↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
18/34

第18話 世代交代の動き

読みに来てくださってありがとうございます。


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


それでは本編をどうぞ。

第18話 世代交代の動き


貴族会議当日。


王宮の大会議室前には多くの貴族たちが集まっていた。


本来なら国王が出席する会議。


だが今、その席は空席のままだ。


その事実だけで王国の現状が分かる。


美桜は少し緊張しながら周囲を見回した。


「思ったより人が多いですね」


「重要な会議だからな」


隣でユリウスが答える。


「カイル様も参加されるんですか?」


「当然だろう」


ユリウスは貴族たちの輪の中心を見る。


そこには第一皇子カイルの姿があった。


貴族たちと言葉を交わしながら笑顔を浮かべている。


「父上の代理だ」


そう言われてみれば当然だった。


王が不在なら第一皇子が前に立つ。


それが普通だ。


「ユリウス様も参加するんですか?」


「出席を求められている」


「なぜですか?」


ユリウスは少しだけ黙った。


「最近は私の名前を出す者もいるからな」


美桜は思わず口を閉じた。


次の王。


その話が現実になり始めている。


その時だった。


「カイル殿下」


エレナが声を掛けた。


カイルが振り返る。


「何だ」


「会議では感情的にならないでください」


「ならん」


即答だった。


「前回もそうおっしゃいました」


「今回は大丈夫だ」


「その言葉が一番信用できません」


「ひどくないか?」


「事実です」


エレナは容赦なかった。


カイルは不満そうな顔をする。


「お前は昔から厳しいな」


「殿下が昔から問題ばかり起こすからです」


「失礼な」


そう言いながらも少し笑っている。


そしてカイルは会議室へ入っていった。


その背中を見送りながら。


美桜は首を傾げる。


「エレナ先生!」


「なぜここに?」


突然声をかけられたエレナは、少し呆れたように言った。


「それはこちらの台詞です」


「会議に参加されるんですか?」


「私は記録係です」


「へぇ……」


「あの、エレナ先生」


「何でしょう」


「カイル様にだけ厳しくないですか?」


エレナが少し驚いた顔をした。


「そうでしょうか」


「そうです」


美桜は頷く。


「ユリウス様にはそんなに言わないのに」


ユリウスが微妙な顔をした。


エレナは小さくため息を吐く。


「昔からの付き合いですから」


「昔から?」


「幼い頃から存じ上げています」


美桜は目を丸くした。


「え?」


「殿下は昔から無茶ばかりでした」


「目を離すと何をするか分からないのです」


どこか懐かしそうな声だった。


「今も変わってませんね」


美桜が言う。


エレナは小さく笑う。


「ええ」


その笑顔は少しだけ柔らかかった。


やがて鐘が鳴る。


会議開始の合図だった。


会場の空気が一変する。


美桜たちも席へ向かった。


◇ ◇ ◇


「これより貴族会議を始める」


重々しい声が響く。


本来なら国王が座る席。


そこだけが空いていた。


最初に立ち上がった老貴族が口を開く。


「陛下のお身体は回復の見込みがありません」


会場がざわつく。


「言葉が過ぎる!」


「事実だ!」


「陛下への侮辱か!」


怒号が飛び交う。


美桜は思わず肩をすくめた。


思った以上に空気が悪い。


その時だった。


ローゼン公爵が立ち上がる。


会場が静まった。


「皆様」


穏やかな声。


それだけで場が落ち着いていく。


「今必要なのは争いではありません」


「国を安定させることです」


誰も反論しなかった。


正論だからだ。


だが。


別の貴族が立ち上がる。


「そのためにも次代を考えるべきです」


会場が再びざわついた。


「第一皇子カイル殿下こそ正統な後継者です!」


「何を言う!」


「今の国を支えているのはユリウス殿下だ!」


「実力ならユリウス殿下だ!」


「第一皇子を差し置く気か!」


一気に会議が荒れる。


誰も譲らない。


美桜は呆然とその光景を見ていた。


「すごいですね……」


「権力争いだからな」


ユリウスが静かに答える。


だがその表情に変化はない。


まるで自分の話ではないようだった。


結局。


会議は何も決まらないまま終了した。


◇ ◇ ◇


会場を出ながら。


美桜は小さく息を吐く。


「思ったより怖かったです」


「そうか」


ユリウスは、美桜の表情をそっと見た。


怯えた様子がないことに、小さく安堵する。


王に黒魔法をかけた人物。


今はまだ分からない。


だが。


この国が少しずつ歪み始めていることだけは分かった。


「ユリウス様は平気なんですか?」


「慣れている」


その一言に。


どれだけ長くこんな状況が続いていたのかが分かった。


「ユリウス様は王様になりたいんですか?」


ユリウスは少し考えた。


そして。


「興味はない」


そう答えた。


「え?」


思わず声が出る。


ユリウスは空を見上げる。


「だが」


少し間を置く。


「必要ならなる」


その声に迷いはなかった。


数時間後…


カイルが執務室で会議の報告を聞いていた。


「またユリウス派が増えております」


側近が頭を下げる。


カイルは黙った。


「そうか」


それだけ答える。


だが。


机の下では拳がゆっくり握られていた。


またユリウス。


会議でも。


貴族たちも。


皆ユリウスの名を口にする。


私は何年も努力してきた。


王が倒れてからも。


この国を支えてきた。


それなのに。


誰も見ていない。


コンコン。


扉が叩かれる。


「失礼いたします」


入ってきたのはラシスだった。


「ラシス?」


ラシスは静かに頭を下げる。


そして心配そうな顔で言った。


「お疲れのようですね」


カイルは苦笑した。


「そんな顔をしていたか」


「はい」


短い返事だった。


しばらく沈黙が流れる。


やがて。


ラシスが静かに口を開いた。


「殿下は十分頑張っておられます」


その言葉に。


カイルは目を見開いた。


誰も言わなかった言葉だった。


「そうか……」


小さく呟く。


ラシスはそんなカイルを見つめる。


そして。


静かに微笑んだ。


「まだ諦めるには早いですよ」


その言葉の意味を。


この時のカイルはまだ知らなかった。

読んでくださってありがとうございます!

毎日少しずつ更新しています。

「続きが気になる!」と思っていただけたら、

ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります!

次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。