表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?  作者: こころ ゆい
最終章『番ではない私でよろしいのですか?』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/41

2


「二人愛し合った夜、君が寝息を立て始めた頃、鷹が1通の知らせを運んできた。


それは、君も知っての通り、モーリャント王国との戦と....


団員が負傷したとの知らせだった。


詳細は合流しなければわからなかった。

手紙にあったのはそれだけだったから。


俺は騎士団長として、すぐに団に合流しなければならなくなったが、


君は寝入った所だったし、起こすのも憚られてーー。


急ぎ、メモだけ残した。


これは言い訳になってしまうが、決して君を放置するつもりはなかった。


団に合流したあと、すぐさま宿に人を向かわせる気だったんだ。そいつに、君を王城まで招いてもらおうとしていた。


説明は仕事を終えた後になるが、きちんと俺が王族であることも、番のにおいが判別できていない様子の君に、俺たちが番同士であることも伝える予定だった。


君が俺を受け入れてくれた今なら、番であることも、王族であることも、伝えられると思ったんだ。


その上で、求婚を

と考えていた。


そして、君が目を覚ますまでには、使いを出せるだろうと踏んでいた。



だがーー


港で待つ団に合流した時、潜んでいた刺客に薬を嗅がされた。情けないことに、完全に俺のミスだ。


オズウェルが仕込んでいた。

先に負傷の知らせが入っていた団員の怪我も、別の手先によるものだった。


シルヴァとの一件や、陛下からの戦の命を忘れさせたかったのか、時間稼ぎがしたかったのか。


すぐに動いて、吸い込んだのは少量だった。

しかし、捕まえたあと頭がぐらつき、俺は倒れた。


目が覚めたのは三日後の夕方で、

その時には、君との記憶は消えていた。


番と出会った感覚はあったんだ。


隣に番の存在がなくて、さらには君との出会いも、姿かたちも、どう過ごしたかも、最後どうわかれたのかも、思い出せなくて


心が引きちぎられそうに痛んだから。


なぜそうなったのか確信はなかったが、薬のせいであるのは容易に想像がついた。


今考えてみれば、薬を嗅がされた瞬間脳裏を過ったのは君のことだったーー。それで、君の記憶を封じられたのかもしれない。


目を覚ました翌日、俺は戦に出た。

オズウェルを捕らえた後、追求するとあっさり認めたよ。「毒消しなどない」と言われた時は、崖から突き落とされた気分だった。


だが、俺は諦めなかった。


モーリャント王国に勝利し自国に戻ってから、陛下やマーナガルム様からも情報を集めた。


そして、ラベンダー色の瞳の狼獣人の女性を王国中探した。結局、そんな女性はひとりも居なかった。


君の瞳の色は、我が国でも珍しいのだ。


同時に、王位継承の問題まで激化して


追い詰められた俺は、シルヴァを女王にするため、陛下に王命での婚姻を申し出た」



*****


「.........っ」


 全てを聞き終える頃、私は驚きと喜びと後悔と、様々な感情で言葉が紡げなかった。


 全部、誤解だった。

 

 私の嘘と、彼の配慮と、不慮の出来事。

 絡んだ糸が今やっと解けた。


「ごめん、なさい....」


「いや、これで納得したよ」


「........?」


「君と出会った日、少しばかり違和感を感じて。再会した日は、妙な懐かしさを抱いた。旅の間は魔法薬で姿を誤魔化していたからだったんだな」


「.......申し訳、ありません」


 罪悪感と申し訳なさで身を縮めた。


「ははっ、もういい。色々とあったが、また君とこうして出会えたのだから」


 そして、彼は私を抱きしめた。

 今度こそ身を任せ、私もそろそろと彼の背に腕を回した。


「漸く.....つかまえた。もう離さないから」


「はい....」


「.....あの丘の景色」


「..........?」


「ダンスの夜、君と見た景色と似ていた」


「ええ....実は、私も思っていました」


「君の横顔を見た時、逃したくないと強く思った。記憶は封じられていても、心は君と見た景色も、君のキラキラ輝く表情も、覚えていたんだろうな」


 幸せそうに言う彼に、胸がきゅっと疼いた。


「それにーー」


「え?」


「君はダンスの夜、なぜ獣人達は仮面をするのか.....意味を知ってるか?」


「いえ....知りませんわ」


「......あのダンスは番を探すためのダンスなんだ」


「番を、探す....」


 私は目をゆるゆると見開く。

 フェンリル様は、なんとも嬉しげに続けた。


「ああ。獣人達は適齢期になれば、番を探す。そして、皆あのダンスに参加する。


俺も参加したことはあるが、出会えなかった。

今となっては、君は隣国に居たのだから納得だが」


「まぁ.....そうだったのですね」


「うむ。そして、仮面をつけた状態で出会った番達は、次に会う約束を交わす。


ただし、日付、時間、場所.....

どれか一つだけしか決めていない、不確かな約束だ。


だが、その約束とにおいを頼りに、仮面を外し本来の姿となった番を迎えに行く。


見つけ出せれば、その場で求婚するんだ」


「仮面にはそんな意味が......」


「ああ。俺たちは特殊な出会い方だったし、この約束とはかけ離れた状況だったが.....


君を、見つけ出せた。


だから、改めて。結婚しよう?ジャスミン」


 今日、何度目かのプロポーズを受けて、うっすらと視界が滲む。


「......嬉しいです。見つけてくれて、ありがとうございます.....」


「こちらこそ」


「フェンリル様.....」


「ん?」


「大好き.....」


「くっ.....」


 ずっと閉じ込めていた気持ちを解き放つと、

 今度は溢れ出して止まらない。


 心のままに、口にした。

 呻き声がして。そっと胸に擦り寄ると、彼の心音が大きくなった。


 上下する喉仏と男性然とした骨格。

 ほどよい厚さの乾いた唇を、赤い舌がペロリと舐める。

 高い鼻梁に、熱を灯す銀の瞳。


 彼の存在を確かめるようにーー

 時間をかけて、視線を滑らせる。


 そうして、ゆっくり.....

 庭の芝に落ちるふたつの影が重なった。


「ジャスミン....」


「.......ん。フェンリル、様....」


 何度も何度も、離れては触れ合う唇にくぐもった声が漏れる。


「......はぁ、すまない。止まらない、もう一度いいだろうか」


 頬を上気させてうっとり呟く彼に、恥ずかしさで瞳が潤んだ。視線をそっと外す。


「ダメだ。俺を見て?.....君の瞳。すごく綺麗だ、ジャスミン」


 耳元で囁いた声はとろりと甘く、ジンと脳髄を震わせた。


 口付けとその蕩けた声音、私を射抜く瞳に呑まれていく。


 唇を優しくなぞる彼の指が離れて、再び熱が近づいてきた時ーー


 コホン、と背後で咳払いが聞こえて、呆れた声がその場に響く。


「申し訳ないが.....そろそろいいだろうか?」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