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地球決戦 ースペースマン5-  作者: 本山なお
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ロストラブ⑤

 敵シャトルの墜落現場で装甲兵は生存者を捜索していた。明たちも宇宙服を着て手伝う。

 深夜だが燃える破片のため明るい。

「何度見ても墜落現場っていやだな」ヨキがぼやく。

 コクピットだった残骸の中、黒焦げになった遺体が転がる。

「生存者なしか・・ん?」

 ボイスレコーダーを回収。カチリ。再生する。

『対流圏に到達。着陸態勢に入る』声が若いと言うか幼い。

『後方敵機!だ大丈夫、攻撃してこない・・ほっ。 !!』

自動操縦装置オートパイロットに異常発生!手動に切り替えてください』

『バ、バランスが!わ、わあああああ―――――――― ドガアアーーーン!』

「・・・若い。まだ十代か」

 ふたりは手を合わせる。

 装甲兵がパイロットの遺体を反重力ボードに乗せる。何かが胸ポケットから落ちる。

 明が拾う。

 手紙と写真だ。遺体の下になっていて奇跡的に焼け残ったようだ。

「これ・・」

 写真に写っていた女の子には見覚えがあった。


 シェプーラの群れが彼らの住処へ帰って行く。

【ボッケン王子】

 ある者はその名を呼び、涙を流す者もいる。

 無言で歩く王の姿も見える。

 ボッケンはその群れを見送る。

 何も言わず、礼をして向きを変える。輸送機の中へ。

 <スペースコンドル>ではなく明の輸送機で帰還することになっていた。

 カーゴルーム。作業を終えた明がボッケンに声を掛ける。

「おう、お疲れ」

「・・・」ボッケンの返事はない。

「!」

「歌?」

 風の音に混じって歌が聴こえる。シェプーラたちが歌っている。

 歌はどんどん大きくなる。大合唱だ。

 ボッケンは黙って聴いていたが、堪えきれずに涙があふれる。

 これは”旅立ちの歌”。遠くへ行く友に無事を祈る歌だ。

「・・・」

 ボッケンは涙を拭こうともせず輸送機の扉を閉める。

 明はコクピットへ。「発進する」

 輸送機が飛び立つ。

 上昇し、衛星軌道で待機中の<スペースインパルス>へ。


 明たちはメインブリッジへ呼ばれた。

「つまり“対ESPシールド”の出力を強くして妨害電波として使いました。作戦は大成功です。敵味方の被害は最小限で済みました」アランが説明している。

「最小限・・」明は不機嫌な顔で話を聞く。

 対ESP波によりデコラスの支配から免れた地球連邦艦隊旗艦艦長と通話中のようだ。

「ダグラス中佐、本艦は地球へ向かう。この宙域の防衛をお願いして構わないか?」

『流艦長。我々の目を覚ましてくれて感謝しております。シェプーラ星は命に代えても死守いたします。“対ESP波”を使い他の星系の友軍も救い出す所存です』

 奇しくも十字星雲で<神の声>と一戦まみえた地球連邦の軍人なのだが、気付く者はいなかった。

『航海の安全と作戦の成功をお祈りいたします』

「ありがとう」

 通信を終え、艦長席の流啓三が明たちの方を向く。

「ご苦労だった。呼ばれた理由は分かるか?」

「危険を冒しても装甲兵を救出したからですか?」ヨキが得意気に答える。

「そうだ」

 ヨキはいや礼にはおよびませんと言おうとしたが。

「命を粗末にするな!」

 突然怒鳴られ、明とヨキはビビる。ピンニョは飛んでシャーロットの所へ逃げる。

「装甲兵は“シンクロ“によるリモコンだ。やられても人は死なない。だがお前たちは違う。腕に自信があるのだろうが、危険を冒してまで助ける必要はない。事実お前たちの真似をした3号機は墜落した。もっと命を大切にしろ!」

「・・・」

 圧倒されて声が出せない。それに言っていることは正論だ。

「以上だ。ゆっくり休め」

 敬礼し退室しようとした明とヨキは体格のいい男に呼び止められる。

「陸戦隊隊長のガルムだ。リモコンでもやられたらダメージがある。ありがとう。俺からは礼を言わせてくれ」

 ガルムは脂ぎった手でふたりの手を取り握る。

 

 怒られて家路に就く明たちの足取りは重い。

 <スペースインパルス>ミクロ化シティの宿舎に到着。 

「あ、帰って来た」

 明とヨキとピンニョを美理と麗子が出迎える。

「おかえりなさい」

 いつから待っていてくれたのだろう?

「・・ただいま」

 なんだかほっとする。

「お疲れ様。おなかすいたでしょ。ここの食堂はずっと開いてるけど、無くなりそうだったからキープしておいた。それともお風呂が先?もう寝る?」

 一緒に入浴や寝てくれる?とは言えない。腹も減ってるし「めしだな」

 食堂へ。

「おかえり」マーチンが食事中。そりゃ無くなるわ。

 美理が尋ねる。「ボッケンちゃんは?」

「あれ?そういえば、艦に戻ってから見てないな」ヨキが答える。

「いいんだ。今はひとりにしておこう。あ、そうだ・・」

 明は麗子に焼け焦げた手紙と写真を渡す。 

「何です?」

「敵のパイロットが持っていた」

「!」写真を見て麗子が驚く。「どうして?」

 写真には麗子が写っていた。

「これは確かに私です。・・家族の持ち物じゃないと思う・・うちの学校の校庭?いつ撮られたんだろ?」

「どれ」マーチンが写真を見る。「こりゃメモリーアナライザーの画像だ。記憶を映像化する機械だ。会った後で思い出してプリントアウトしたんだろう」(第三巻第1章参照)

「男の方ですよね。普通校内には入れません。例外は文化祭や練習試合とか・・!」

 思い当たることがあったのか、麗子は手紙を広げて読む。

「・・・」

 目から涙が溢れてくる。

「知ってる人?」 

「よく覚えていませんが、お会いした事があるのかも。・・これ恋文ラブレターです。恥ずかしい。殿方にこのような手紙をもらった事はないので、困ります。・・誤字が多い・・でも・・もう返事出せない・ん・ですね」

 明は天井を見上げてつぶやく。

「確かに渡したぜ。渡したかったんだろ?」


 展望室。

 ボッケンは遠ざかっていくシェプーラ星を見つめている。

 その口元が動く。

 さよならと。


 メインブリッジ。

 ショーンが「艦長。銀河連合本部より暗号通信が入っています」

「メインパネルに映せ」

 エスザレーヌ銀河連合大統領が映る。

 流啓三は立ち上がり、敬礼する。

『ナカトミ星のデータを受け取りました。あの球体が何なのか?こちらでも解析してみます。・・では銀河連合の決定を伝えます。本日より銀河標準時間で5日後、銀河連合は大銀河帝国の本拠地・地球に対し総攻撃を開始します』 

 地球時間であと約113時間だ。


「失恋」は英語で「ブロークンハート」。「ロストラブ」でも間違いではないらしい。響きは良いんだよね。だけど直訳すぎて、山本をマウンテンブックと言うようなもの。この話、元々は全く違う”(記憶を)失う恋”の話でした。よく考えたら、亡くなった人からラブレターもらったら困りますよね(笑)。恋も愛も素敵な言葉なのに、人を付けるとなんであんなに意味が変わってしまうのだろう。

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