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可能性

3人の名前の由来は祈り奉り。

 文字通り意識をつなぎ合わせる作業をする。式神は慣れれば部長と同じように、3秒もかからずに起動させることができるし、イノリ自身もマツリがあっという間に完成させてしまったはずだ。


 でも今は、俺が慣れていないせいで時間がかかることが重要なのだ。時間をかけて、少しずつ構成を進めていく。しかし、術が失敗するまえに完成させなければならない。


 式神としての完成と、イノリの意識の定着の時間に大きなズレがあってはいけない。そうなれば、新しい式神の身体に意識が2つ宿ることになったり、あるいは……まあ、失敗という結果になるだろう。記憶を保存先に移すときにはかなり簡単に収まったが、定着させるときはそうも行かない。


 白一色のパズルを組み立てていくような、あるいは並んだ針の穴に連続で糸を通してくような、そんな集中力の使い方をしている。自分の吐息の音すら集中をかき乱すような気がしてくる。しかし、実際に手を動かして繋いだり通したりするわけではない。その段階はもうすでに終わらせてある。


「ご主人、大丈夫ですよ。うまく繋がってます」


 マツリの術に重ねるように、結合させるように繋いでいく。


 ここで失敗はできない、なんていう言い回しがあるが、どの段階でも失敗することはできない。


『ご主人がどの段階でも失敗するはずがないじゃない』


 とイノリが言ったような気がした。実際にはこの状態のイノリは眠っている状態に近いはずなので、声が聞こえる筈がないのだが。前もってイノリが何かしらをしていたのでなければ、集中力が切れてきているんだ。


 一度大きく深呼吸して、思考をリセットする。


 実際に手を動かすわけではない。だが目を閉じるわけにはいかない。


 術がバラけてしまわないように。部長のところで学んだように、そしてマツリとイノリが時々やっていたことを思い出すように。


 魔力みたいな何かを『視』て、それを使い、繋ぐ。つなぐ。絆ぐ。


「やれやれ、私が見ていないといけないみたいね?」


 イノリの手が支えてくれた、気がした。まだ新しい式神の身体は完成していないというのに。


 もしかしたらただの緊張による幻覚か、あるいはマツリかイノリが何かしら仕掛けを打っていたのか。


 いずれにしても、悪い緊張は少し収まった。そのまま、その手に誘われるように、あるいは指導されるように。


 丁寧に、確実に仕上げていく。





「おつかれ、ご主人。それからありがとう」


「お疲れさまです。私からもお礼を」


「2人とも、礼なんて言わなくていいんだよ。これは俺がやりたくてやったことだから」


「そうね。じゃあこう言ったほうがいいかしら。『ただいま』って」


「ああ、おかえり。」


「ええ、おかえりなさい」

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