遊泳
水着回パート6です。
ちゃぷ、ちゃぷ、と音がする。イノリが乗っている巨大浮き輪に揺られながら水面に手を出し、少しばかり水を跳ねさせている音だ。俺はそれを押すようにバタ足で泳ぎ、マツリは俺に並び泳いでいる。
「うぁ、っとと……結構揺れるのね?」
「まあ、実際の海の波に比べたら小さなものだとは思うけれども……それでも、結構楽しいもんだろ?」
「こうやって浮き輪で遊んでもらってると、お姫様になった気分だわ」
「じゃあ次は私も押してあげますね」
そういうとすぐにマツリは浮き輪を押さえて、すごい勢いでバタ足を始めた。
「おぁぁぁぁぁあっ」
イノリが聞いたことのないような悲鳴を上げている。3人でものすごい勢いでプールの端から端まで移動していき、気がついたら方向転換をして再び浜辺側のプールサイドに戻ってきていた。マツリの本気のバタ足で俺も流されてしまいそうだった。波のプールよりも波が立っていたように見えたが、流石に思い過ごしだろう。
「ちょっとマツリ、いきなり乱暴なんじゃないかしらっ」
「だってお姫様とか言うから、なんだか意地悪してあげたくなったんですよ?」
イノリからの文句に対して、しれっと言い放つマツリ。姉妹仲が良いのは喜ばしいことである。こうやって笑い合っているところを見れるのは、やはりいいものである。
いや、夜中にも見せてくれてはいるのだろうけれども、流石に見ている余裕がないくらいには弄ばれている……いや、何の話だ。
「じゃあ私もやってあげるから、……ちょっとご主人、下ろすの手伝ってくれない?」
イノリが浮き輪から降りられなくなってわたわたと腕を振り回し、こちらに向けて助けてくれと手をのばす。
「ん、あんまり動かないで……よっと」
求められた助けに応えて、そのまま引き上げてやる。そのまま対面から抱き合うような状態になり、柔らかい肉の圧力を腹部に感じてしまう。……うん、めちゃくちゃに柔らかいな、やっぱり。水着であるせいか、普段とは違う感触が……と、外でなにを考えているんだ俺は。
「ご主人ってば発情期?」
「外で生々しい事を言うんじゃあない」
なんだか否定できないので言うなという欲求にとどめおいた。次はマツリの手を取り、マツリの身体を浮き輪の方に誘導する。
「楽しみにしてますから、ね?」
にっこりと笑うマツリの手に軽く触れてから、イノリにアイコンタクトをとり準備。
「せーのっ」
イノリの掛け声とともに浮き輪を押すように泳ぐ。イノリの身体が多少小さいせいか、マツリが隣りにいた時に比べれば速度は出ていないが、それでも十分速いと言えるだろう。
「おー、すべり台とは違う感覚ですねぇ。おっと、揺れがすごいっ」
波に煽られてバランスを崩しかけるマツリ。さすがというかそのまま転ぶことはなく、くつろいでいると言ってもいいんじゃないだろうか。
「うーん、仕返しならずかしら……さて、次はご主人の番よね?」
「わたしもご主人で遊びたいですねぇ」
なんだか不穏なことを言われてしまったが……おとなしく浮き輪に乗るとしよう。
「おおおおおあああああっ」
ちょっと舐めてかかっていた。2人が本気でバタ足をしてしまえば、とんでもない速度が出てしまうという考えに至らなかった俺の落ち度だろう。
旋回する時に減速することなく、俺は転落してプールに落ちた。
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