第17話 第一皇子の孤独
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それでは本編をどうぞ。
カイルは執務室で書類に目を通していた。
広い部屋だった。
壁一面の本棚。
豪華な調度品。
王都を見渡せる大きな窓。
誰もが羨む第一皇子の執務室。
だが。
今はただ広すぎるだけだった。
王が倒れてから。
その仕事の多くは第一皇子である自分に回ってくるようになった。
判子を押す。
報告書を読む。
判断を下す。
終われば次。
また次。
休む暇もない。
一段落ついた時、カイルはため息を漏らした。
父の代わりに
少しでも国を支えようと
自分なりに努力してきた。
街の視察にも行った。
民の声も聞いた。
孤児院だって気にしていた。
だが。
誰も自分を見ない。
王宮で聞こえるのは…
聖女の話。
ユリウスの話。
前聖女の話。
そんな話ばかりだった。
あいつは…ユリウスは優秀だ。
認めたくなくても。
認めるしかない。
剣も。
魔法も。
政治も。
何もかも。
弟の方が上だった。
昔からそうだ。
父も。
教師も。
貴族たちも。
皆ユリウスを見ていた。
カイルはいつも比べられる側だった。
「私は……」
誰もいない部屋で呟く。
「私だって頑張っている」
誰に向けた言葉だったのか。
自分でも分からなかった。
ふと窓の外へ目を向ける。
庭園の一角。
そこには。
ユリウスと聖女の姿があった。
聖女のことを思い出す。
最初は利用するつもりだった。
聖女を味方につければ。
少しは立場も良くなる。
そう思っていた。
だが。
最近は違う。
孤児院へ通う聖女。
民を気にかける聖女。
あの馬鹿みたいに真っ直ぐな姿を見ていると。
利用する気にもなれなかった。
婚約者になれと言っているのは半分冗談だ。
半分は本気だが。
少なくとも。
嫌いではなかった。
むしろ。
第一印象よりずっと良い女だった。
だが。
聖女も。
ユリウスを見る。
エレナも。
ユリウスを見る。
民も。
ユリウスを見る。
「私では駄目なのだろうか」
小さく呟く。
誰にも聞こえない声だった。
もし。
次の王にユリウスが選ばれたら。
国のためには
その方が正しいのかもしれない。
………ユリウスが王になったら
自分には何が残るのだろう。
王になれない第一皇子。
それは一体何なのだろう。
「私はただ……」
言葉が続かない。
ただ。
認めてほしかった。
ただ。
必要だと言ってほしかった。
ただ。
それだけだった。
遠くで鐘が鳴り響く。
貴族会議の始まりを告げる鐘。
カイルはゆっくり立ち上がった。
そして。
第一皇子としての仮面を被る。
どれだけ苦しくても。
どれだけ不安でも。
立ち止まることは許されない。
会議が始まる。
運命が動き出そうとしていた。
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