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第25話 久々の女子会

「ママの暮らしてた家見たい!」

 ルドルフのリクエストがあったが、今は小原玲子ちゃんが住んでいる。のぞみは、

「玲子ちゃん今日いるかな?」

と言ってスマホで連絡してくれた。

「あ、玲子ちゃんいるって。ん、久しぶりに女子会やりたい?」

 玲子ちゃんはSNSですぐに反応してくれたようだ。

「女子会って何?」

 ルドルフが聞いてきた。

「あ~、女子会ってのはね、女の子だけでお酒飲むの」

「え~じゃあ僕、だめなの?」

 すると明くんが発言する。

「ルドルフ、あのな、聖女様は飲むと結構怖いぞ。僕も修二も、やられているからな」

「そうなの? パパ?」

「あ、いや、ま」

「修二くん、私はいつも楽しく飲んでるよね?」

「あ、ああ、まあ」

「修二くん?」

「な、ルドルフ、怖いだろ、イテッ!」

 明くんがのぞみにつねられたのか、悲鳴をあげた。


 今日はもうお昼なので大通公園に遊びに行き、夕方から玲子ちゃんのところにお邪魔して女子会となった。ルドルフは幼児なので女子会参加OKとなった。玲子ちゃんが強く参加を願ったのである。私としてもルドルフがいれば深酒を避けられるだろう。


 5人で地下鉄に乗って移動する。ルドルフは地下鉄が好きで、真っ黒な窓の外をじっと見ている。空の王者だから地中は新鮮なのだろう。

 地下鉄を降り、ルドルフに引っ張られるように地上に出る。そこは明るい光景が広がり、私も走り出したくなった。


「トウキビ、焼き? 茹で?」

 屋台を覗き込むルドルフに聞いてみると、

「両方!」

と返事された。

「ママと半分こする?」

「僕2つ食べられるよ」

「だめよルドルフ、じゃがバターもラーメンもあるんだからね」

「そっか」

 のぞみが横から口を出す。

「アイスも食べたい」


 空いているベンチを見つけ、私とのぞみがルドルフを挟んで座らせてもらう。修二くんが話しかけてくる。

「杏、なんか懐かしいね」

「うん」

 最初の札幌で院試が終わったあと、私はストーカー2名と大通公園で遊んだ。あのときもいろいろと食べまくった。


 大学3年までの私は、正直に言ってつまらない地味な女だったと思う。勉強しか興味がなかった。2年のときに合コンに1回だけ参加したが、それ以外全く男っ気もなく興味もなかった。その貴重な合コンもみごとに飲みすぎてしまい、全然記憶がない。それでも私を覚えていてくれた修二くんには感謝しかない。

 大学4年のゴールデン・ウィーク、秋開催の「実験物理若手の学校」宿舎のトラブルを解決するのに力を貸してくれた。そのあと上高地にも行ったが、札幌での院試に修二くんと明くんはストーカーのごとく私の前に現れた。上高地も楽しかった。でも不安の多い一人旅の札幌で現れた知り合い二人はとても心強く、私はかなり気を許してしまっていたと思う。この二人は私をのびのびと遊ばせ、突然勉強したくなるわがままも許してくれたのだ。


 私がはっきりと修二くんを意識したのはいつだか自分でもわからない。女子校育ちで自分の感情もよく自覚できていなかったし、ちゃんと伝えるのもできなかった。修二くんはずっとそんな私に寄り添ってくれたし、どうも明くんも修二くんをサポートしていたようだ。


「聖女様ってずるいよね」

 感慨にふける私にのぞみが話しかけた。

「何よ」

「院試のときここでこの二人と遊んだんでしょ」

「あんたまだそれ根に持ってるの」

「だって私は一人で来て、一人で試験受けて、けっこう辛かったんだよ」

「しゃーないじゃん」

「そうだけどさ、一人って不安だったんだよ」

「それはわかるけど」

 突然ルドルフが割り込んできた。

「のぞみママはそれを理由に、明パパとよくここでデートしてるんじゃないの?」

「なんでルドルフはそれ知ってんの?」

「明パパが、あと何回デートしたら許してくれるのかって、考えてるよ」

 明くんがダッシュで逃げた。


 しばらくしたら明くんはじゃがバターを人数分買って帰ってきた。のぞみは普通に受け取って食べている。


 そのあと直射日光が少し暑い大通公園でケバブとかラーメンとか色々食べた。


 やっと陽が傾いてきた頃、地下鉄で東区役所前へと移動する。玲子ちゃんの家、かつての私の家の最寄り駅は東区役所前駅なのだ。

 改札のところに玲子ちゃんが来ていて手を振っていた。こちらも手を振り返す。ルドルフはダッシュで玲子ちゃんの足にしがみついた。

「玲子ちゃんこんにちわ」

「ルドルフくん、ひさしぶりね」

 それを見た明くんは、

「これを物理の男子にみせたら絶望するだろうね」

とつぶやいた。私の意見も同様である。


 かつてよくつかったスーパーに寄り、食材とお酒を買う。お昼にのぞみのパスタを頂いたばかりだが、おいしかったからリクエストする。

「魚介のパスタにしてもいい?」

 わたしの偏食がルドルフにうつってもよくないのでOKする。私の場合、酔ってくると苦手な魚介類も普通に食べられるようになる。そのうち好き嫌いも治るのではないかという下心もある。


 数カ月ぶりの懐かしい道を歩いて玲子ちゃんのうちに向かう。ルドルフは玲子ちゃんと手をつないでいるので、荷物はのぞみと私が持つ。

「先輩たちすみません」

 玲子ちゃんはそう恐縮するが、荷物に子どもというのが大変なのはいつもの私が痛感しているから気にならない。


 久しぶりに足を踏み入れたその部屋は、あまり大きく印象がかわっていなかった。私が使っていた家具がそのままというのもあるし、玲子ちゃんも研究室で忙しくて模様替えの暇もないのだろう。

 実は以前住んでいたところが大きく変わってしまったらと気にしていたのだがそんなことはなく、安心したのか飲みすぎてしまった。

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