太陽系絶対防衛線突破①
第4章 太陽系絶対防衛線突破
「帰って来たんだ」明がつぶやく。
ここはアルタイル星系。前方に見える恒星は17光年先の太陽だ。
ハレーGP後、太陽系脱出から1か月。
メインブリッジに呼ばれた明とグレイはアラン副長に少年の遺体の写真を見せられる。
「見覚えは?」
「いえ、初めて見る顔です」
「右に同じ。誰なんですか?」
「これまで大銀河帝国の四天王と呼ばれる四人の幹部について何も情報がなかった。だがシェプーラ星で遭遇した敵旗艦に四天王の一人・青龍が乗っていたらしい。この少年が青龍と考えられる。じゃあ、これは?」
「! ジュリアス=ゼーラ!テロ集団<神の声>の首領だ。俺が・倒した」
「この二人は同一人物だ。遺伝子が一致した」
「え?」
「考えられることは一つ。青龍はゼーラのクローンだ」
「!!」
「“セルバンク”に細胞が取り出された記録が残っていた」
“セルバンク”とは人の細胞を保存しておいて、病気や事故等の必要時にクローニングして移植等に使うシステムのこと。殆どの人が登録している。ゼーラは地球人ではないが、ヘヴン教教祖のためVIPとして細胞が保存されていた。
言われてみれば青龍にはゼーラの面影がある。だが保存されていた細胞は明たちと会う以前のものだったはずだ(つまり明たちの記憶はない)。急速に成長させられ、その間に戦闘指揮官として特殊教育を受けたのだろう。おそらく生まれてから数か月しか経っていない。そこに人としての尊厳はない。勿論こういうクローン製造は禁止されている。
「他にアダムスグループ元総帥レオナルド=アダムス、星間犯罪結社パラドックス首領リッターブーンの細胞が不正に取り出されていた事も分かった」
「!!」
「それが残りの四天王?」
朱雀はピンニョと同じ元実験動物のガルーダ。かつて人類に対しクーデターを企て、失敗し行方不明になっていた。朱雀が操る女性はあるモデル兼スポーツ選手と判明している。
残る白虎と玄武がアダムスとリッターか、どっちがどっちかは分からない。外観は全く違うが、クローニング中のプログラミングでも最新の整形手術でも他人への精神移植でも可能だ。彼らも戦うためだけに作られた駒(人間)だ。
「何のために?君たちに縁のある悪人をわざわざ復活させたのは何故だ?」アランが詰め寄る。
明とグレイはお互いの顔を見る。
「俺たちこそ、その答えを知りたい」
「デコラスという人物は相当変わっているようだからな」皮肉っぽくサライが言う。「執拗に君たちを追い回した。戦略的に何ら価値のない君たちを」
「復讐か?」とロイ。「いやがらせ?」うーん、あり得ないとは言えない。
メインブリッジに警報が鳴り響く。
「次元レーダーに反応!ミサイル多数!」
クリスの報告に、ロイが反応する。
「迎撃!対ワープミサイル発射!」
艦首からミサイルが発射される。それはワープして消えて行く。
「ふたりとも座りたまえ」
流艦長に言われ、明とグレイはせり出した補助席に腰を下ろす。
超光速空間で爆発。しかし全てを撃破できず。
「重力震キャッチ!ワープアウトポイントを表示します」
「予測ポイントへ攻撃集中!」
主砲・ミサイル・ホーミングアローが発射される。
ワープアウトしたミサイルに命中。大爆発。
「続けてワープして来る艦隊をキャッチ」
「ワープ準備。逃げるぞ」
シャーロットが「プログラム完了しています」
サライが叫ぶ。「ワープ!!」
インパルスはワープして消える。
銀河連合の地球攻撃まであと2日。
極力戦闘を避けて急いで来たが、時には地球艦隊と戦わねばならない時もあった。
機関室。
マーチンが図面を見ている。ニコライ機関長兼整備長が声を掛ける。
「当番じゃないんだろ?<フロンティア号>の修理もしてたし、大丈夫か?休める時に休んどけ。作戦が始まったら・・」
「こんなでかい船扱った事ないもんで・・機関長、ちょっと教えてください」
「おう」
「艦の図面で、二基のメインエンジンと直結してエネルギーを集束させるシステムがあるんです。ウィングサーベルとは別に主翼下部へ繋がっていて・・これ何です?」
「決まってるだろ」
「?」
「秘密兵器だよ」
艦内はピリピリとした異様な緊張に包まれている。
居住区を抜け、麗子が歩いて来る。スペーススーツでも制服でもない私服のワンピース♡
医務室へ。麗子は看護師長さんに声を掛け、啓作の所へ。
「こんにちは」
「やあ、麗子ちゃん。いらっしゃい」
「あ」麗子は目ざとく机の上の指輪を見つける。
「しまった・・見た?」
「見ました!(目がキラキラ) 婚約指輪ですよね?ね?」
「ハレーGPの後に渡そうとしてたんだが・・渡し辛くなって」
「大丈夫。待ってますよ、シャーロットさん」
「ありがとう」
ちなみにこの時代の指輪は自動でサイズが変わるので相手の指のサイズを知らなくても大丈夫。しかしいつ買ったのだろう?
「何か用があったんじゃ?」
「いけない・・美理来ましたか?精密検査に」
「いや」
「やっぱり・・学校で倒れたんです。二回も。逃亡中とルリウス寄せたら四回目」
「何だって!!」
麗子は啓作の反応に驚く。
「詳しく聞かせてくれ」
第二格納庫。
<フロンティア号>の修理作業は中断されているが、外観上プロトン砲の砲身が一門しかない事以外は元通り。改造され砲の威力は以前より増している。
ひとりコクピットで明は思考を巡らす。
「(四天王が俺たちの宿敵のクローン?何のために死者を甦らせる?何を考えている?デコラス!)」
四天王ともてはやされているが、彼らが哀れでならない。
「やっぱりここだった」ボッケンが現れる。
「兄き、ちょっとこれ見て」口でメモリーカードをセットする。
メインパネルに惑星が映る。
「天文班はナカトミ第2惑星の観測施設で得たデータ解析を続けているんだけど、データには他の惑星の監視カメラ映像もあるんだ。これは第4惑星の。拡大するね」
氷に覆われた惑星表面が映っているだけだが、
「ん?」明の目は釘付けになる。「!! こ、これは!」
“恐怖の大王“ そこには球根の様に根を生やしたあの球体があった。
かつて地球に落下し地軸変位と氷河期をもたらした謎の球体。同じものが十字星雲のアスク星にも存在した。それがナカトミ星系第4惑星にも。
「アスク星のものにそっくりだ・・」
「やはりそう思う?」
明の運命を変えた謎の球体。
「今は行けない。だがこの戦いが終わったら・・
(そうだ。地球に落ちたこいつはどうなったのだろう?この様に成長しているとしたら・・)」




