板谷楓のスイートメイプルタイム 2023年6月2日
山奥にたたずむちっちゃな村、このはな村のコミュニティラジオ、このはなFM。金曜夜のDJは板谷楓さん。彼女のトークと素敵な音楽で綴る番組の様子を、小説スタイルでお楽しみください(もちろんフィクションなので番組も放送局も実在しません)。
もっともなんだかんだで、作者が現実の世の中に対して抱いている不平不満を登場人物の名を借りて吐き出してるだけという話もありますが。
みなさんこんばんは、板谷楓です。
週末の夜、このはな村役場分署の一階サテライトスタジオから生放送でお送りする番組、板谷楓のスイートメイプルタイム。
いよいよ梅雨の季節になりました。このはな村役場分署一階のスタジオから見える窓の外ですが、今は曇りのようです。標高が高いので雲が地上近くを流れてきていますが、雨は止んでいるようです。
全国的には台風の影響で沢山雨の降ったところや、まだ降っているところもあるようです。充分にお気をつけ下さい。
この番組では、このはな村のさまざな情報を、落ち着いた音楽を混えてお送りしています。かたい話ではありませんので、どうかリラックスしてお聴きくださいませ。
今日は沖縄の方から台風が北東の方へ進んできているようで、このはな村でもまとまった雨が降りました。
もともとこのはな村は、冬は日本海側からの雪雲が、夏は午後になると雷と大雨がしょっちゃう降ります。山の天気は変わりやすいといいますが、村全体が山の中にあるのでそうなるんですね。
もちろん梅雨の雨もバッチリ降りますが、この時期は梅雨前線がまだ南の遠いところにあるために、ひどい大雨とか長雨はあまり多くないみたいです。
だから今日みたいな大雨が六月に降るのは珍しいんだそうです。今のところ村役場には被害の報告は無いそうなので引き続きお気をつけください。
このはな村の梅雨は、前線が遠いということなので、梅雨の晴れ間も出やすいってことです。春が遅い村にとっては野菜が育つチャンスの時でもありますね。今年もすくすくと育ってるみたいですよ。
それに畑の作物もですけど、自然の植物もこの時期の見ものですね。このはな村は高山植物を人里で見られるのも魅力の一つですから、梅雨の時期は観光のお客様が少なくて意外と狙い目だと思いますよ。
ミズバショウはだいぶ葉っぱだけに変わってきましたけど、そうですね、サンカヨウはあちこちで見ごろになってますね。
サンカヨウというのは、白い花なんですが、花びらが水に濡れると透明になるんです。今日みたいな雨の日はむしろ見頃の花です。
ほかにも、ハクサンイチゲとかヤマオダマキ・アズマシャクナゲ・イワカガミなど、いろいろな花が見られます。
こういう登山やハイキングでもしないと見られない花がですね、並木道の木の根元とかに普通に咲いてるのがこの村の良いところだと思います。
なぜこうなったかというと、歩道の植栽に植える草木をすべて現地調達したからみたいですね。なんたって昔も今も道の周りに綺麗な花がたんまり咲いてるんですから。
で、そこが畑だったりするものだから、毎年その草花ごと耕しちゃうし、そんなことするくらいだったら、これを道沿いに植えてしまおう、という発想だったそうです。
山に生える草花は丈夫だし、地上が枯れても根っこが生きててまた次の年に芽を出すのも多いんですよ。だから元手もただだし、毎年新しく花を植えなくてもまた育ってくるから村のお財布にも優しいみたいです。
盗まれませんか? なんてこともよく観光で来た方に聞かれるんですが、案外盗まれないんですよ。それが。
観光のお客様にしてみれば、身近に咲いている花がそんな貴重な高山植物だってことに気が付かないみたいです。うん、そりゃそうですよね。そういう貴重な植物が無防備に歩道で育ってるなんてなかなか無いですから。
こないだも観光のお客様が道を歩いてて、道端のミズバショウを見て、
「あら、本物?」
「ええ? そんなわけないでしょ。造花に決まってるわよ。こんなところに生えてるわけないじゃないの」
「そうよねえ」
なんて。だいたいそんな感じの反応ですね。
あ、この話聞いて、しめしめと思った方? 村の道路に生えている植物は村のものですから、思いっきり高い過料取られますのでご覚悟くださいね。
それと、隠れてもらっちゃえと思ってる方、それ危険ですよ。無闇に歩道の植栽に手を出すと、どんな生き物がいるかわからないし、あとトゲのある植物なんかもいるんで、色々ひどい目に遭っても知りませんから、ね?
