板谷楓のスイートメイプルタイム 2026年5月26日
山奥にたたずむちっちゃな村、このはな村のコミュニティラジオ、このはなFM。金曜夜のDJは板谷楓さん。彼女のトークと素敵な音楽で綴る番組の様子を、小説スタイルでお楽しみください(もちろんフィクションなので番組も放送局も実在しません)。
もっともなんだかんだで、作者が現実の世の中に対して抱いている不平不満を登場人物の名を借りて吐き出してるだけという話もありますが。
みなさんこんばんは、板谷楓です。
週末の夜、このはな村役場分署の一階サテライトスタジオから生放送でお送りする番組、板谷楓のスイートメイプルタイム。
一週間のお仕事はいかがでしたか? 学校はいかがでしたか? 週末お仕事の方もいらっしゃるでしょう。そしてお出かけの予定がお有りの方も、予定が未定の方も、わたしの話に興味を持って、お耳をこちらに傾けていただければ幸いです。
こないだ、マイナンバーカードを作ろうと思って役場に行ったら、受付を中止してます、ってなってたんですよ。
まー役場といっても、このスタジオも役場分署の一階にあるので、すぐ上での話なんですけどね。
なんでかって思ったら、
「マイナンバーカードは全国で不具合が続発しているので村では受付を一時中止します」
って書いてあって、そう言えばマイナンバーカードって他の人の個人情報とつながったとかいうトラブルあったなと思い出して、一旦あきらめたんです。
そしたら何日かして、県か国の出先かから村長さんが怒られたらしいんですよ。国がやってることを村の判断で勝手に止めるなって。
で、また受付再開したみたいだったんで、行ったんですよ。そしたら個人情報が漏れる可能性とか、あとポイント貯まる制度があるけど、あれが違う人に振り込まれたりすることもあるとか、色々聞いてたら怖くなって、今日はやめときます、って。帰って来ちゃいました。
聞いてると怖くなっちゃって。自分の情報が知らない人のところで丸見えなっちゃうなんて、ねえ。
わたしがカード作ろうと思ったのはなんでかって言うと、わたし身体障害者だって前に言ったじゃないですか。だから将来、もしかしたら障害者手帳とかがカードで代用出来るかもしれないなー、って思ったんですよ。
でも今の感じだと、自分の障害の内容が知らない人にわかったり、他の人の障害が見えたりするかもですから、手帳の情報をカードに入れるって、怖いなって思います。
役場の窓口でも、個人情報漏えいのリスクはすっごく聞かされたので、もう作らないと思います。
でもそれもまた、国の出先とかに怒られてるみたいなんですけどね。余計なこと言うな、って。でもそれ、あかしくないですか? ありそうなリスクはちゃんと説明しない方がダメだと思うんですけど。
気を取り直して食レポでーっす。
今日は晩ご飯食べてないので、このはな村のファストフード、米麺をいただきまーっす。
米麺というのは文字通り、お米で作った麺なんですが、ベトナム料理のフォーとかブンをもとに作ったものです。
昔、ベトナムの人たちが戦争から逃れて日本にもやってきて、で、このはな村って外国の人もどんどん歓迎する村ですから、その人たちをどんどん呼んだんです。そしたらお礼にベトナムの料理を教えてもらったんですね。
だけどその頃は、まだベトナム料理があんまり日本に無かった頃だから、フォーって、なあに? ってなるでしょ? そこでそのまんま、お米で作った麺だよって言えば分かりやすいってことで、名前がついたそうです。
いただきまーす。
日本のお米は東南アジアと違ってもちもちしてるから、ベトナム産の麺とはちょっと違った歯ざわりで、美味しいんです。
味付けは、今はベトナムの調味料も簡単に手に入るようになったのでそれを使ってもいいんですが、今日は上州名物おっきりこみのお汁を使います。
おっきりこみにも色んな味付けがありますけど、わたしは醤油味の鶏肉入りで野菜をたくさん入れてます。
今日のわたしは家でお汁を仕込んで麺も軽めにゆでて持って来ましたけど、村内各所の軽食スタンドでも食べられる村のファストフードです。現地ベトナムの味を受け継いだのもあれば、こんなふうにアレンジしたものもあります。
村に来たら色々食べて楽しんでくださいね。
板谷楓のスイートメイプルタイム、そろそろお開きのお時間です。
今日はちょっと愚痴っぽくなっちゃいましたが、愚痴りたいときは愚痴っていいと思うし、ラジオや向こうの皆さんも個人情報ダダ漏れなんて嫌に決まってるから、マイナンバーカード作りは慎重にしてくださいね。
それではまた次回、ごきげんよう。
これだけグダグダな運用が続いていては、マイナンバーカードを作ることに不安を感じるのは当たり前だと思います。作中で楓が懸念していた、障害者手帳との紐付けだってやろうと思えばすぐ出来るし、そうするとその人が隠していた障害がばれてしまうこともあり得ます。それを隠さないとコミュニティの中にいられない人というのもいるのですから、それはなにがなんでも避けてほしいところですが。
それに限らず、ネガティブな情報がカード一枚に集積されちゃう可能性を考えれば、警戒するのが普通だと思います。
食レポをベトナム料理にしたのにも意味があります。
日本は難民の受け入れをほとんどしない国ですが、ベトナム戦争の時には多くの難民を受け入れ、その子孫が日本に定着しています。
このはな村は、あらゆる国の人々を受け入れてきた設定にしていますので、当然それらの国からの難民が普通の住民として住みつき、その国の文化をもたらしてくれているわけです。
作中で楓が彼らのことを「難民」と呼んでいないのは、ベトナムから来たということを特別視していないからです。楓も村の人々も、どんな人でもどこの国にルーツがあるかなんて気にせず、同じ村の「住民」だと考えていますから。
だからベトナムの文化にも興味を持ち、それを尊重しつつ、自分たちも関わっていく、そうやって村の文化はより豊かになっていったのです(ではそういったこのはな村の設定を作者はなぜ作ったのか? という話をいつか書かねばならないのですが)。
戦後日本史においては、このベトナムをはじめとする「インドシナ難民」が最大の難民受け入れ事例となっています。その後日本は「先進国中難民の受け入れに最も消極的な国」の座を買って出て今に至るのです。
作者はウクライナからの「難民」受け入れは素晴らしい人道的行為だと思っています。ですが一方でこの国はスリランカからやってきた難民は入管職員の未必の故意によって殺されてしまう恐ろしいところだと知っています。
だからマスメディアはウクライナから戦禍を逃れてきた人々を「避難民」と呼んだのでしょう。どうしてウクライナ人は良くてそれ以外の国民は駄目なのかと問われないために。
そういった世の中へのモヤモヤを当てつけがましく今週も書いてみました。おそまつ。




