潮汐ロック
「チョウセキロック?」
この星には夜が無いのよと彼女は言った。そしてチョウセキロック。さっぱりわからない。
「チョウセキロックって何?」
「あなた本当に地球人なの?チョウセキロックは潮汐ロックよ。潮汐力って知らないの?私たちには当たり前の事だからこれに該当する言葉は無い。潮汐ロックって言葉は日本語でしょ?」
「いや、聞いたことがない。ロックってのは、音楽のロック?鍵のロック?」
彼女はあきれたような顔をした。食べ物を食べて元気になったように見える。
「うーん、地球は昼と夜が交互に来るわよね、それって地球がクルクルと回ってるから、地球の太陽に向いている場所が移動しているってことでしょ?」
「おお、理科だな。知ってるぞ」
「それに対して、地球の月は、地球に対して同じ面を向けている、常に。月はクルクル回っていない」
「確かに、月は満ち欠けはするけれど、月の模様がずっと同じってことは、そうなるな。月の表側とか裏側とか言うな」
「それが潮汐ロック。主となる星に近いと、惑星はクルクル回らない。重力の潮汐効果で」
「潮汐効果?」
「潮の満ち引きを起こす力、重力による空間の歪み、回転を止める力」
「ごめん、なかなか難しい。それで、その潮汐ロックってやつで、この星は夜が来ないのか?」
「太陽は常にあそこにあり、太陽に向かって木は伸びる。日光を阻害しないようにビルも斜めに作る。私にとっては昼と夜が交互に来るほうが気が狂ってるわ。よくそんな明るくなったり暗くなったりする世界で生きられるわね」
「別に何の不都合もないけど」
「生まれた時からそうならば、どうってことないんでしょうね」
彼女は飲み物を飲み干し、ガタッと立ち上がった。
「足りないからもっと持ってくる」そう言って自販機に歩いて行ってしまった。
トランという星。
外の風景を見ると、どうやら本当らしい。俺は外の風景を見ながら考える。
太陽はけっこう高い位置にあって、夕焼けというには早すぎる位置だ。
太陽はずっとあの位置にあるらしい。沈まないらしい。朝も来ないのか、朝が来ないってことは、朝飯はどうしてるんだろうか。そして夜が来ないならいつ寝るんだろうか、寝ないんだろうか。
主星に近いと自転しない?それってあの太陽に近いってことだろうか、地球と月ぐらい近かったら、この星は灼熱地獄になるんじゃないだろうか。
分からないことが多すぎる。俺の頭では理解できないことが多すぎるんだ。なんか難しいことを考えたら疲れてきた・・・
「うお、ウマい!この味は・・・」
グラタンのような食べ物は、親子丼の味がした。




