憂い
お久しぶりです。
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不快な音が耳に響くだとか、周りのナニカがおかしな行動を取るとかそういった気配はない。ただただ、何かしらを探しに向かうだけ。もしかしたら探しているのではなく、適当に漂っているだけかもしれない。もしかしたらマツリは、こいつらのせいで足止めを食っているのかもしれない。
「雨、か……?」
傘は持ってきていない。マツリを探すためなので急いで出てきたが、雲の様子くらいは確認しておいたほうが良かったかもしれない。
「雨ではないのよ。手の甲、ちょっと見てみなさい」
イノリの声に従い、濡れたその場所を見る。……墨や黒インクのようにどす黒い水が、付いていた。
「あんまり大きな声を出してはダメよ、雨音であいつらが気づいていないようなものだから」
「あれは生き物じゃあないよな?」
だったら何かと問われても答えには困るのだが。
「獣帯の戦争といったけれど、これはどうなんでしょう。少なくとも使い魔とか式神とか、そういうやつらではない……というか、どう見ても獣ではないしね。そういうのは、少なくとも制作した種族の形を模倣するの」
一番近くにいる『なにか』は、人間の腕が5本生えている巨大な虫、といった見た目だ。翅は生えているが動かす様子もなくただ浮遊している。少なくとも今のところは積極的に襲ってくるわけでもなく、大きさの方もおそらくバスケットボール程度なので1つ1つは避けることがそれほど難しくはない。
「だからこれは……妖精か何かかしら。魔神だったら理屈っぽい動きがあるはずだもの」
「こんな見た目で妖精かよ」
妖精といえばもっとメルヘンとかファンタジーな見た目を想像していたんだが、目に映るそいつらはどちらかといえばエイリアンである。宇宙人が攻め込んできたといわれてしまえば納得できるような姿である。
「……離れましょう。少し駆け足で」
イノリがそう言った瞬間だった。一匹の『妖精』が電柱にぶつかり、
そこに雷が落ちた。
「うわっ……え?」
耳がズキズキと痛む。こちらの方まで被害が来る距離ではなかったけど、腰を抜かしそうになってしまう。
妖精たちは大きな音に反応したのか、雷の落ちた場所に向かう。あいつら同士がぶつかったら、少しどころではない足止めを食らいそうだ。
足音に気を付けながらも、走って進んだ。
「イノリ、マツリはどっちだ」
「待って……こっち。スーパーの中にいるはず」
スーパーは先ほどの落雷の影響か停電していた。小さい子が雷の音か、あるいは停電のせいで泣いているのが聞こえる。店員は少しばかり慌ただしくしているし、傘がないことを嘆く客も数人見受けられる。
「マツリ……見つけた」
「おや……連絡できればよかったんですが、申し訳ございません。この雨とかのせいで移動できず、連絡も届かなかったみたいで」
マツリは申し訳なさそうにこちらに告げる。雨『とか』の部分には妖精の事が入るのだろう。
「振り出す少し前から様子がおかしくて警戒していたんですが……あなたがずぶ濡れになってしまいましたし、急いで帰ったほうが良かったですね」
「それはいいんだ。何かあったんじゃないかと心配だったから」
「大丈夫ですよ。私はそう簡単にどうにかなったりはしませんし。もしどうにかなったときは、2人にもわかるはずですし」
周囲の人たちも話をしているのと雨音が激しいせいか、こちらの話に聞き耳を立てる人はいない。
「傘も持たずに飛び出してきて……もう。風邪を患ったらどうするつもりなんですか?」
「いや、それは申し訳ない」
「私もずぶ濡れよ」
イノリが頭の上でぺちぺちと刺激をする。さっきまで心配そうな表情をしていたのだが、そのことは言わないほうが良いだろうか。……言ってしまおう。
「イノリも心配してたしな。連絡がつかないなんてー、って。傘無しで飛び出したことにも気づいていなかったみたいだ」
「ちょっ……思いついて止める前に口に出すなんて!」
周囲の人の様子を確認する限り、イノリの姿や妖精の方もほかの人には見えていないようだ。少なくとも妖精の方は、以前の俺に見えていないだけでいたのかもしれないが。
「思いのほか多くなってしまって、ちょっと予想外でした。……遅くなりますけど、待ちますか?」
「まぁ……そっちのほうが安全ではあると思う。どのくらいかかるのかはわからないけれど」
マツリが問いかけてくるので、とりあえずと答える。イノリは頭をぺしぺしと叩き続けてくるので返事はしてくれないだろう。
「どのくらいかかるかなぁ」
「もうしばらくは。夕飯が遅くなることはご容赦ください?」
「それは問題ないよ」
3人で窓の外を見ながら待ち続けた。
雨がやみ、妖精が減るまでは30分程度の時間を要した。
「さ、帰ろうか。俺たちの家に」
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