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板谷楓のスイートメイプルタイム 2023年12月1日

 山奥にたたずむちっちゃな村、このはな村のコミュニティラジオ、このはなFM。金曜夜のDJは板谷楓さん。彼女のトークと素敵な音楽で綴る番組の様子を、小説スタイルでお楽しみください(もちろんフィクションなので番組も放送局も実在しません)。

 もっともなんだかんだで、作者が現実の世の中に対して抱いている不平不満を登場人物の名を借りて吐き出してるだけという話もありますが。

 このはな村の設定は、第十部分「板谷楓のスイートメイプルタイム 2023年6月9日」および第十一部分「板谷楓のスイートメイプルタイム 2023年6月16日」の本文にて紹介しています。

 みなさんこんばんは、板谷楓です。

 週末の夜、このはな村役場分署の一階サテライトスタジオから生放送でお送りする番組、板谷楓のスイートメイプルタイム。

 この番組では、このはな村のさまざまな情報と、落ち着いた音楽、そしてわたしのとりとめもない雑談を、ミックスさせてお送りしています。かたい話ではありませんので、どうかリラックスしてお聴きくださいませ。


 今年はなかなか涼しくならかったこのはな村も、先月ごろから急に秋らしくなって、日曜日には初雪が降って、うっすらと積もりました。もうほとんど消えちゃいましたけど、木や建物の日影に残ってるところもあるので、そのまま根雪になっていくかもしれません。

 こうなると、いよいよウィンタースポーツの季節が到来です。このはな村営スキー場は今年度も年内オープンの見込みです。


 ところで、スキー場って夏のあいだはどうなっているか、ご存知ですか? せっかくの土地を春から秋までそのまんまというのも勿体無いですし、各スキー場ではさまざまなレジャーが楽しめるように工夫して、観光に結びつけているようです。

 では、このはな村はどうかと言いますと、そこは村営スキー場の弱いところなんですね。アクティビティ一つ作るにもお金が掛かりますから……。

 でも、このはな村では昔から、雪が解けたスキー場の広大な土地を有効活用してきたんです。


 と、いうわけで、ここからは食レポも一緒にお届けしまーす。

 春から秋のスキー場の何がいいって、そのままだと広大な原っぱになって、草ぼうぼうになるところなんですよ。日当たりが良いですから。

 アクティビティとかやるなら、雑草としてそれを刈って、芝を植えたりしなきゃならないですけど、このはな村の場合は生えっぱなしにしておいて、一気に刈り取って、牧草にするんです。

 で、牧草といえば?


 牛乳!


 ということで、今日はこのはな村営牧場の牛乳をじっくり熟成させたチーズをフォンデュにして、色々なものを浸けて食べようと思いまーす!


 で、まずは、


 ユリ根!


 ヤマユリとかオニユリの球根って食べられるじゃないですか。このはな村の場合、牧草っていっても自然に生えてくる草を集めるだけなんで、そこに混じって生えてくるユリとかは抜いたりするんで、秋になると大きく育ったユリの球根を知り合いからもらったり出来るんです。

 一度ゆでたユリ根を、とろっとろのチーズに浸けるんですけど、まーこんな風に和風の具材ですから、お味噌とかお出汁も加えた和風チーズフォンデュなんで、おおっ、ほっくほっくのぽっくぽっくで、たまんないですね〜。

 牧草を集めるのは秋なんです。冬用の牛のエサにするんですね。だからそれまではユリも伸び伸び育ってて、これは美味しいですね〜。ちなみに八百屋さんとかで売ってるユリ根は畑で栽培してるものが多いみたいですけど、これは自生ですからね。結構珍しいと思いますよ。

 野生のはアクを取るのが余計大変って説もありますけど。


 そんな感じで牧草に混じって花がいっぱい咲いてますから、夏は綺麗ですよ。でも牧草を集めるのもトラクターとかでやりますから、これは緩斜面のところだけなんです。

 じゃあもっと上の、斜面がきついところはどうするの? って話ですけど、ここで、第二のおかずをフォンデュに投入しまーす。


 それは、


 くず餅!


 スキー場の急斜面では、薬用の植物を育ててるんです。このはな村は昔から日本有数の薬草の産地なんですよ。薬草といっても、自然に生えている草花から薬草として使えるものを移植するだけですけどね。

 でも野草って、たくましいですから。ほっといても育つんで、上の方のゲレンデで育てれば手間要らずで大きくなってくれるのが有り難いんですね。


 で、なかでもクズっていうつる草が、すっごくよく育つんです。これって元々このはな村にはほとんどいなかったんですけど、いつのまにか数が増えて、標高の高いところまで侵入しちゃったんです。

 このクズが厄介ものでもあるんですよ。立ち木に巻きついて全面覆い尽くして枯らしちゃったりして。だから雑草扱いされることも多くて、スキー場の薬草畑でも困りものだったみたいです。

 でもこの根っこも薬になったり、あとくず粉というのを作って食用にもします。


 能書きはともかく、食べますよ。チーズに浸けて、と。

 うん! 大人の味! くず餅って黒蜜ときな粉で甘くするのが多いですけど、しょっぱめの味付けも合いますね。ところてんを三杯酢で食べるか蜜で食べるかの違いみたいなものかな。

 お酒には、こっちかなー?


 ちなみにゲレンデ薬草園のクズは、木に巻きつくやつは引っぺがして草原の方に育つように向きを変えるんです。それでも地上を這って伸びてくし、キキョウとか、背の高い薬草に巻き付いたりもするんで、本音としては根絶させたいみたいですけど。

 薬草園は健勝堂という、村に古くからある薬屋さんが管理してるんですが、里の方にも薬草園を持ってるのでそっちに全部移したいみたいです……。


 板谷楓のスイートメイプルタイム、お開きの時間が迫ってまいりました。

 チーズフォンデュは冬になると、中央広場に屋台が出るんですよ。今日もそこから買ってきたんですけど、ティアアウトもできますし、屋台で食べるのも勿論楽しいですよ。

 屋台のフォンデュは大阪の串カツみたいな感じで、串に刺したネタがずらっと並んでて、好きなものを取って客席の前にある漬け用のチーズに浸けて食べます。

 屋台では二度付け禁止です、当然。長いチーズを暖める入れ物があって、そこをみんなで使いますからね。なんでも創業以来、チーズを継ぎ足し継ぎ足し守ってきた秘伝の味だとかで。そういうのも珍しいですよね。

 お会計は串の数でやってて、一本百円です。つまみながらお酒をいただくのも、乙なものですよ。


 ちなみに薬草園は春から秋には見学可能というか登山道が脇を通ってます。

 ただし、草花を勝手に取ると窃盗罪ですから、十分お気をつけ下さいね。


 お相手は板谷楓でした。

 それではまた次回、ごきげんよう。

 週一ペースが守れてきたと言ったとたんの週遅れでして、なんともお恥ずかしい……。


 夏のあいだのスキー場って、草ぼうぼうだったりもするんですけど、最近はジップラインを引いたりして夏の間も活用するところが増えてるようです。

 信州の車山でハイキングをしたとき、ところどころに巨大なプロペラとモーターの付いた機械が置いてあって、多分それは降雪機なんですね。冬はそこがゲレンデになるみたいです。

 さて、このあともう一本書きますよっ、と!

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