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板谷楓のスイートメイプルタイム 2023年5月19日

 山奥にたたずむちっちゃな村、このはな村のコミュニティラジオ、このはなFM。金曜夜のDJは板谷楓さん。彼女のトークと素敵な音楽で綴る番組の様子を、小説スタイルでお楽しみください。

(もちろんフィクションなので番組も放送局も実在しません)

 みなさんこんばんは、板谷楓です。

 週末の夜、このはな村役場分署の一階サテライトスタジオから生放送でお送りする番組、板谷楓のスイートメイプルタイム。

 一週間のお仕事はいかがでしたか? 学校はいかがでしたか? 週末お仕事の方もいらっしゃるでしょう。そしてお出かけの予定がお有りの方も、予定が未定の方も、わたしの話に興味を持って、お耳をこちらに傾けていただければ幸いです。


 さて、今週の楓さんはちょっとご機嫌斜めです。他の番組でも話が出ているかと思いますが、村でちょっとしたもめ事があったんです。


 このはな村では、二〇二〇年から世界的にまん延した新型ウィルス感染症予防の取り組みを、現在もなお継続しております。

 今年に入って国は対策の緩和に動いていますが、このはな村は農山村にありがちな問題、つまり医療体制の不備や高齢者の増加といった事象を抱えています。

 そのため、今回の感染症流行当初から、来村された方々にウィルスの検査を推奨しております。この検査で陰性が確認できた方には、その証明書を発行しております。

 この陰性証明書は、村内の商業施設や宿泊施設等の事業者が、安全安心な体制でお客様をおもてなしするためのものです。

 そのため、村外からお越しの方で、検査をしていない方の来店・来所をお断りする店舗等もございます。


 今回問題になったのは、このような出来事です。

 事前に村内の宿泊施設を予約していたお客様が大型連休中に来村されましたが、該当の施設では、お客様がこの感染症検査を受けていなかったことを理由に、受け入れをお断りしました。

 宿泊施設の支配人は、

「宿泊には陰性証明書が必要なことは予約時に説明済みであり、前日の予約確認メールでもその旨を明示している」

と、宿泊をお断りした理由を説明しています。

 一方、そのお客様は、

「前日にメールが届いたのは知っていた。だが国が感染症としてのレベルを下げたのに、これまで通りの対応を続けるのは常識的にあり得ない。せっかく期待してやってきたのに残念だ」

と主張しています。


 以上は、上信ニウズの記事から抜粋したものです。

 わたしもこのお宿のご主人と顔見知りですので、そう簡単に感染の可能性がある人を受け入れられないのってよく分かるんです。けっして大きくないお宿ですから、一人感染するともう営業出来なくなりますし。

 このはな村は家族でやってるような小さなお宿が多いんで、どうしたって病気には神経質になっちゃうんです。


 もちろん、感染症としての法律上の扱いが二類相当から五類に下がったことは事実です。ですが、それにともなって民間の企業や事業所がウィルスへの対応を変えなければならない、という決まりはありません。

 したがって、宿泊施設が宿泊客の受け入れをするかどうかは、その施設の判断によります。

 なお問題となったお客様は、結局近くの町の宿泊施設に泊まったそうです。そちらのお宿に満足されてたようですので騒動は収まる方向に行くと思うんですけどね。


 うーん。曲の間にSNSみてたんですが、やっぱり批判の意見も多いですね。

 なんだかんだで当事者どうしは納得してるんですよ。それなのに何故だか第三者が口出して来るのが良くわかんないなーって。

 このはな村がウィルス検査を続けているのは村の判断だし、受ける受けないも任意です。PCRは何時間か結果出るまでかかるからって、今年度から抗原検査でも可、ただし村に滞在中は毎日検査してね、ってなってます。もちろん無料です。

 その検査を受けないとレジャーも買い物も飲食も宿泊も村ではほとんど不可能なのはおかしい、って意見もありますが、それもそれぞれのお店やお宿とかの判断ですから、それは尊重されるのが本来ですよね。


 実際、村の検査で陽性であると判明する観光のお客様が今でもいらっしゃるんです。全国的には感染者の全数を発表しなくなりましたが、大型連休中の村の検査場の様子を見ると二月頃の患者の出方に似ていますね。これは村のサイトを見れば分かります。

 ということは、首都圏では毎日数百人とか、もっと感染者が出てると推測できちゃうんです。

 ちなみに、このはな村の検査場で陽性反応が出たときは、自力での発熱外来受診か、このはな観光ホテルに設けられました陽性者専用フロアでの療養、のいずれかを選べます。

 後者の場合、すぐにパルスオキシメーター等が貸与され、いつ病状が悪化しても対応できるようになっています。現に、このフロアで療養中の方が高熱などの重い症状を呈した例は多く、早期に対応が出来た事例が多くあります。

 いま現在も療養中の方がいらっしゃいます。


 そう、この意見も多いんですよ。

「村の対応が過剰だから村民が萎縮する」

でも萎縮するって言うけど、分かんないんですよね。萎縮する理由が。

 警戒はしてますよ。さっきも説明したように、まだウィルスに感染する危険度は高いですから。警戒とか用心とか、するに越したことは無いです。

 経済活動が停滞するとかって意見もよく見ますけど、このはな村は普通に経済活動やってるんですよね。もともと観光の村じゃなくて農業を地道にやってた村ですし。だってまわりに観光地がありすぎてそっちの方が駅や高速道路に近いですから。観光というより別荘とかに何日も滞在するタイプの

