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惑い

「好意というのは存在している限り、どんどんと大きく深くなっていくものなんですよ。そしてずぶずぶと沈んで、抜けられなくなってしまうのです」


「好意が続いている間は、それが幸せだと感じるのよね。少なくとも今の私達はそんなふうに考えてるわ」


 マツリとイノリがそんなことを言う。少しばかり疲れてしまったので布団に寝転がったところ、左右にそれぞれが抱きつくように添い寝をしてきた。ちなみに今回は脱いだり脱がされたりだとかそういう感じの事象は発生していないです。


「要するにご主人に好意をお互いに向けて向けられてっていう現状は、とっても幸せなんですよ」


「そう言ってもらえるのはこっちも嬉しいけどね」


 イノリが腕にしがみつく。なんというか、離してやらないと言わんばかりの強い意志を感じる。あの、それ以上締め上げられたら血流が止まるんじゃないでしょうか。


「だいじょーぶよ、そのあたりの手加減はしてるから。もしかしたら痺れちゃうかもしれないけれど」


「それは十分に鬱血してると思うんだけどなぁ」


 仕返しに擽り返したり……したらマツリにも締め上げられた。ちょっとこの子達すごい力強いんですけれども。流石に少ししたら緩めてくれた。


「とりあえず、今日はこうやって横になっていたいな」


「おっけーです、まかせてください?」


「何も起きない日なら、何もしなくて問題ないよな……」


「ご主人、こうやって拘束している私達が言ってしまうのは問題ありだとは思うのだけれど、少しくらいは運動しておいたほうがいいんじゃないの? 食生活が変わったせいで比較的健康にはなっているけど、でも体重もじわじわ増えているのだから」


「ちょっと、あんまりそういうきつい現実を教えないでくれ」


 正直なところ運動は苦手なのである。


「でもでもご主人、最近は運動結構たくさんしてますよね? ほら布団の上で」


「よしなさいよしなさい」


 そういう関係だとしても、淑女がそういうことを言うものではない。いやまあ言われたり求められたりするのは悪い気はしないのだけれども。


「それはそれとして、ご主人」


「ん、どうしたんだイノリ」


「最近私、ご主人にいろいろとアピールできていないから。少しは頑張っているってところを見てほしいのよね」


「いやいや、イノリもマツリもいつも頑張ってるだろ?」


「そうだけどそうじゃないというか。私のこと、しっかり見ていてい欲しいなーって感じ? マツリばっかり、だからうーん、なんというか……こういう事言うのちょっと苦手なんだけれども。ご主人の寵愛が欲しいなって」


 随分とストレートに言ってくれる。普段はそんなコト殆ど言わないのに、そう言ってくれてしまうならば相手をしてあげないわけには行かない。とはいえ、今は流石に疲労が溜まっていてそこまで活力は無いのだけれども。


 ということで、と言っていいのだろうか。マツリに視線で問いかけると、軽く頷いたので了承を取れたと考える。マツリの方も腕を開放してくれる。


 イノリのことを対面から、きついくらいに抱きしめてやる。


「んん、……」


 イノリの呻くような声が聞こえる。その声を隠すように、イノリが胸元に顔を押し付けてくる。両腕をしっかりと俺に絡みつけ抱きついてくる。


「んん、ご主人……」


 小さく声が聞こえてきた。けれども、それは返事を求めての声ではないようだ。


 マツリが背後から、俺とイノリをまとめて抱きしめるように腕を動かしてきた。両側から挟まれて、柔らかいけども身動きが取れなくなりました。

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