抗い難い
2人の胸肉の間に手を、腕を突っ込んでいる状態になってからどのくらい時間が経過したのだろうか。窓から見える太陽の角度はそれほど変わっていないので実際に時間はそれほど過ぎてはいないのだろうけれども、しかし体感の時間では何十分も立っているような気がした。
「あー、2人とも? 俺を開放してくれるつもりはあるかな」
「ないですね、ご主人。なんなら明日までこれでも良いんですけど」
「本当にダメなら立って逃げればいいんじゃない?」
イノリはいつの間にかいつもどおりのテンションを取り戻したようで、マツリと一緒に俺の手を挟むことに協力してしまっている。確かに逃げれないことはない、とは思うのだけれども、マツリの押さえ込みはしっかりしたものでなかなか抜けられないし、イノリにも手首を捕まえられてしまっている。
2人はお互いに向かい合って、俺はイノリを後ろから抱きかかえるような状態になっているのだが……イノリは立って逃げたら良いと言ったが、立つのも難しいような力の掛け方をされている。
理性では早いうちに抜け出したほうが良いんじゃないか、と少し考えているが、2人の好意……行為? もなかなか心地よいのである。というか男にとってこれは抜け出すことが出来ない空間。
理性とか全部溶かしてここに住みたいとかふざけたことを言ったら、そのまま2人にどうにかされてしまいそうな気配はある。正直午前中かつ俺がすることがあるからこれで許されているだけで、夜だったらもう何も許されないままいろいろされているんじゃないだろうか。
イノリとマツリが足を伸ばし、2人がかりで俺の足を捕まえてくる。やめろ、これ以上俺を堕落に導かないでくれ、いややめないでくれ……俺の未来はどっちだ。
悶々とした時間を過ごし、覚悟を決めてどちらかの行動を取るべきじゃないかという頃合いに……先輩と部長から連絡のメッセージが届いた。ある意味では救いのメッセージを受け取ったと考えても良いのかもしれない。半ば混乱したままの頭で、まだ捕まっていない方の手を伸ばし携帯を取る。
メッセージの内容は、先輩からは『あまりサボらないようにしてくれ、君がこないと寂しいし、部長の相手を1人ですることになるんだ』というものだった。というか先輩、俺が参加していないときも律儀に参加していたのか。少し申し訳ない気持ちになった。先輩は部長のことを俺よりも苦手だと認識していたし、こんど何かしらのお礼とお詫びをしないといけないかもしれない。
部長からのメッセージは、『今日のバイトは18時から。そのあと部活の話をするよ』という内容だった。
夕方までの自由時間が出来てしまったのと同時に、なんだか厄介事を頼まれそうな気配だった。
そんなことを考えていると、マツリが上半身を起こし移動して、
「つまりまだ8時間以上自由時間があるっていうことですよね? 今日の朝食と昼食が遅れてしまうこと。どうか許してくださいね?」
「ちょ、わたしのほうにだってかまってもらうんだからっ、」
イノリも合わせるようにそんなことを言って、2人がかりで俺の身体の上に跨がられてしまった。
うん、もう動けないし好き放題にされるしかないのだろう。メッセージは救いの糸ではなく、それを切り落とす力と重さだったんじゃないだろうか。
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