見ない
「なあ、俺たち以外にも電車の中に人はいたよな? 他の人から見たら、俺たちってどんな状態になってたんだ?」
もしなにかを探して電車の中で徘徊していた人物になっていたとかだと困るのだが。知り合いがいないと行っても、そういった状態になるのは流石に恥ずかしい、というか通報されてもおかしくないのだ
「そうですねぇ、たぶん状態としては『座席に座ったまま』になっていて、でも『そこにいることに気づかれない』けども、『その場所をなんとなく避ける』状態だったんじゃないでしょうか? 人混みだったら転んでも倒れても無防備に蹴られたりしたと思うので、そういう場所でなくてよかったと思いますよ」
混んでいる時間帯だったら危なかった。少し時間をずらしておいてよかったということか。
「もし誰かが存在に気づいて、起こすつもりで呼びかけてくれたら解決していたかもですね。ただ、気付毛内容になっている存在に、気付ける人がいるか……よほど注意深く、それこそ『見えない人がいる』という前提で探さないとですね。あるいは、魔神の術に関して詳しく知っている人に見つけてもらえれば。そっちは注意していなくても良いぶん、魔神の知識が必要になってきます」
どっちにしても外側からの救助はあんまり期待出来ないですね、とマツリが告げる。
イノリの方に視線を向けると、再び休眠状態になっているようで、可愛らしい寝息を立てている。
「イノリのことが心配ですか? こういってはなんですけど、ご主人さっきから上の空状態ですし。閉じ込められている時にだって、集中力を欠いているように見えました」
電車が目的の駅に止まる。イノリを背負い、マツリに荷物を持ってもらう。
胸肉と太ももの柔らかい感触が、背中と手に思いっきり伝わってくる。無防備すぎる状態になっているので、踏ん張ったり抵抗したりという僅かな硬さすらない。マツリと殆ど変わらない大きさの胸越しに、鼓動と吐息の感覚が背中に伝わってくる。
「ご主人、いけないこと考えてますよね?」
「ん、ああ……筒抜けだったか?」
「念話には漏れてきていませんでしたけど、顔に出てたような気がします」
「気がします……っていうのは?」
「私とイノリ、あとはあの先輩とやらくらいなら見分けがつくだろうって感じですね。他の人が見たらなんだか変な顔をしていたとは言うかもしれませんけれども」
いや、まあイノリを背負った状態で変な顔をしていたのならば、それはもう誰にだってバレてしまうかもしれないのだけれども。
「とりあえずは……そうですね、少し急ぎましょう。さっきは若干強引に起こしたくらいな感じなので、あんまり無茶はさせられないですし」
「ん、もしかしてまた何かあるのか?」
妖精が増えていたり、魔神が襲ってきたりとか……
「いえ、そうではなく。このままではご主人が誘拐犯だと思われたり、警察に通報されたりしても困りますから」
思った以上に現実的な危機だった。まあ確かに、早いところ帰ったほうが良さそうだ。
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