覆い
特に何かをされたわけではないけれども、時間経過か体温が上がったせいか目が覚めた。疲労もある程度抜けていて、部長のところのバイトに出向くのは問題ないくらいにはなったんじゃないだろうか……若干汗を書いてしまっているので、シャワーくらいは浴びておきたい気分ではあるのだけれども。あと朝食も食べていない状態なので、何かしらエネルギー補給をしておきたい。
「まあ、2人を起こさないようにしたいから動けないけれども」
マツリもイノリも、俺を挟んだ状態のまま眠っていた。なんだかんだと休憩しなくてもいい理由を言っていたが、休みを取れと言ったら眠ってしまうくらいには、2人とも疲労が溜まっていたのだろう。
「もしかしたら休めと指示を出したせいかもしれないけれど」
それでも休んでくれるのは必要なことだと思う。とはいえ、このまま密着されたままだと食事や水分補給、シャワーもトイレも行けないのだけれど。
そんなことを考えていると、思考が冴えてきて……後頭部と胸元に押し当てられている柔らかい感覚に意識が向いてしまう。……いっそ揉んで普段の反撃みたいにしてしまおうか、と思ってしまった。正直なところ、2人はいつでも触っていいと許可を押し付けられたし、実質的に今も触っているようなものだけれども。
少しでも呼吸をすれば、2人の匂いが鼻に届く。獣のような匂いはなく、マツリが2人用にと買ってきた甘いシャンプーとミルクの匂いが混ざったような、かなり甘い匂いだ。それが両側から遠慮なく届いているので自分もその匂いになってしまっているんじゃないだろうか。
というか、イノリの方が新しい身体に変わっているのにそんな匂いがしているということは、寝てる間にいつの間にかシャワーを浴びていたりしたんだろうか。
「まあ、いいか。部長のところのバイトは焦らなくても……」
部長の方からは遅刻する場合は連絡してくれればいいとは言われているし。連絡しようかとスマホを取ろうとして手を伸ばし……うん、これは動けない。いつの間にか起きていたイノリに、上側になっている左腕をしっかりと掴まれてしまっていた。後ろから掴まれているので、その表情をみることは出来ないけれど、きっとニヤニヤと笑っているのだろう。
俺からなにかしらをやり返すとするならば、握ってくるイノリの手を、逆の手で握ってやる事……なのだけれども。そっちの腕もマツリにしっかりと抱きしめられていた。マツリの方は起きている気配はなく、ただ反射的に抱きしめているだけなのだろうけれども。表情を視る限りではしっかり眠っている。
まあ、しばらくこのままでもいいか。
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