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板谷楓のスイートメイプルタイム 2023年11月17日

 山奥にたたずむちっちゃな村、このはな村のコミュニティラジオ、このはなFM。金曜夜のDJは板谷楓さん。彼女のトークと素敵な音楽で綴る番組の様子を、小説スタイルでお楽しみください(もちろんフィクションなので番組も放送局も実在しません)。

 もっともなんだかんだで、作者が現実の世の中に対して抱いている不平不満を登場人物の名を借りて吐き出してるだけという話もありますが。

 このはな村の設定は、第十部分「板谷楓のスイートメイプルタイム 2023年6月9日」および第十一部分「板谷楓のスイートメイプルタイム 2023年6月16日」の本文にて紹介しています。

みなさんこんばんは、板谷楓です。

 週末の夜、このはな村役場分署の一階サテライトスタジオから生放送でお送りする番組、板谷楓のスイートメイプルタイム。

 この番組では、このはな村のさまざまな情報と、落ち着いた音楽、そしてわたしのとりとめもない雑談を、ミックスさせてお送りしています。かたい話ではありませんので、どうかリラックスしてお聴きくださいませ。


先月の鉄道の日にオープンしたこのはな鉄道ランドですが、なかなかの盛況です。そこでこのたび、新たな車両が導入されましたので、早速取材に行って参りました。ではそちらの音声をどうぞ。


 こんにちは。ただ今、十一月十二日、日曜日の午前十時です。今日はようやく、このはな村らしい秋の気温になってきました。吐く息が白いです。

 わたしは今日、このはな鉄道ランドに来ています。寒い中、今日も多くの方々が訪れています。

 こちらの自慢は、このはな村の近くをかつて走っていた軽便(けいびん)鉄道を保存し、実際に体験乗車もできるところです。

 今日もL字型のちっちゃな電気機関車がお客さんを乗せてパーク内の線路を往復しています。


 そしてさらに、今月から新たな車両が仲間入りしました。この車両について、早速館長の黒岩さんにお聞きしましょう。

「こんにちは、黒岩です」

こんにちは。

 早速ですが、今月の三連休から新たに動き出した車両について教えてもらえますか?

「はい。こないだの三連休から稼働しています。もうすぐこちらに戻ってきますよ」


 というわけで新登場の列車がやって来ました。編集だとこういうとこ便利ですね。古い車両なので、急に修理が必要になったそうで、ちょっと時間がかかりました。

 軽く警笛を鳴らして電車がやってきましたが、


 可愛い〜!


 丸っこい形なんですよ。丸いといっても新幹線とか特急列車の前のほうが丸っこい、あっ流線型か、あれとは違って、電車の顔のところが、丸い筒を立てて半分に切ってくっつけたみたくなってるんです。なんかレトロというが、大正ロマンって感じですよね〜。

「ええ、この電車は実際、大正時代に作られたんです。こういった電車の顔を半円筒形などと呼んで、その頃に流行ったんです」

あ、じゃあホントのレトロなんですね。

 なんて言ってるあいだに、どんどん電車が近づいてきて……、止まりました。扉が開いて……。


 手動?

「はい。当時はまだまだ車掌が乗って扉を開け閉めする車両が多かったので、それを再現しています」

おおー。本格的に昔の姿を再現してるんですねー。この車両はすっと手で開け閉めしてたんですね?

「いえ、そうでもなくて、のちに自動扉に改造されています」

……はい? それなのにまたなぜ手動になったんですか?

