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難しい

週1~3回の投稿を目標にします。

 徹底的に洗われた。拾われた子犬のようにたっぷりお湯をかけられボディシャンプーの泡で丁寧に磨かれ、そのまま下がった体温が十分に上がるまで暖められた。


 外見上は年下の相手にここまで良いようにされてしまうと、屈辱的な感情と、そのまま甘えてしまいたくなるような感覚が混ざりこんだような状態になってしまった。


 風呂とかシャワーのたびに、2人のどちらかに弄ばれているような気がする。このまま流されてていいのだろうか、とか考えているが今更のような気もする。


「お風呂上りにすぐ食べられるように、と思って簡単なものにさせていただきました。季節的にはずれているかもしれませんが、お鍋ですよ」


 購入してから数えられるほどしか使われていなかった土鍋で、良い温度に暖められた具材が入っている。湯気に香りが混ざり、食欲をそそる。


「いや、季節は大丈夫。これは……何鍋? 豆乳?」


「いえ、ミルク鍋です。お店の方にレシピが書いてあるチラシがあったので、それを参考にさせていただきました。お肉は鶏肉を利用して、バターを少し……こちらのバターも先程作ったものです」


 作った……つまり絞ったということなのだろうか。


「そういうことよ。この家に来てから牛乳を買ってないのは、こいつなりの嫉妬の仕方なの」


「そういうことではないです」


 表情を変えずに否定するので、本当に嫉妬なのか、それともジョークなのか分からない。


「とはいえ、バターも牛乳の方も10割私のものです。少しは意識して食べてもらえると嬉しいですね?」


 うん、もしかしたら本当に嫉妬しているのかもしれない。あと、ガラスコップに入った牛乳も出てきた。絞ったということを意識すると、やっぱりおかしな気分になりそうだった。


「それでは、いただきましょうか」


「うん、いただきます」


 プラスチックのおたまを使い、適当な量を取り分ける。マツリもイノリも鍋奉行だとかそういうのではないようで、自分自身もそうではないために生煮えになっていないかどうかだけを確認している。鶏肉は生だと危ないから仕方ないが。


「そういえば、2人は牛肉を食べることについてはどう思う?」


 鶏肉が出てきたのでなんとなく聞いてみる。


「ウシの方は、まあ生きるためのものですからね。それに、私達としては……これはマツリとイノリ、ということではなく≪斑牛≫という種族から見れば、別の存在ですから。サカナは別の種類どころか同種の稚魚すら食べるものがいますし」


「目の前に良い食糧があるというのに、それを食べることを躊躇って生きることをやめてしまうのは本末転倒っていうこと。さすがに≪斑牛≫の奴らを食べようとは思わないけど」


「食事は楽しむのも大事ですけど、やっぱり生きるため、種族の繁栄のため、ですから。理性がしっかりある動物なら、同族を殺してまで楽しむというのは少ないと思いますよ」


「まあ言ってしまえば、家畜のウシを食べることに抵抗はないわ。とはいえこいつはミルクには嫉妬しているようだけど」


「だからそういうことはないと」


「私は嫉妬してるよ。売ってる牛乳どころか、毎日ご主人にミルクをあげているあなたに」


 イノリの言葉に、マツリの言葉が少しの間だけ止まる。一息吐いて、やれやれと首を振った。


「そういうことなら……今度は一緒に絞ります?」


「それはなんか違うのよね。こう……」


 うまく言葉にできなかったようで、箸を握った手をそのまま止めていたが、まあいいかという言葉とともに食事を再開した。


 本人が気にしていないのならいいか。


「ごちそうさま。とても美味しかった」


 ゆっくりと食事を終えて、そうお礼を告げた。難しいことは考えたけれども、2人との食事は楽しいものだった。

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