食レポでーす。
今日は食レポも、村の自然の中で育ったものにこだわってみます。
山菜です!
ゼンマイやワラビとかは、村では普通にあちこちに生えてますし、ほかにもわたしが聞いたことない名前の山菜がたくさんあるんです。
で、山菜はアクを取ったり寝かせたり、食べるまでに色々手間もかかるんですが、そのぶん食べられるようになった時の喜びは大きいんです。
山菜って、煮ものがスタンダードだと思うんですが、一度煮たものを、今日はこのはな流の味付けにしてみました。
じゃーん、バター焼きでーす! 意外と合うんですよ、山菜とバターって。だって野菜でもアスパラとかをバターで焼くと香りが良くなるじゃないですか。だったら山菜もアリですよね。
わたしは、アルミホイルに包んだのをオーブンとかコンロで焼きます。ニジマスとかと一緒に焼いても美味しいですね。今日もコンロ持ち込みで、ちょうど食べごろだと
思います。うわーいい香り。では、いただきま……。
あつっ!
わー舌やけどしひゃいまひた〜。でもこりも、ホイル焼きの醍醐味にゃんでふよねぇ〜。あつつ。
曲行くんで、この間にお水で口の中冷やしで、アチチしての繰り返しで楽しんでまーす。
板谷楓のスイートメイプルタイム、今日もゆるっとお送りしてきました。
しばらく雨が続いたりするかもしれませんが、もしそのときは、わりと晴れることの多いこのはな村にお越しくださいね。
そろそろお開きのお時間です。それではまた次回、ごきげんよう。
台風二号の被害がかなり出ているようです。お見舞い申し上げます。
このはな村は高原地帯にある村という設定ですから、高山植物も普通にみられます。もちろん現実に高原の山野草が道路脇の花壇に植わってたりしたらビックリですし、整備された花壇には園芸用の花が植えられたり、そうでないところは外来の野草に占拠されている場合も少なくないですが……。
盗掘問題についてはもう一つ裏設定があって、このはな村の花壇には外国から持ち込まれたエーデルワイス(セイヨウウスユキソウ)なども植えられていて、そちらの方が目立つので盗まれやすく、その奥に育っている在来の草花は見逃されるということもあります(それをラジオで言ったら村人の作戦がバレてしまうので楓はあえてそこには触れません)。
アルカリ性の土壌を好む植物ですから、火山性土壌であるこのはな村の土には本来合わないのですが、それゆえに目立つということもあります。
で、楓が匂わせていた植物を盗もうとすると痛い目に遭うとは具体的にどういうことかと言うと、ツタウルシなど、かぶれ成分を持つ植物をそのまま除去せずに残しているんです。またアザミのようなトゲのある植物もありますし、木の根元に巣を作る蜂に刺されたりもするので、痛い目に遭うということです。
こういう雑草とか、あと蜂とかもこちらから手を出さないと危険は無い動植物でも、苦情が来るからなのか、すぐ駆除されてしまいますね。
クレームが来たら、それが本当に危険なのか検証せずに排除しちゃうというのは良いことだとは思わないのですが……。
このはな村はそのへんかなり昔のワイルドさを残す村ですので、その辺もこれから書いていくつもりです。




