして。


覚悟を決めた。


「大好きになりました」


(言っちゃった……。)


(私、言っちゃったぁぁぁ!!)


もう無理。


穴があったら入りたい。


静かな庭園。


風が花を揺らす。


ユリウスの目が大きく見開かれた。


美桜は泣きそうになりながら笑う。


「ここへ来て」


「貴方に会えて」


「本当に良かった」


涙が零れる。


止まらない。


ユリウスはそっと美桜の涙を指で拭った。


そして。


ゆっくりと美桜を抱き寄せた。


優しく。


壊れ物に触れるように。


温かい腕だった。


「私もだ」


耳元で声がする。


「美桜に会えて良かった」


「心からそう思う」


美桜は目を閉じた。


温かな腕の中。


安心する匂い。


鼓動。


その時。


ふわりと光が舞う。


時間だった。


美桜はゆっくり目を開く。


決めなければならない。


本当に。


最後の選択を。

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