再生
何なんだろうか。そう思いながら俺は黒いカプセルに近づいた。
見上げると、上には丸い金属の大きめの機械があって、チカチカと数個のランプを光らせている。その上には天井まで太いパイプが伸びていた。
さらに近づいて黒い液体を睨んでいると、黒が少し透けてきた。
「うん?」
透け始めるとその黒は、あっというまに透明になった。透明になったと思ったら消えてしまった。ガラスも何もなくなってしまった。そして目の前に女の顔があった。目が合った。
「うおっ!」
俺は飛びのいた。そこには透き通るような美人の、赤い髪の女が裸で立っていた。
「なぜ、あの部屋で待っていてと、言ったのに」
ガラガラ声の裸の女が言った。
「あー、あー、あー、けほっ、けほっ、う、ううん」
女は喉の調子を整えながら、自分が裸だということに気が付いた。
「服を作る。少し待って」女が言った。「できたら、あっちを向いていてくれると嬉しい」
俺は慌てて目をそらした。
「もういい」
女の声に振り返ると、女は服を着ていた。白い繋ぎのような全身タイツのようなピチッとした服の上に、黒い革ジャンのようなものを着ていた。
「もしかして、さっきのプラモデルを動かしてたやつか?」
さっきのプラモデルの中身の黒いマネキンが消えて、生身の赤い髪の女が登場した。大きくなったのか、それとも、この女もロボットで、中で小さいマネキンが操縦しているのか。
「動かしていたという表現は、少し違うけど」
「どういうことだ?」
女は少し考えてから言った。
「さっきのは私の本体。これは私の昔の本体」
「昔の本体?」
本体ってなんだ?肉体ってことか。でもさっきのプラモデルの中身は、肉体って感じじゃないな。肉じゃなさそうだもんな。
「再生した」女はそう言った。「私たちは昔、この肉体を捨てた。私は密かに自分の肉体のデータを残していた。だから再生できた」
「まったく分からない。聞きたいのはそういうことじゃなくて、もっと違うことなんだけど・・・」
気が付いたらカプセルに閉じ込められていて、謎の場所に連れてこられて、目の前にプラモデル。そして謎の禁止されている操作。そしてマネキンのように細い美人の女。
「あなたには説明することが沢山ある。ゆっくり話す。お腹が痛い。お腹がすいている」
「はい?」
「食べ物を食べるために、移動する」女が首をかしげた。「違うわね」
「違う?」
「ご飯を食べに行きましょう!」女は手を叩いてにっこり笑った。




