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隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?  作者: こころ ゆい
最終章『番ではない私でよろしいのですか?』

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4



 実は、ヴォルフ陛下よりテリウェル陛下が相談を受け、リーフェント公爵家へ婚姻の打診があったのではなかった。


 番の見当をつけたテリウェル陛下が密かにヴォルフ陛下へ、二人の婚姻の提案を申し出たのだ。


 丁度、王位継承の激化で、フェンリル様本人が政略結婚を願い出た時期だったから、ヴォルフ陛下はその提案を受けた。


 テリウェル陛下の行動には、何かしら意味が隠されていることを、長年共に過ごした経験から知っていたから。


 そして、テリウェル陛下からの提案であることは、フェンリル様にも私にも、伏せられていた。テリウェル陛下の厳命で。





「確信はなかったんでな。....まぁ、お前なら自分でチャンスを掴むだろうと()()()()()からな」


 テリウェル陛下が、ニッと笑みを深める。

 フェンリル様は、瞼を重くして呆れた声を出す。


「.......お前、本当に性格悪いぞ」


「ははは、褒めてくれて嬉しいよ」


「褒めてない」


「....結局、いつまで経ってもフェンリルから報告は届かないし、先にヴォルフ兄から真偽を確かめる手紙が届いて、ヤキモキしたぞ」


「なら、さっさと教えろよ」


「君たちが先に仕掛けてきたんだろう」


「はぁ。はいはい。俺らが悪かった」


 フェンリル様は諦めたようにため息を漏らした。


「お前からの提案であることは秘密にしろと、兄上を脅したのか」


「ひと聞きが悪いな。ちょっとばかし、昔の出来事を話題に出しただけさ。私が、モーリャント王国の新国王に即位した時のことをね」


()()()じゃなくて、()()だろう。それを脅しっていうんだよ」


「ふん。元はと言えば君たち兄弟が私を嵌めたのが悪い」


 テリウェル陛下は、子供みたいに唇を突き出した。

 この二人が何の話をしているのかさっぱりだったが、話は続いていく。


「あれは嵌めたんじゃない」


「どうだかね」


「お前は、先に言ったら逃げるだろう。モーリャント王国のために仕方なく、事後報告にしただけだ」


「それを嵌めたと言うんだ」


「何とでも言え」


 二人睨み合っている。

 フェンリル様の腕の中で私は、二人の顔を交互に見遣った。


◇◆


 テリウェルは、元々王位に興味がなかった。


 才能故に、兄・オズウェルは勝手に弟を目の敵にして、留学へ追いやった。


 だが、テリウェルにとってむしろ好都合だった。


 これ幸いとばかりに好きなことを学び、自由に知識を深めていた。


 そんな中、シルヴァの留学中に起きた一件で、二国間で戦が勃発した。


 テリウェルは、全く話を聞かされていなかった。

 到底、新国王にまつりあげられるなんて、夢にも思っていなかった。


 それが、あっという間に声明が出され、知らぬうちにモーリャント王国の新国王になっていたのだ。


 その時点でやっと、ヴォルフやフェンリルから知らせを受けた。


 ここまで話が進んでいれば、もう拒否などできまいと諦め、王位に就いた。



「お前なら、どういう経緯で国王となっても....最後は国民のために奔走すると()()()()()からな」


「はぁ。それだよ。....だから、私も()()()()()んだ。確信がなかったから、というのも本当だがな」


「わかっている」


 信じていたと言われては、文句を言えなくなったテリウェルは、()()()()()()()フェンリルにやり返した。


 君ならチャンスを掴むと信じていたから、と。


 友を思う心と、やり返す心と

 誠に友の力を信じる心。


 色々と複雑に絡み合った結果、なんと時間がかかったことか。


「くっ、くくく。本当、食えない奴」


「はははっ、君もな」


 笑い合って、どうやら和解したらしい二人に、ジャスミンはホッと胸を撫で下ろした。


「まぁ、時間は要したが、想いは通じたんだろう?」


「ああ」


「....改めて、結婚おめでとう。フェンリル」


 今度は満足気に笑って、祝福した。

 その言葉に、フェンリルはやっとテリウェルに向き直り、心から礼を言った。


「ああ。....世話になった」


 ジャスミンは抵抗しても下ろしてもらえず、抱きかかえられたまま「感謝申し上げます」と一緒に頭を下げた。



「ところで、夫人に頼みたいことがあるのだが」


 一段落した所で、テリウェル陛下が神妙な面持ちになった。


「.....直接話しかけるな」


「えっ」


 だが、フェンリル様はまた陛下に背を向け、私を隠してしまう。陛下の残念なものに向けるような声が、こだました。


「フェンリル....。嫉妬深い男は嫌われるぞ」


「っ.....嫌いに、なるか?」


 陛下の言葉に、フェンリル様がうかがうように尋ねてきた。


「え....えっと....嫌い、には....」


「...........」


 二人の視線を感じて狼狽える。

 フェンリル様は縋る目で私を見つめていた。


「.....ならない、ような?」


「っ、うむ」


 決断を迫られ、声を裏返しながら何とか答えると、フェンリル様はパッと耳を立て目を輝かせて、頬擦りしてきた。

 尻尾が、ボフン、ボフン、と横抱きにされている私の腰や足をリズミカルに打っていく。


「.....最初から甘やかしていると、後が大変だぞ、夫人。締めるところは、締めた方がいい」


 呆れ混じりに言われて、何となく意味を察する。私は有り難く助言を受け取って、真面目に頷いた。


 それから、私も陛下と直接お会いできたこのタイミングで、お話ししたいことがあったので、フェンリル様にお願いした。


「フェンリル様。私も陛下とお話ししたいことがございます」


「.....わかった」


 真剣に言い募ると、渋々だが頷いてくれる。


「夫人の話は....もしかして砂漠化についてだろうか?」


「そうなのです。陛下のお話しもでしょうか?」


「ああ。....先に聞いても?」


「はい、もちろんでございます」


 そうして、私は陛下にずっと考えていたことをゆっくりと説明し始めたーー。


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