32 太郎が可愛い♪(馬車操縦で市場にお出掛け)
お待たせ致しました!
太郎の視点以外にも、ザックさん、カイルお兄さん、???、アルのおっちゃん視点が入ります。
太郎は宿に移り住んでから、定期的に馬車の操縦練習を兼ねて、市場へ買い物に出掛けていた。
ザックさん、優しいお兄さんのカイルさん、カイルさんのお兄さんでおっちゃんのアルさんと一緒だ。
ヒッピは、宿に人が増えてから、お留守番が多くなった。
朝食と馬の世話を済ませてから、ザックさんの指導で馬を馬車に繋げる。
皆と馬の世話をして、馬の扱いには、かなり慣れてきた。
操縦席にザックさんとアルさんが、荷台にカイルさんが座った。
僕は、よっこらしょっとザックさんの足の間に座り込んだ。
「じゃあ、ザックさん、お願いします♪」
後ろのザックさんを振り返りつつ、笑顔で頼んだ。
「ああ。じゃあ、行こうか」
ザックさんが、僕の頭を撫でてから、僕の両脇の下から腕を通して、一緒に手綱を持つ。
ザックさんの足の間に居るから、太ももでも挟み込まれている。
普通なら圧迫感を感じそうだが、ザックさんとは信頼関係があるから、寧ろ安心感でいっぱいだ。
馬車操縦をミスしても、すぐにフォローしてもらえる…万全の体制だ。
ザックさんは、この世界では小柄だけど、庶民としては大柄だし。
僕より10cmも背が高くて逞しいし、大人の男性で頼りになるんだ。
横ではアルのおっちゃんが、後ろではカイルお兄さんが、僕の護衛をしてくれている。
完璧なフォーメーション!
安心して、ゆっくり馬車操縦をする。
揺れに合わせて、ザックさんの身体や腕が動く。
僕がくすぐったくて身を捩ると、ザックさんが
「ごそごそするな、太郎。
くすぐったいし、危ないぞ!」
と、片手を手綱から、僕のお腹に移動させた。
「ザックさんが動いて、くすぐったいんだよ!?」
僕がそう言うと、ザックさんの身体に力が入り、より密着した。
「俺のせいか!?
なら、くすぐったく無い様に、しっかりくっついてろよ~」
密着したのに、お腹の手はそこまで力が入ってない。
なので馬車の揺れで、ザックさんの手が動き、僕のお腹をさすさす撫でる。
ザックさんに不満を言うと
「太郎の腹に筋肉が少ないからな。
強く掴めんだろ?」
と言われた。
た、確かに。
かちかちな腹筋を持つザックさんに比べたら、僕のお腹には脂身が…。
僕は黙って、くすぐったさに耐えたよ。
ザックさんの頭が、僕の右肩や右頬に触れる。
小さな子供に戻ったみたいで、気持ちもくすぐったいな。
◇◆◆◆◆◆◆◆◆◇
side
馬車の準備はきちんとできたな。
準備を済ますと太郎は、素直に膝の間に座り込んだ。
振り返って見上げる笑顔が可愛かった。
最初にいい事を教えておいて良かったな…と。
太郎を後ろから抱き抱えて、途中からは柔らかなお腹を擦り撫で…。
市場近くまで、堪能した。
アルやカイルが羨ましげな視線を送るが、構わなかった。
老い先短いんだ。
少しでも太郎と一緒に過ごしたい。
その感情に、戸惑いや躊躇いはなかった。
市場近くで馬車を預ける。
迷子になった後から、歩く時は手を繋ぐ。
護衛である俺の右手を開けて、自然に左手を握ってくる。
「ザックさん♪
早く行こ!」
小首を傾けつつ満面の笑み。
可愛く催促してきた。
小さく柔らかい手を、そっと。
尚且つ、しっかりと握りしめた。
…太郎とデートだな。
◇◆◆◆◆◆◆◆◆◇
side
年甲斐もなく、ザックさんは太郎にめろめろだ。
いつもの渋くキリッとした表情は、見る影もなく崩れている。
ダラシのない、ニヤけた、シマリのない表情…。
あんなザックさんは、今まで見たことなかった。
太郎の、あの可愛さ。
あの笑顔。
あの柔らかさ。
あの素直さ。
自分に向けられた信頼。
うん、あのポジション、俺が代わりたいよ…。
今も、手を握って歩いてる。
太郎にいろいろ聞かれながら、説明してる。
感心したり、驚いたり、尊敬の眼差し…
いいな~。
デート気分だろうな…。
馬車操縦の訓練と言いつつ、後ろから抱き抱えて、お腹を擦り撫でてたな…。
羨ましい!
