労い
バイトが終わって休息を貰った。移動は車のおかげで早く済み、ほんの15分くらいで到着した……いや、15分で到着できる距離ではないのだけれど、もう何も言うまい。部長のやることだし。
「もう2人とも遅いんだから。ちゃんと連絡くらい入れなさい? 何があったかは……楽しくないことではあったのね」
「できれば回避したいけど、バイトをやるって言ってしまったからなぁ。でもマツリ結構辛そうだし、どうしたものか」
「バックレてもいいんじゃないですか? あの人ならなんだかんだで気にしなさそうですし」
いやまあそうなんだけどそうではないというか。ほんの数時間の手習いだけで結構な金額を貰ったから、正直なところ行ったほうが良いんじゃないかって思ってる。簡単なものとはいえ、『見様見真似』の段階は超えたといっても良いし。
「一応学校が再開するまで、つまり明後日までで終わる予定だって部長は言ってたから、俺だけでどうにかするよ」
「ごめんなさい、私はついていくべきなのに」
マツリが謝り、イノリも一緒に頭を下げるが、これは独断で判断してしまった俺の責任でもあるのだ。2人は気にしなくていい。
「大丈夫だよ、2人に無理はさせられないから」
「ところで夜ご飯はまだなんでしょう? ちゃんと準備しておいたから、早く食べちゃって。クリームシチューだから、温めなおせばすぐ食べれるからシャワー浴びて準備しておいて?」
「あ、ちょっとイノリまってっ」
マツリと一緒にイノリに背中を押され、そのまま風呂場まで誘導されてしまった。今日は湯舟につかる気力がないというのも確かなので、シャワーだけで済ますようにという言葉は正直ありがたい。
「気を使わせてしまったかな」
2人ともに、結構迷惑をかけてしまった。反省。
「大丈夫ですよ、私達はこのくらいのことなら気にしていませんから」
マツリはそういってくれる。優しい言葉がありがたい。言いながら服を剥いでくれるので、なんだか余計なことを考えている余裕がなくなってしまう。これも考えてやっているのだろうか、恐ろしい。
マツリも疲れているだろうに、そのまま全身を洗われてしまった。
「2人ともお疲れ様、とにかく今は食べてしまいましょう。身支度? シャワー浴びたから特にすることはないし、歯磨きだって起きてからすればいいじゃない。一日くらいなら大丈夫よ」
そう言うイノリに抱き留められて、もう2人がかりで揉まれるように挟まれてしまった。もう何も抵抗できまい。
頭はイノリに抱き留められ、両手はマツリに抑え込まれ、そのまま行動不能じょうたいのまま風呂場から食堂への短い距離を誘拐された。
「ご主人が何かしらを思い詰める必要はないの。少なくとも私達がいる間はね。将来のことなんて言うほど大げさなことでもない、たった2.3日の事だけなんだし。学校が休みになったなら、ちょうどいい機会にいろんな体験ができた、それでいいじゃない。ただ普通に働くだけだって疲れるのよ? 難しいことを考えて、しかもこっちの気を使って、慣れないことして。ご主人もマツリも疲れているだけなんだから。食べて休みなさい」
「……うん、そうする」
食べるためには胸元から解放してもらう必要があるけれど。顔を動かそうとすると胸に擦り付けてしまう。服越しでなかったらなおさら疲れてしまうところだっただろう。
「さて、クリームシチューとパン。パンは買ったものだけど、シチューは結構気合込めて作ったものだから、ちゃんと味わって食べてね」
今日は味をかなり濃く感じた。
マツリのイラストを頂きました。
https://twitter.com/narou_shinobu_/status/1415716271539167236?s=21
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