迷い
アイデアが出ると楽しいですよね。
それにしても、どうしてあんなにも大量の妖精が出てきていたのだろうか。
「正直なところ、判断材料がなさすぎるんですよね。過去にあったことから、ナントカである可能性がある、みたいなことは言えますけども、それが理由だと断定できるようなものはないです」
「現状ではわからないのよね。予想したとして、その判断が間違ってる可能性だってあるのだし」
マツリとイノリが考え込むように言う。その仕草がとても似ていて、なんだか可愛らしい。が、そういうことではないのだ。
「私達……いえ、私は現状斑牛との縁が切れてしまっていますから。頼ることも出来ないですし」
「こいつは式神作りに特化してるわけでもないのに私なんていうとんでもない容量を使う式神を作っちゃったから、新しく調査用の式神も作れないし、それに接続がおかしくなってるせいか解除することもできないし」
「じゃあ、俺が式神を作ることはできないのか?」
2人にできないならば、俺にできるのではないかと思ったのだが、2人は首を振る。
「そういうのは才能があるか、あるいは修行して習得するかなのよね、人間の場合。ご主人は少し人間から離れかけているとは言っても、ほぼ人間だしね。今から訓練を積んだとしても、調べられるような式神を作れるようになるにはどんなに短くても半年はかかるわ」
「ですねぇ。イノリは私の技術や知識をおよそ模倣させることができていますが。式神から始まった存在なので式神だけは作れません」
狐や蛇であったら式神が式神を作れるかもですが、とマツリが付け加える。
「まあ、今回の件は前準備がなかったのと、それから人目が多かったゆえにあまり目立つような選択肢が取れなかったからですね。妖精たちのせいとはいえ、連絡できなかったのはすいません」
「いや、テレパシーみたいなものがあるといっても普通の連絡手段を用意していなかったのも悪かったよ。今度買いに行こう」
「ああいえ、買っていただかずとも、専用の御札を作りましょう。どうせご主人とイノリ以外と連絡取る事は無いでしょうし」
「あくまで念話の強化……ご主人の知識で例えるならアンテナとかそういう感じね。あの密度の妖精が全部妨害の方向性になってたりするとさすがに分からないけど」
「あの規模の群れで全部が同じ結果を産むようなことはないですね。魔神か、あるいは知識のある人や獣が妨害してきたら流石に通信が怪しくなるかもですけど」
マツリは溜息を吐きながらも説明を続けてくれる。
「少なくともそういう奴らが襲ってくることはないと思いますよ。退治されないようにはやれるつもりですし、もしそういう目的で来るなら通信妨害よりも攻撃した方が良いでしょうし」
「それは安心できない要素かもだけども。まあ、暫くは気にしなくても良いっていう事か?」
「そうですね。私とイノリの心配は、ご主人がずぶ濡れのままなので風邪をひいてしまわないかという事です」
マツリはふふん、とこちらに笑顔を向けてくる。……なんか良いな、この表情。
「なんで私の考えまでバラしちゃうの」
イノリは小さいままマツリの頭の上に飛び乗り、ペチペチと頭に攻撃する。ちょっとした抗議のようなもので、痛みもなさそうではあるが」
「じゃあ帰ったら風呂……あー、お湯まだ沸かしてなかったか。シャワーで良いかな」
「じゃあ帰ったらたっぷりと洗ってあげなきゃですよね?」
マツリがからかうように、目を少し輝かせながら言う。が、
「少し遅れてるんだから夕飯の支度でもしておいたら? あんたは濡れてないんだし」
実年齢は分からないが、少なくとも外見は年頃の女性である。一緒に入ることになると緊張するし理性が良くないことになる。なのでイノリの提案には助かった……と思いきや。
「私が一緒に入って洗うから安心しなさい」
あまり解決していなかった。大きい姿になってもイノリの方が小さいので、なんというか犯罪感がある。他の人に見られたら言い逃れはできないだろう。
「他の人が見る機会なんてないので大丈夫ですよ」
そういう事ではないのだが。帰ってから逃げる事は難しそうである。
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