…交代したら、俺もそうしよう。
◇◆◆◆◆◆◆◆◆◇
ザックさんと手を繋いで市場を散策する。
ザックさんとヒッピが、突然消えてからは、そうしてる。
あれからは誰も召喚されてない。
やっぱり、手を繋ぐのが良かったんだよ。
万が一、召喚されても1人で…は、防げるし。
いろんな道具や、食材を見て回る。
買うのは、野菜や肉類、時々は調味料なんかを買ってる。
味見を兼ねて、少量多品目。
ぶっちゃけ、スキルで作った方が美味しい。
不自然にならない様に、いろんな店で、買ってるんだ。
ザックさんだけでなく、カイルお兄さんや、アルのおっちゃん、お店の人も親切に説明してくれる。
物価や日常生活について、徐々に知識が増えてきた。
◇◆◆◆◆◆◆◆◆◇
side《???》
最近、可愛い客が市場に、よく来る。
ザックやヒッピ、最近はアルやカイルも一緒だな。
艶のある綺麗な黒髪、クリームがかった不思議な白い肌。
すべすべで気持ち良さそうな素肌に、健康的な赤みの頬…
シミ1つなく、貴人のようだ。
市場で珍しげに、あれこれ見て回る。
説明を感心して聞いてくれるから、どの店主も張りきって話しかける。
ケチで有名なスパイス屋も、おまけしていたな。
何十年見てきたが、スパイス屋がおまけしたのは、初めてみたな…。
買い物したらおまけを渡して、皆こぞって頭を撫でる。
…堂々と触れる唯一のチャンスだからな!?
どの店主も、おまけして撫でてるな。
俺も、あの子供が来たら、何をおまけしようかな…
あの髪は、見た目通りの手触りだろうか…
◇◆◆◆◆◆◆◆◆◇
side
帰りの馬車操縦は、俺が指導。
カイルが隣。
ザックさんが荷台となった。
太郎の要望だ。
…恨めしそうな2人の視線は無視する。
「よっこらしょ!」
太郎が操縦席に上がって、俺の足の間に入り、座ってきた。
ザックさんみたいに太ももで挟み込み、背中に覆い被さる。
頭は太郎の右肩に、頬と頬が触れそうな距離。
風がそよぐと、太郎から果物の良い香りが…。
いつも食事に出る、桃の香りみたいだな。
太郎と密着した箇所から、太郎の温もりと柔らかさが伝わってくる。
脇の下から腕を伸ばして、片手は手綱を。
もう片手は、太郎の腹部を。
柔らかい!
…少し下に。
下腹部に手を置く。
指を伸ばしたら、太郎自身に触れそうな場所だ。
「アルのおっちゃん!
お願いします」
…俺の邪心は伝わってないな。
太郎が満面の笑みで頼んでくる。
「おい、おっちゃんは無いだろ!?」
どさくさ紛れに、下腹部を撫でつつ反論する。
「カイルお兄さんのお兄さんなら、おっちゃんだよ!?」
「カイルとそんなに違わんのに…」
ぶつぶつ文句がでてしまう。
カイルより老けて見えても、カイルが『お兄さん』なら、俺もお兄さんと呼ばれたい…。
太郎が笑い声を上げる。
「……太郎、わざとだな!?」
「あ、じゃあ、出発!」
太郎が話しを逸らして、馬車を動かし始めた。
ポコポコポコポコ…。
馬がゆっくり歩く。
コトコトコトコト…。
馬に合わせて、荷馬車が小さく揺れる。
サスサスサスサス…。
…揺れに合わせて自然な感じに、俺の手のひらが太郎の下腹部を撫で上げる。
うん、自然な感じだな!?
カイルとザックさん以外は、不振に思ってない。
太郎の下腹部は温かく柔らかい。
服の上からでも、触れてると気持ちがいいな。
全身に太郎を感じつつ、宿へゆっくりと帰った。
…太郎に惹かれる皆の気持ちが、一緒に過ごしてよく分かった。
◇◆◆◆◆◆◆◆◆◇
sideカイル
帰りの馬車操縦は、俺が担当しようと思ってたのに…。
まさかだよ!?
兄さんが太郎に指名された…。
兄さんの隣で、太郎の下腹部を撫でてるのを、恨めしげに見る。
腹部もいいけど、下腹部は…。
触れそうで、触れられない。
…わしずかみにして太郎の信頼を無くしそうだ。
でも次は必ず、俺が指導する!
宿に着いた。
「太郎!お疲れさま♪
かなり上達したね。頑張った!
さすがだね~」
降りた太郎を正面から抱きしめた。
おもいっきり誉めて労いつつ、頭や背中から腰を撫で上げた。
太郎が恥ずかしがりながらも、嬉しそうに
「カイルお兄さん、ありがとう」
って言ってくれた。
これくらい、いいよね!?




