課題
ちょっとシリアス系パート
「なんというか、部室になんてものを仕掛けてるんですか先輩」
大きくため息を吐きながらマツリが告げる。マツリと繋がる前だったらば分からなかっただろうが、蜘蛛の巣が絡みついたときのような感覚を一瞬感じた。その後にエアコンがしっかり効いている部屋のような感覚を感じ、それと同時に妖精の視線のような何かを感じなくなった。
マツリがわざわざ先輩と呼んだことは嫌味のつもりであろうか。そういうことを言うのは意外だと思ったが、そもそも俺以外との交流の様子を知らないので、もしかしたらそれも素なのかもしれない。
「まあ安全地帯はいくらあってもいいからね。今年度の頭からかな。学内で妖精をやたらと見かけるようになって、でも魔神のほうはほとんど量が変わらなかったから、誰かしらが何かを狩ろうとしてるか、あるいは学校に何かしら仕掛けようとしてるか……まあ最初は私を狩るつもりかと思ったんだけど、そうでもないみたいだし」
先輩はちらり、と俺のほうを見ながら言う。
「そっちの子が来る前から私が目をつけていたんだけれども、さらにそれよりも前から目をつけている誰かがいたのかも。君は人外に好かれやすいのかな」
「いや、そんなことは……」
確かに人間にモテたことはあまりないけれど、心霊現象じみたなにかしらに取り憑かれたりしたことはない……はず。
「まあ、気にするようなことは起きてなかった……この前起きてしまった訳だけれども」
「先輩には教えてませんよね? なんで知ってるんですか」
「君のことはストーカーしてたからね」
「えぇ……」
気付いていなかったのだけれど、『気にするようなこと』はしっかり起きていた。……いや、ほんとにマジでなにやってるんだよこの人は。
その先輩はガラケーを弄っている。
「それでこの後、どうするつもりです?」
「次の時間割までに妖精がいなくなってくれることを祈るくらいしか。まあ私達全員で祈れば多少効果はあるかもしれないけれど、期待はできないね。あとは部長を待てば……と。ついでに遭っておいたほうがいいんじゃないか?」
「あー……まあこの機会ですし」
あの人の雰囲気、少し苦手なんだよな。……もしかして。
「部長も人間じゃない存在だったりします?」
「いや、あれはちゃんと人間だよ。ただ、人外に関する知識が異様なまでに深いだけ。こんなサークルを作って部室棟の部屋を借りれるくらいの実績になるほどの知識をね。結界の作り方を教えてくれたのも先輩だし」
「蜘蛛は結界と擬態が得意なはずですが、そのあたりの知識はあなたにはなかったので?」
「これは隔世遺伝だからね。話に聞いていただけだし、純血の君とは違う。部長には感謝してるし尊敬もしてるけど、人間性に関して言えば正直苦手な類だよね。もうすぐ来るってさ」
なんというか、マツリはずっと先輩に対して敵意むき出しだ。
「マツリ、こっちきて」
返事を聞く前に、そのまま頭を抱きしめてやる。とりあえずはその眉間に寄った皺がなくなるまで、抑え込んでやる。視界を塞ぐように抱き込み、後頭部と背中を撫でてやる。
「なんだい、面白いことになってるじゃないか!」
部長が入ってきた。
「やあやあ、部長の黄坂アゲハだ。今日はなんだか楽しそうなことになってるね? ああいや部室のことじゃなくて外の様子の話だ」
マツリの背中から耳へ手を動かし部長の言葉が届かないようにした。
「部長、あれどうなるんでしょう?」
もういろいろめんどくさいので、外のデカブツ妖精について聞いた。
「うーん、しばらくこのまま放置しておいたら、火災か爆発か何かが起こってもおかしくない規模なんだよねえ。まあここは距離があるから何かあっても安全だし……とはいえ、何か対処しても夜には『問題』が起こる」
この人いきなりなんてことを言うんだ。
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