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第20話 歪んだ正義

読みに来てくださってありがとうございます。


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


それでは本編をどうぞ。

第20話 歪んだ正義


「皆を納得させる方法があるのです」


ラシスの言葉に


カイルは顔を上げた。


「どういう意味だ」


「聖女様です」


カイルは眉をひそめる。


「聖女が?」


「はい」


ラシスは静かに頷いた。


「民は聖女様を信頼しています」


「その聖女様が公平ではないと証明されれば」


カイルは目を細めた。


「公平ではない?」


「特定の皇子に肩入れしていると」


ラシスは静かに言う。


「少なくとも今の貴族達はそう考えています」


カイルは反射的に否定した。


「聖女はそんな人間じゃない」


「本当か、嘘かなんて、どうでもいいことなのです」


「重要なのは、聖女が公平ではないと噂が流れること」


「前聖女の評判も落ち、ユリウス派の勢いも落ちるはずです」


ラシスの品のある静かな声が響いた。


だからこそ耳に残る。


「聖女様がユリウス殿下と行動しているのは事実です」


「孤児院へ通われているのも事実です」


「王宮では様々な噂が広がっています」


カイルは黙った。


否定できない。


すべて事実だった。


「だからこそ」


ラシスは続ける。


「今のままではユリウス殿下を推す声が大きくなり過ぎます」


「それは決して国のためにはなりません」


「一度立ち止まり、皆が冷静になる必要があるのです」


「そのためにも」


「一度疑惑を表に出し」


「そして聖女様ご本人に説明していただく」


「それだけです」


カイルは考え込んだ。


確かに。


今のままではユリウス派は増え続ける。


「だが」


カイルは低い声で言った。


「聖女を傷付けるつもりはない」


「もちろんです」


ラシスは穏やかに微笑む。


「少し協力していただくだけです」


「誤解だったと分かれば終わります」


「殿下のお立場も回復するでしょう」


カイルは目を閉じた。


少し利用させてもらう。


それだけだ。


だが。


本当にそうなのだろうか……


いや。


問題ないはずだ。


聖女なら説明できるはずだ。


それで私の立場も少しは回復する。


国のためにもなる。


そう自分に言い聞かせる。


やがて。


カイルはゆっくり頷いた。


「分かった」


その返事を聞いて。


ラシスは静かに微笑んだ。


その笑みの意味に。


カイルはまだ気付いていなかった。


◇ ◇ ◇


数日後。


王宮では慌ただしく準備が進められていた。


大広間には豪華な装飾が施され。


料理人達が忙しそうに動き回っている。


侍女達も次々と出入りしていた。


突然決まった催し。


その名も――


聖女降臨記念パーティー。


王都中の有力貴族が招待される大規模な宴だった。


「急な話ですね」


廊下を歩きながらエレナが呟く。


「そうですね」


美桜も首を傾げた。


「でもお祝いなら良いことですよね?」


エレナは返事をしなかった。


その横顔はどこか険しい。


「エレナ?」


「……いえ」


エレナは小さく首を振った。


「少し気になることがあるだけです」


だが。


その胸騒ぎの正体を。


まだ誰も知らなかった。

ここまで読んでくださりありがとうございます!


今回はエレナのイメージイラストでした。

挿絵(By みてみん)


今後も5話ごとくらいに、ラシスや挿絵などのイラストを載せていけたらと思っています。


「こんな顔をしていたのか」と楽しんでいただけたら嬉しいです♪

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