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変異

 そんなこんなで、労働の時間。


「そういえば、学校の方はいろいろ片付けが終わったらしいよ。予定を少し前倒しにして来校しても良いってさ。リモートの方は引き続きやるらしい」


「ああいうのは教授(せんせい)達が苦手だからやりたくないとか言いそうなモノですけれど」


「あのへんの人達は頭が固くて良くないよねぇ。古いものに拘るのは良いけれど、それは新しいものを拒む理由にしてはいけないのだよ」


 部長が何か言ってるが、それっぽいことをそれっぽく言っているだけである。


「あれ、最近いつにも増して扱い悪くない?」


「いつものことでしょう、部長」


 先輩が荒くあしらうが、あまり効果はないのかもしれない。部長のほうはわかってやっている可能性がかなり高いというのもある。


「でも実際、新しいものは必要だよ。近代のものは神秘性が薄い、なんて言う人もいるけれども、進んだ科学が魔法と区別がつかないとも言うし……何がどれだけ身を守るために使えるかってことだよね」


 言いながら部長は胸元から印刷された写真数枚を取り出す。……今もしかしてポケットじゃなくて服の中から出さなかった? 何やってんだこの人。


「これは世間的には心霊写真として扱われるようなものなんだけれども、大前提としてデジカメで撮影したやつなんだよね。スマホやガラケー、普通のフィルムカメラでも良いんだけど、このあたりのバランスは難しくてね。『少し古い』くらいの奴がいい感じに映る」


 そう言いながら先輩は使ったカメラだと言い、今度はカバンからそれを出した。詳しくはおぼえていないけれど、中学か高校生の時に母親が最新型だと言って購入したものによく似ていた。


「まあそれは重要じゃない……ってことではないんだけれども、今回の一番の肝じゃないんだ。心霊写真なんてものは、写真技術が生まれて以降の概念だ。怪奇現象なんてものはそれ以前から存在していたし、獣も妖も魔も全て存在していた。それらが起こす現象は増えていくのに、人ができる事だけそのまま、なんて馬鹿みたいじゃないか」


 写真の方に目を向ける。工事中の看板、立ち入り禁止の表札、一時停止の道路標識、それからセールスお断りの張り紙……そういったものの前にモヤが写っていたり、あるいはわかりやすい異形が写っていたりといったものだ。


「こういう『立ち止まることを求める』ものは、結界として機能する。人間がそういうものだとして扱うから、他の存在も影響する。例えば」


 先輩は写真をめくり、5枚目のものを見せる。止まれと書いてある道路標識……に見えたが、標識の向きは違うし、字はとても正しいとは言えなかった。『止』は合っていたが、『ま』の字は横線が4本に、『れ』の字は右上に点が打ってあった。


「でも一瞬は止まれの看板だと認識しただろう? 結界としては、それで十分機能を果たしている。どんどん情報や能力が増すのだから、新しいものを作って取り入れていかないと対処は追いつかなくなる」


 それってこういった『怪奇なもの』に限らないよね、と先輩は言った。

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