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【完結】小説のバッドエンドを回避するため恋愛お預けで孤児院通いをしていたら断罪されました。でも地下牢を抜け出して神に愛された皇子を救ったら、なぜか溺愛されています  作者: 杜英智
最終章 それぞれの未来

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第34話 私の帰る場所

読みに来てくださってありがとうございます。


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


それでは本編をどうぞ。

青空の下。


ふわり。


優しい光が舞う。


美桜はゆっくりと目を閉じた。


時間だった。


セレスティアとの約束の時間。


ユリウスの腕の中。


温かな鼓動が聞こえる。


離れたくない。


そう思った時。


心の中から。


自然と言葉が溢れた。


――帰りたくない。


静かに目を開く。


自分でも驚くほど。


迷いは消えていた。


目の前にはユリウス。


不安そうな紫色の瞳が。


真っ直ぐ自分を見つめている。


美桜は小さく微笑んだ。


「決めました」


ユリウスが息を呑む。


「……そうか」


静かな声だった。


「帰るのか?」


美桜はゆっくり首を横に振る。


そして。


はっきりと言った。


「帰りません」


ユリウスの目が大きく見開かれる。


美桜は少し照れたように笑った。


「家族に会いたい気持ちは」


「嘘じゃありません」


「今でも大好きです」


少しだけ空を見上げる。


「でも」


「この世界にも」


「大切な人ができました」


「この世界の未来を」


「私はこれからも見ていたい」


そして。


ユリウスを見つめる。


頬を赤く染めながら。


少しだけ照れ笑いを浮かべた。


「それに……」


「まだ」


「お返事をしていませんでした」


ユリウスの紫色の瞳が大きく揺れた。


美桜は恥ずかしそうに笑う。


「ユリウス様」


「プロポーズ」


「お受けします」


その瞬間。


ユリウスの表情がぱっと明るくなった。


今まで見たこともないほど。


嬉しそうに。


幸せそうに。


心から安堵したように笑う。


「……ありがとう」


「ありがとう、美桜」


その声は少し震えていた。


堪えきれないほどの喜びが。


その笑顔から溢れていた。


美桜もつられて笑う。


「貴方と離れたくないから」


「私は帰りません」


「だから」


「私の帰る場所は」


「貴方がいるここなんです」


次の瞬間。


ユリウスは美桜を力強く抱きしめた。


もう二度と。


離したくないと。


その想いを伝えるように。


美桜も驚きながら。


そっとユリウスの背中へ腕を回す。


「く、苦しいです……」


そう言いながらも。


その声はどこか嬉しそうだった。


ユリウスは少しだけ腕の力を緩める。


「すまない」


「嬉しくて」


照れたように笑うユリウスを見て。


美桜も思わず笑ってしまった。


風が吹いた。


花びらが舞う。


その瞬間。


優しい光が二人を包み込む。


振り返る。


そこには。


銀色の髪を揺らすセレスティアが立っていた。


穏やかな笑顔。


優しい瞳。


『そう』


『決めたのね』


美桜は力強く頷く。


「はい」


『後悔しない?』


「しません」


迷いのない返事だった。


セレスティアは嬉しそうに微笑む。


そして。


ユリウスへ視線を向けた。


『ユリウス』


『これからも兄を支えてあげてね』


『二人で仲良くこの国を守るのよ』


ユリウスは静かに頭を下げた。


「はい、母上」


セレスティアは優しく頷く。


『カイルも』


『本当によく頑張ったわ』


ユリウスは少し驚いたような表情を浮かべた。


セレスティアは懐かしそうに目を細める。


『第一王妃様は』


『私の大切な友人だったの』


『だから』


『私にとってカイルも大切な子なのよ』


カイルの母である第一王妃は。


数年前に病で亡くなっていた。


『あの人も』


『きっと喜んでいるわ』


『貴方達兄弟が』


『支え合う未来を』


ユリウスは静かに頷く。


「そうだといいな」


『ええ』


『きっと喜んでいるわ』


セレスティアは微笑み。


最後に美桜へ視線を向けた。


『美桜』


『本当にありがとう』


『貴方に会えて良かったわ』


美桜の瞳に涙が浮かぶ。


「私もです」


セレスティアは優しく微笑んだ。


「セレスティア様に会えて良かった」


『二人とも』


『幸せになってね』


光が少しずつ強くなる。


その姿が。


ゆっくりと薄れていく。


『さようなら』


『私の大切な子供達』


最後まで。


セレスティアは笑っていた。


やがて。


光は空へ溶けるように消えていった。


◇ ◇ ◇


それから数か月後――。


王都は以前にも増して活気に溢れていた。


王の体調もすっかり回復し。


ユリウスは次代の王として。


日々、政務に励んでいた。


そして。


来月には。


美桜との結婚式が予定されている。


王宮の庭園。


柔らかな陽射しの中。


美桜は花壇の植替えをしていた。


「美桜」


聞き慣れた声がする。


振り返ろうとした。


その瞬間。


ふわり。


後ろから優しく抱きしめられた。


「きゃっ!」


「ユ、ユリウス様!」


「また仕事を抜け出しましたね?」


少し呆れたように振り返る。


ユリウスは小さく笑った。


「少し休憩だ」


「絶対違います」


美桜は思わず笑う。


「ほら」


「服が汚れますよ?」


ユリウスは腕を緩めることなく答えた。


「構わない」


「……少しだけ」


その言葉に。


美桜の頬が赤く染まる。


「もう……」


困ったように笑いながら。


その腕にそっと身を預けた。


穏やかな風が吹く。


花々が揺れる。


「後悔してない?」


あの日から。


ユリウスは時々その言葉を尋ねる。


美桜は振り返り。


優しく微笑んだ。


「ユリウス様」


「何回聞くんですか?」


「しつこいですよ」


そして。


迷いなく答える。


「ここが私の帰る場所です」


美桜の言葉を聞いたユリウスは。


幸せそうに目を細めた。


「……おかえり」


そう呟くと。


そっと美桜の頬へ口づけを落とした。


「えっ……!」


美桜は真っ赤になる。


「も、もう!」


「急にずるいです!」


ユリウスは珍しく。


悪戯が成功した子どものように笑った。


二人は顔を見合わせる。


そして。


同時に笑った。


青く澄んだ空の下。


神に愛された王ユリウスと。


異世界から来た聖女美桜。


二人は多くの人々に祝福されながら結ばれ。


共に国を支え。


誰よりも幸せに暮らしたという。


【完】



読んでくださってありがとうございます!

最後は、結婚式のイメージイラストでした。

挿絵(By みてみん)


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明日から、新しく連載を開始します。

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