「実は、この車両を持ってきたときはあちこち壊れていて自動扉も動かない状態だったので、修理を省いたんです」

……なるほど。



 ではいよいよ、この電車に乗ってみます。ボディは白と赤の二色で塗られていて、なんかお祝いみたいで良いですね。

「この赤色は、スカーレットと呼ばれる赤色で、高貴な感じがありますよね」

ですねー。ハイソでモダンで。


 車内に入ると、と。

 うわー、中も素敵ですねー。木がいっぱい使ってあって、ぬくもりが感じられます。

「もともと車両自体が、ほぼ木造なんですよ。電車の車両の材料はしだいに鉄とか、さらにステンレスやアルミニウムに変わっていきますけど、昔からの木と鉄でつくられた車両は結構長持ちするみたいですよ」

おーなるほどー。木はとくにこれからの時期、あれが無くていいですよね。

「あれ?」

あれです、ピリっとくるやつ。わたし、とっても苦手で……。

「あっ静電気! 私も苦手〜。そう、木はバチってならなくていいですねー」

 あと車内はほかにも色々昔ながらのものがありますね。

「そうですね、照明も蛍光灯ではなくて電球ですからね。でもさすがに白熱電球が切れたら随時電球色のLED電球に交換してますけど。電力の消費量が全然少ないんで」

あーなるほど。色味は変わらないですもんねー。


 少しずつお客さんも乗ってきました。そろそろ出発ですか?

「あと五分くらいですかね。あ、その前にちょっと一手間あるんですが、やってみますか?」

え、電車の運転に関係するものです? 面白そう。どんな事を?

「こちらです」


 はい、というわけで運転席のところに入れてもらいました。ここで何をするんですか?

「さあ、何でしょう?」

うーん、行先表示は外についてる表示版を人の手で入れ替えるだけで、それはさっき子どもがやってたし、機械類の操作はわかんないからなあ。

「正解、に近いですよ。これをしないと電車が動かないという大事なお仕事です。このヒモを引いてみてください」

あ、はい。では早速。


 「バチっ!」

わっ! ビックリした! な、な、何ですか今の?」

これはビューゲルという、電車に電気を送る部品を方向転換させる操作なんです。電車の電線、つまり架線ですが、そこからビューゲルを離したので、その時に音がしたんです。

えーっ、先に言ってくださいよー。ビックリしましたよー?

「まー、ある意味ドッキリですので。ちなみに今ビックリして手を離してしまったので、やり直しです」

 うー、やられたー。よし、今度こそ、ちゃんとやりますよっ!

「バチっ!」

わ、音は慣れましたけど、かなりの力がいりますね。グッと引っ張って?

「くるっと回す感じ、そうそう、そうです」

は、はい、とっ、ととっ。

「バチっ」

「はい出来ました」

おお、やったー! 昔の電車って、終点でいちいちこれやってたんですか?

「そうですよ。今のパンタグラフはひし形だったりくの字だったりして、どっちの方向にも動かせますけど、昔はこういう作業もあったんです」

へえー、じゃあ今はもう無いんですね?

「営業用の鉄道では多分日本には無いと思います。パンタグラフは部品ひとつなので、変えるのは簡単ですからね。でも、このバチっ! が味わいだっていう感じもしますけど」


 さて、いよいよ電車が動き出しそうです。運転席には……、黒岩館長自らハンドル、もとい電車のアクセルってんですか、マスコンを握ります。

「出発進行!」

 さあ、黒岩館長兼運転士の掛け声とともに、電車が動き出すようです。ワクワクしますねー。

「業務連絡ー。楓さーん、お静かに願いまーす。電車の走行音もレアなのでそちらをリスナーの皆様に聴いてもらいたいので〜」

わー、車内アナウンスで注意して来ました。はいでは静かにしますので、電車の走行音をお楽しみくださーい」


 「今度こそ、出発進行!」

「ガタン! グ、グォォォォォォォォォッ」

はい、再び板谷です。今、電車の発車するときの音を聴いていただきました。なんか、お尻の下から響いてくるような低い音でしたね。そして加速すると、その音がやみます。マスコンを戻したみたいです。

 というわけで、またしても車掌役として乗り込んでいる霧積さんに説明していただきましょうか、というか、する気満々ですね。

「はーい、このはな村の地域振興に全身全霊をもって貢献している車掌兼ガイドの霧積でーす。村おこしのためと思えば、やる気もみなぎって来るものなんですよね〜」

あーはいはい、わかりましたから説明お願いします、どうぞ。

「はーい。この音は吊りかけモーターといって、古い電車で使われていたモーターの特徴なんです。床下から響いてくるような重低音が魅力なんですね。加速をやめると音は止みますが、速度が落ちて来るとまた加速を再開するので」

