脅威
バイトのおみやげとして身代わり人形を貰った。以前に俺が作ったものではなく、部長がイチから気合を込めて作ったと言っていた。病気や交通事故、窒息や刃物だけでなく呪いですら身代わりになってくれるもので、しかも3回発動するまでは時間制限もなにもない。
先輩が言うところには、『とにかく無敵になれるやつ』らしい。ただし弱点として、目視できる範囲にないと効果がないそうな。
「しかし部長特性。ほんの僅かでも見えていたら、意識していなくてもいい……まあ実質的に考えると100mくらいかな?」
ちなみに身代わり人形と言っても手のひらにすら収まるサイズで、透明な袋に入れて首にかけておけばもうそれで大丈夫。
「試しに使ってみる?」
先輩が蜘蛛の腕を出して、その鎌を打ち鳴らしてからかってきた。いや、からかってるだけだよな?
「あともう1つ、先に人形が壊されるような状況になったら、そのときは身代わりとしての役目は果たせないからね」
先輩が楽しげに、鎌の先でこちらの腹部をつついてくる。なんというか心臓に悪い。結構鋭いので、不意に動いたらグサリといってしまいそうだ。
「式神のことを考えていたっていうことは、なんだか面倒なことに首を突っ込もうとしているんだろう? 最初から詳しい説明をしてくれているならまだしも、必ずしも俺が助けに行くことができるとは限らないからね。後輩たちへのプレゼントだよ」
先輩も同じものを受け取っていた。先輩のものは多少効果が違うらしく、致命傷を防ぐのは1度だが、腕が捥げたとか骨が折れたとか、そういったものに対して7度効果を発揮するらしい。
「君にはこっちのほうが役に立ちそうだよね?」
「そもそもそういう機会が少ないほうが助かるんですけどね」
先輩は、そういった機会がないとは言わなかった。向こうでも多少大変なことがあるのだろうか。
「さて、今夜の食事は……と、ちょっと忙しそうだね?」
「部長と二人っきりになるのは嫌ですよ私は」
「同性じゃないか……辛辣だね?」
いやまあ俺と一緒に過ごすのは苦手かもしれないけどさ、と部長は呟く。
「そういえば、部長はなんで女性なのに俺なんて言ってるんですか」
「あれ、理由言ってなかったっけ。これにはそこらへんの水たまり程度には深く、園児が作った砂山程度に高い理由があってね……」
「とんでもなく浅いし低いじゃないですか」
「まあ簡単にいうと妖精や魔神、そいつらの力を強引に使っている獣帯や人間からの認識をずらすためだよ。単純に性別を誤魔化すだけで、妖精や魔神を使った諜報を防げる。術や直接調査に出向いた場合はそうでもないけどね」
いやそれ、そんなに浅いだろうか? 結構重要な気もするのだけれども。
「いや、妖精や魔神を使って探知する連中なんて、それこそはぐれ物ぐらいだよ。『ハグレ』や『バカシ』とかの意味じゃなくて、本来の意味でのはぐれ物、だね」
手が足りていないような暴れまわる奴らは、それこそ使うものを頼っていられないからね、と部長は呟いた。
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