場所なんです。

 だからむしろ、自分たちが感染していないことを確認してからゆっくり村でくつろぐ、という楽しみ方をされる方が多いのもあると思います。別荘でゆっくりする方々は毎日パーティやるわけでもないから、もともと観光で稼いでる村じゃないんですよ。


 あと、マスクについても色々ご意見を頂戴しているんですが、マスクの着用は個人の判断で、という見解は村でも同じですよ。これをよそから来た人に言うと驚かれるんですが。

 でも、検査とかの対策をしっかりしていると自然とマスクをしようと思うのが人の心理みたいなんです。そうですよね。きっちり対策してるってことは、まだ危ないんだなって思いますもんね。

 だから、このはな村でも決してマスクは強制ではないです。


 だから、これから増えてくるかもって思ってます、マスクをしてるしてないのトラブルは。

 でも、それはあくまで個人の判断ですし、お店やお宿でマスクをするよう求められたとしても、それはお店とかのご主人や従業員さん個人の判断ってことですしね。


 なーんてことを言うと、これまた、個人の判断に一企業が干渉してくるのかみたいな反論も来るんでしょうけど……。あ、やっぱりSNSにそういう反応さっそく来てます。

 でもそれ、観光客を受け入れる側にしてみればこっちの判断に干渉しないでって話でもありますよね。

 だって例えばドレスコードとか、泥酔客お断りとか、お子様連れお断りとかっていうのは、全部それぞれのお店が判断してることですよね。それに対して、個人の判断でチャラい服を着てたり、泥酔したり、こどもを連れてお出かけしてる人が入店を断られても、それはおかしいとはならないじゃないですか。

 もちろん今後も、村としてはマスクについてどうこう言わないと思います。ですが、お店とかは規制がゆるくなればなるほど警戒して、マスクしてない人お断り、とわざわざ書くようになるかもしれないって思ってます。


 はーい、楽しいコーナーやりまーす。食レポ行きます食レポ。

 昨日とか急に暑くなって、そろそろ冷たいものもほしいなーって頃合いですよね。そこで、


 じゃーん! 冷凍りんごでーす!


 りんごって寒い地方でたくさん取れますよね。このはな村でも当然、果物の代表はりんごです。りんごの木は昔から村に住んでいる家の庭には大体植えられてます。今日は、わたしが里子でお世話になったお家の、ちっちゃな姫りんごを持って来ました。

 このはな村では、りんごが実るとすぐ冬です。そこで雪が積もったらそれをかき集めて、りんごとか野菜なんかを埋めておいて貯蔵します。りんごは冬の栄養補給にとても役立ってきたんです。

 春になって雪が解けてくると、りんごの頭が出てきます。それを冷凍庫に移動させると、そのままシャーベットみたく凍ったりんごになります。

 このカチカチのりんごを、まずは一口。


 ……すっぱぁぁぁい!


 えっと、ぐすっ、泣けちゃうくらい、すっぴゃいでふ、げほ、げほっ。

 ん、んんっ! えーっと気を取り直して。いま比較のためにそのまま食べてみたんですが、とっても酸っぱいです。品種改良が進む前のりんごなので、酸っぱくて小さくてって感じです。冬の栄養のために植えられたっていうのが、なんか分かります。


 なので、こういう酸っぱいりんごはメイプルシロップに漬けるんです。ちっちゃな瓶とか壺に姫りんごをいっぱい入れて、シロップに漬け込みます。これでしばらく冷蔵庫に寝かせておくと、良い感じに味が調和してきます。

 というわけで、メイプルシロップ漬けの姫りんごも、いただきます。


 ん〜、甘酸っぱくて、美味しい〜。


 このはな村の家の庭に成るりんごは、だいたいこんな感じで食べるのにひと手間必要なので、市場に出回ることはないです。でもたまに喫茶店とかでおまけで出てくることがありますから、そしたらラッキーですよ。

 興味のある方、村のお店に足をお運びくださいね。

 検査はしっかり受けてから。


 板谷楓のスイートメイプルタイム、そろそろお開きのお時間です。

 このはな村の事情を知らない方にとっては随分厳しい村なんだと思わせてしまったかもしれませんが、基本、来るもの拒まず精神の強い村ですので、検査を受けるだけのひと手間で歓迎してもらえるはずですから、お気軽にお越し下さいね。

それではまた次回、ごきげんよう。

 いやもうホントに大変だと思います。COVID-19の第九波が来ているのは間違いないでしょうし、そのくせ国は五類への移行を機械的にやってしまった。ゴールデンウィークを開けたところで感染者が増えているのは、全数把握を終えてもなおデータで明白(発熱外来での定点観測は感染爆発期と等しい数値を出しています)なのに予定通りやってしまう政府には、不信感しかありません。


 今回はもう一つのメッセージがあります。「お客様は神様」なんかじゃない、ってことです。

 マスクを付けてる付けてないで入店拒否とかが問題になったこともありますが、お店の経営者だって対等に基本的人権を持った人間ですからね。国がマスクは個人の判断とか何とか言い出した今であっても、店主という「個人」が、「自分の店にはマスクをしない客は入れない」と言って追い返された客がいたとして、反論の権利なんてないと思います。

 商売やってるほうも人間です。客も人間です。だいたい神様だったらまず悪いウィルスをこの世から根絶させるくらいのことをしてから下界をうろつけってもんです。


 そんなことを思いながら書いてみました。賛否両論はあるでしょうが、国全体が流されるようにマスクを取ろう取ろうとなってるときに、逆のこと言って何が悪いんだ、って思いで書きました。

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