7-①
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ぼくは怒っていた。ぷんぷん怒っていた。
ほら、ぼくの自慢の尻尾がさがってゆれてるよ。ゆっくりゆっくり。わかる?
さっきのはひどかった。
ぼくだけ仲間はずれにしてさ?
ぼくだって、お姉さんともっと話したかったし、一緒にいたかったのに。
おじうえだけズルい。
あ.....「フェンリルの呼び名に慣れましょうね」っていわれたんだ。こうふんしたら出ちゃうんだよね。気をつけなきゃ。
.....ん?ちちうえのお部屋からあかりがもれてる。声もきこえる。
あ.....ちちうえとおじうえだ。
ぼく知ってる。あれ、おさけっていうんだ。
大人しかのめないのよって、ははうえに教えてもらったことある。
ふたりで一緒におさけのんで、どんな楽しいお話してるんだろう。
ちぇ。もうぼくは寝る時間なのに、大人はまだまだおきていられていいなぁ。ぼくもはやく大人になりたいや。
.....ふぁあ。でもやっぱりねむい。
廊下はひえるなぁ。はやくお部屋にいっておふとんにくるまろう.....。
◇
その夜。国王ヴォルフ・ユービィストの私室にて、王弟 フェンリル・ユービィストが酒を飲み交わしながら話し込んでいた。
照度を落としたライトが白銀色とアイスシルバー色の二人の髪に静かに当たる。
彼らの面持ちはとても真剣なものだった。
カランとグラスの氷が鳴る音が、室内にやけに大きく響いた。
「それで?どうするんだ。その女性で間違いないのだろう?」
「間違うわけがないでしょう。正真正銘、彼女は私の番です」
「なら、さっさと求婚してこないか。お前の臣籍降下を考えるなら早い方がいい。我が国では、未婚で臣下にくだるのは認められていないからな」
◇
ユービィスト王国では基本、王位継承権は君主の直系子孫から順位が決まっていく。
王弟であるフェンリルも王位継承権は保持しているものの、兄であり現国王でもあるヴォルフと王妃 エナメルの間には子が二人いる。
法的順位で言えば、その子二人が王位継承権一位、二位。フェンリルは三位だ。
しかし継承権一位にあたる第一子 シルヴァ・ユービィストは女児だった。
第二子 マーナガルム・ユービィストは男児だが、まだ5歳。
ユービィスト王国は法律上、女性でも国王になれる。本来であればシルヴァが次期国王だ。
にも関わらず、女性蔑視の口うるさい貴族が派閥をつくり、シルヴァが国王となるのは反対だと声をあげている。
法律なのだからと完全に無視できればいいが、黒い画策でシルヴァを継承権から外そうとする動きが今後ないとも限らない。
彼らが持ち上げるのは王位継承権第三位の王弟・フェンリル。
兄・ヴォルフと13歳差のフェンリルは現在三十歳。
ヴォルフのあとをフェンリルが継ぎ、5歳のマーナガルムの成長を待てばいいというのが彼らの言い分だった。
フェンリル自身は、姪のシルヴァが次期国王であるべきと考え、また彼女はこの国を背負って立つに相応しい人物であると認めている。
そこで、平和的に継承権争いから降りるべく臣籍降下を急いでいるのだが、現実はそううまくいかない。
この国では、王族の臣籍降下を認めるのは既婚の場合のみ。はるか昔、国王夫婦と王弟夫婦の子供らが王位継承争いで国中を巻き込む惨劇を繰り広げた歴史からだという。
臣籍降下は既婚のみという法自体を変えようとしたが、女性蔑視派の貴族たちの反対で変えられなかった。
結局、フェンリルには番がなかなか現れず未だ独身を貫いていて、臣下にくだれていない。
◇