「ゴォォォォ」

「と、再びモーター音が聞こえます。このはな村はゆるい斜面が多いので、その地形を活かして線路を登り気味に敷くことで、モーターの音が短い区間でもたっぷり楽しめるんですねー」

なるほどー。今の電車は走る時もっと、かん高い音を出すじゃないですか。キィーン、みたいな。こういう低い音って新鮮ですね。

「ですよね。このモーター音をリアルタイムで聞いていた年代の方々には懐かしいと、そうでない方々にも、新鮮といったような感想をいただいています」

 そうですよー、なかなか聞けない音ですから。

「ですです。それで新鮮といえば、このはな村ではサツマイモの収穫時期が終わりました。そこで、新鮮なお芋をじっくり焼いた石焼き芋がオススメ! このはな鉄道ランドは入場は無料ですので、こちらを食べるだけでも全然遠慮はいりません! 皆様のお越しをお待ちしております!」

はーい。最後はやっぱり優香さんの宣伝でしたー。現場からは以上でーす。



 はい、というわけでリポートをお送りしました。それで今日の食レポなんですが、先程のリポートでも出現しました霧積優香さんご自慢の焼き芋が今日の食レポです。

 優香さんは本業は農家なんですが、ああやって自分の家でつくった野菜をあっちこっちで売り歩くんです。

 それはいいんですけど、このはな村で栽培されていないような野菜や果物を実験的に売りに来るんで、一応ここも放送局だし、村のPRも兼ねてますよという名目で村役場の分署を借りてるとかもあるんで、あーやって勝手に来て宣伝されるのはちょっとなーって思うんですよ。

 いや、美味しければいいかなとは思ってます。このはなFMって、そんなお堅い放送局じゃないことは言うまでも無いですし、でもほら、良いものを紹介しなくちゃ、って話でもあるから、実験で育てたものを、はいどうぞ、と言われてもねえ。

 そもそもサツマイモって、あったかいところのものじゃないですか。鹿児島の薩摩から来たからサツマイモでしょ? その前は今の沖縄、つまり琉球から伝わってきたっていう。それをこのはな村で育てて、どんな字になるんだか……。


 おいひい!


 ご、ごめんなさい、つい口にお芋入れたまま叫んじゃった、ごほごほ、つーかむせた。

 で、でも、叫んじゃうくらい美味しいんですよ! えー何これ、すんごく甘いんです!

 それでいて、もっちりしてて、さっきはちょっとむせたけど、しっとり水分も残ってるからノドがイガイガする感じは食べてるとほとんどなくなりました。

 これ、一度アルミホイルに包んだのをオーブンで焼いて、それをさっき、わたしがくる前に優香さんが届けてくれたんですけど、冷めても美味しいし、ホイルの中で蒸されたのかな、美味しさの密度が濃い感じっていうんですか、とっても美味しいです。

 以上、食レポでした。



 板谷楓のスイートメイプルタイム、お開きの時間が迫ってまいりました。

 まんまと優香さんにしてやられた感じですね、今日は。このはな鉄道ランドは今月いっぱい無休だそうで、あと優香さんも時々出没しては何か売りに来ると思いますので、その時はよろしければ買ってやってくださいね。んで、どのみち値段なんて適当に付けてるでしょうから、好きなだけ値切ってやってください!

 

 お相手は板谷楓でした。

 それではまた次回、ごきげんよう。


 あっ、来週は月末の金曜日なのでお休みです!

 そう、よく考えたら十一月は二回しか書いてないんですね。祝日とプレミアムフライデーはお休みですから。その分他の小説を書かなきゃって話でもありますが、色々構想がとっ散らかって何から書こうか混乱中ではあります。

 いずれにせよ、今月はあと二本、なんか投稿します!

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