固有魔術とは
「アルク兄様の固有魔術って………」
「まだ言っていなかったか?」
ラヴァンダがアルクに少し目を逸らしながら問いかける。
固有魔術はその人物個人しか持たない魔術であり、秘密にしているものも多い。だからこそ、相手の固有魔術を知りたいというのはデリケートな話になる。
が、アルクは固有魔術を特に秘密としていないのか、逆に教えていないことに少しだけ驚いていた。
「私の固有魔術は『並列魔術』だ。能力は、私が無詠唱で発動できる魔術と詠唱が必要な魔術を同時に発動できる、というものだ」
「それは、同時にできるのは二つまでですか?」
「いや、今のところは四つが最大だ」
(なるほど………、厄介だな。魔術を同時に発動できるとは……)
魔術の同時発動は、無詠唱で発動できる魔術に限られている。アルクの並列魔術は詠唱をしながらも、別の魔術が発動できる。これはラヴァンダでさえも容易にはできない。だからこそ、敵対すると厄介な固有魔術となる。
「見てみたいか?」
「いいんですか!?」
ラヴァンダがアルクの誘いに目を輝かせる。その反応は年相応の反応で、アルクも小さくだが笑みを浮かべた。
そして、アルクは詠唱を始める。詠唱は声にならない声と言われることもあり、その発音は五十音では言い表せない。それでも詠唱ができるのは、魔術書を読むことによって頭の中に詠唱が流れ込んでくるからだ。
(これは……、火属性、いや炎属性魔術か……。アルク兄様、四大魔術だって言っていたんだが)
炎属性魔術は火属性魔術の上位互換と言える。四大魔術よりも難易度が高い上位の魔術だ。
アルクの右手には炎属性魔術の《炎球》、左手には風属性魔術の《送風》が徐々に発動され始めている。
(なるほど。攻撃力を上げるための風属性魔術か)
魔術には相性というものがある。アルクのように風属性魔術を使うと火属性、炎属性魔術の攻撃力や範囲は上がる。
だが、ラヴァンダのように魔力量が多く規格外な魔術を放つ者は魔術の相性などは関係ない。一発一発が異常すぎるからだ。
《並列魔術 風炎球》
アルクの手元が大きく光ると、二つの魔術は混ざり合い正面の的へとものすごいスピードで向かっていった。
そして、的は、いや的周辺は轟音を立てて、大きく砕けていた。
(並列魔術、面白い……!)




