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第24話 ユリウスの能力

読みに来てくださってありがとうございます。


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


それでは本編をどうぞ。

美桜は言葉を失った。


禍々しい魔法陣から、魔物が現れた


大きい。


そんな言葉では足りない。


天井に届きそうなほど巨大な体。


黒く歪んだ皮膚。


鋭い牙。


血のように赤い目。


ただそこに立っているだけで圧倒的な威圧感だった。


「うそ……」


思わず後ずさる。


こんなの。


勝てるわけがない。


ラシスは静かに笑った。


「終わりですわ」


「ユリウス皇子」


「今度こそ」


「確実に死んでいただきます」


魔物が咆哮する。


部屋が震えた。


その瞬間。


美桜はハッとした。


ユリウスはまだ回復したばかりだ。


さっきまで心臓が止まっていた。


こんな状態で戦えるわけがない。


「そうだ!」


思わず声が出た。


「回復!!」


勢いよく両手を伸ばす。


光が溢れた。


鋭い光がユリウスの体を包み込む。


ああ。


まただ。


この感覚。


力がどんどん吸い取られていく。


どこまで続ければいいのか分からない。


自分の限界も分からない。


それでも。


止められなかった。


助けたい。


その一心だった。


その時。


そっと。


優しい力で手を押し返される。


「え……?」


顔を上げる。


目の前にユリウスがいた。


「もう十分だ」


静かな声だった。


「ありがとう」


そして。


少しだけ微笑む。


「美桜」


初めて呼ばれた名前に。


心臓が大きく跳ねた。


額が触れそうなほど近い。


紫の瞳が真っ直ぐこちらを見ていた。


「後ろに下がっていろ」


ユリウスはゆっくり立ち上がる。


魔物が咆哮しながら迫ってくる。


巨大な腕が振り下ろされる。


床が砕けた。


誰もが息を呑む。


その時だった。


ユリウスが左腕を伸ばす。


何もない空間に。


光が集まる。


やがて。


一本の弓が現れた。


神々しい銀色の弓。


続いて。


眩い光の矢が生まれる。


美桜は目を見開いた。


綺麗だった。


恐ろしいほど。


綺麗だった。


ユリウスは静かに弓を構える。


魔物は咆哮しながら突進してくる。


だが。


ユリウスは慌てない。


動じない。


ただ静かに狙いを定める。


そして。


力強く引いた指を離した。


次の瞬間。


光の矢が勢いよく飛び出した。


轟音。


鋭い光が風を切り裂く。


目で追えないほど速い。


一直線。


迷いなく。


魔物の額へ突き刺さった。


ギャアアアアアアアア!!


耳を裂くような悲鳴。


美桜は思わず耳を塞ぐ。


魔物の体が光に包まれる。


そして。


崩れるように消えていった。


残ったのは静寂だけだった。


一瞬だった。


本当に。


一瞬だった。


「え……」


美桜は呆然と立ち尽くす。


ラシスも同じだった。


「…今の私では無理でしたか」


信じられない。


そんな顔をしている。


かたっ。


小さな音が響いた。


振り返る。


ラシスの手から扇が落ちていた。


いつも優雅に持っていた扇。


その骨は無残に折れていた。


ラシスは膝をついていた。


震える指先。


信じられないものを見る目。


「どうしてですの……」


「どうしてそこまでして生きるのですか」


初めてだった。


完璧だった令嬢が。


初めて崩れた。


その隣では。


カイルもまた呆然としていた。


「そんなのありかよ……」


力なく呟く。


「ユリウス、お前…その力…」


「人間技じゃない……」


目の前で起きたことが信じられない。


「こんな奴を敵に回していたのか……」


膝から力が抜ける。


その場に崩れ落ちた。


ラシスは膝をつき。


カイルは座り込み。


部屋の誰もが言葉を失っている。


ただ一人。


ユリウスだけが平然としていた。


まるで。


当たり前のことをしただけだと言うように。


そして。


美桜はぽつりと呟く。


「この皇子……最強すぎる……」


誰も否定しなかった。


美桜は真顔のまま続ける。


「もしかして」


「聖女の助け、いらなくない?」


ユリウスが小さく眉をひそめた。

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