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「部長はどうして彼に肩入れをしているんですか?」


 休憩時間。私の想い人である彼は部長が用意した仮眠室という名前の客室で眠っている。薄い障子戸で隔てられているだけなので、もし起きていたら声がきこえてしまうだろうか。


「肩入れ? さてはて、そんな事したかな」


 部長はわざとらしく肩を竦める。なんというか、こういうオーバーリアクションは癪に障る。部長の方もわかってやっているんだろう。


「あの身代わり人形、普段作っているものよりも明らかに性能がいいヤツじゃないですか。普通の術者が作るなら、作る側の命や魂と呼ばれるなにかを消費して、その上で数ヶ月の工程が必要になりそうなやつでしょう」


「そうなのか。まあ確かに体感時間で半日はかかったけれども……とはいえ、君にだって十分なものを渡しただろう? 彼個人に思い入れているんじゃなくて、部員に対するちょっとした支援っていうやつさ。まあ確かに彼のもののほうが蘇生回数という面では多いかもしれないけれど、君に渡したやつだって劣っちゃいないだろう?」


 そう言われてしまえば確かに納得せざるを得ないけれども。でも、なんだか引っかかるのだ。


「彼が話していた、式神のことになにか関係あります?」


 おそらくだけれど、彼は作った式神に愛着を感じてしまっているのだろう。それがどんな目的で作られたのかはわからないし、教えてもらえないならば探るか放置するか……だけれども。


「いやいや、俺は正解を教えたりはしないよ? 彼が隠しているなら、それがバレバレな事であったとしても、それを暴くような真似はしないさ。君に正解を教えないように、彼にも正解は教えないつもりさ。俺以外の誰かに聞いたり、あるいは自分で気付いたりするなら見込みあり……答えを知ることは大事だけれども、この術は思いつく経路というものも含まれるからね」


「部長、あなたはやっぱりズルい人だと思う。あなたなら、思いつかせるためのヒントの出し方だってあるでしょうに」


 彼の作る式神ということだ、きっとあの斑牛が関係あるのだろう。私としてはアレは恋敵ではあるのだけれども、彼が悲しむような結末になるのは避けたい。いずれにしても、私とあの牛の仲はあまりいいとは言えない。彼がこちらにアドバイスを求めることはないとは思うが。


「卑怯卑劣でも結構。多少の恨みを買おうとね。まあ本当の本気でどうにもならなくなって、彼が助けを求めてきたらそのときは手伝う可能性はなきにしもあらず、だけど」


 部長はどこ吹く風という態度だった。

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