騒がしい
久々にエンジンかかってきました。ただのんびり生活は遠くなりそう。
2時間後にはバイトを開始するために、部長の車に乗って移動することになった。イノリに会いに戻る時間は存在しなかったので、念話で伝えておいたほうが良いかとも思ったが……
「どこに伝えるつもりかはあえて探らないけど、そんな連絡先が丸わかりの念話はやめておいたほうが良いと思うよ?」
「部長、私には探知できなかったんですけどどっちかがどこかに連絡しようとしてたってことですか」
「うん、例えるならばわざわざ電話の連絡先が見えるような状態で操作してる、って感じかな? まあ覗き込んでるっていうのはあるんだけど、ちょっと顔上げたら見える位置に画面があるよね」
うん、この人のことは苦手だと言ったけど、嫌いかもしれない。とはいえ盗み聞きされる可能性があったのか……
「ええ、ちょっと聞いておきたいことがあったので……2人で相談しようかと」
嘘は言っていない。正確には『マツリと俺の2人でイノリと相談しようかと』ということだけれども。
登校前には、イノリのことは先輩には隠しておくようにと本人から何度も言われたので、ここで探られないようにしておかなければいけない。
「ふぅん……」
先輩はこちらにジト目を向けてくる。そしてマツリにも。マツリに向けられる視線は、嫉妬とかそういった感情が煮詰まったような鋭い目つきである。
部長の方は、その先輩の様子を見てカハハと笑っている。この人車を運転してる自覚がないのか……?
「ああ、その心配はいらないよ。式神とかを活用して超感覚発動させてるから、時速120キロでトラックが突っ込んできても避けられる」
「ナチュラルに考えていることを読まないでください」
「いや、これは只の予想だよ。君が考えを読むな、といったことで予想が正解だったって分かった」
いや、もう何も言うまい。この件に関して気にするのは精神衛生によろしくない。
「まあそれについてもおいおい教えていこう。とりあえずバイトと言っても、訓練も兼ねているからね。とりあえずは今日の授業はなくなったし、初日からいろいろやらせるわけにもいかないから……」
「え、あなたが講師みたいなことをやるんですか?」
マツリが呆れたような態度で部長のほうを見ている。
「研修担当こと黄坂さんですよっと。学校が再稼働するまでにいろいろ叩き込むつもりでいるから……それこそ、独立して『そういう仕事』で食っていけるくらいにはしてあげるから。2人とも就活とかまだでしょ? こっちはもう後継いでるからそのへんの心配とかしていないんだけど」
警察やらにコネができたのは笑ったよ、と部長は言う。……本当に愉快そうにそんなことを言うのがなんとも。
「2人が実力つけてうちで働いたり、あるいはそういう系の起業してくれたらすごく助かるんだよね。ほかのところはどうにも秘密主義で良くない。天狗になる修行とかやってるところもあるらしいけど、昔はともかく現代で……と、これは今は関係ないか。3人とも、到着したよ」
到着した先は近所によくあるような一戸建てだった。新築という訳ではないだろうけど、それほど古いわけでもない。
「まずは研修ビデオ……今はブルーレイだけど、それを見て覚えていってくれ。こういうのは口伝か直接教育じゃないと無理だとか親父は言ってたけど、だいたい独学なんだよなぁ。3人とも送迎はするから、とりあえず20時半までやろうか」
3人並んでリビングのソファに座らされた。俺が真ん中になって、先輩とマツリが手や腕を握ってくる。そして俺の後ろで2人の反対の手がやりあう音が聞こえる。もう気にしてはいけないと思った。女の子の争い、しかも自分が原因で起こっていることに関しては口を出してはいけないのだ。
「最初は術札の作り方を見ていこうか」
部長はブルーレイディスクを稼働させる。呪術だか妖術だか魔術だかわからないものと、文明の利器の組み合わせに関して考えそうになったが、もう部長だからで済むような気がしてきた。
そして、文字通り叩き込まれた。
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