過程
今回も短め。
「ご主人は、何かやっておきたい事はあるの? 今すぐできることでも、将来的にできるようになりたいということでも、だけど」
イノリが俺の頭を抱くようにして、髪の毛を弄りながら聞いてくる。
「どうした、急に。とりあえず単位とって大学出て、良いところに就職したいかなぁ、というのは漠然と考えてるな。お前たち2人と一緒に暮らしていきたいというのもあるから、そのぶんしっかり稼がないといけないし」
将来のことはどうなるかなんてわからない。それこそ病気になったりケガをしたりして働けなくなる、なんて可能性もあったりするのだけれど、目標ということならそういうことは考えずにいたい。
「3人で、まあ普通に平穏に、のんびり暮らしていけたらいいんじゃないかな。2人との日常が壊れなければいいなぁ、と」
マツリが来てから明日の深夜、あるいは明後日の朝でちょうど1週間である。過ごした日時は短く、イノリがいた時間も考えるとそれよりも短いけれど、俺の中で2人が一緒にいるのはもうすっかり当然のことになってしまっている。
2人と過ごした時間が、とても濃いものだと感じたからだろうか。あるいは2人がくるまでの生活が、あまり印象に残っていないだけなのかもしれないけれど。それはそれで少し嫌だな。
「ご主人はさ。子供とかほしいと思ったりするわけ?」
イノリが唐突にそんなことを聞いてくる。いや、先のことを聞かれているわけだし唐突というわけでもないのかな。
「……まあ、将来的にはそう思うこともあるんじゃないかな。でもしばらくは……いつになるかはわからないかなぁ、とも思う。先のことだし、その時次第」
「ふぅん……じゃあ、それはそれで。他には?」
「他には、か。とりあえず、サークルの先輩には顔を出すように言われてるから行かないとだなぁ、とか考えてるのと……少し空腹だから何か食べておきたいかな」
すぐにでもできるような目標。先輩にはさんざん言われたし、ここ何日かはいろいろとすっきりした気分になっているのでむしろ積極的にサークル参加しておきたいとも思っている。
「サークルで帰りが遅くなりそうなら、マツリのほうにそれを伝えておかないといけないか?」
「いいんじゃない? 私達はちょっと念じたら会話ができるようなものだし。あとから予定が変わることだってあるんだから。それに、マツリが嫉妬しちゃうかもだし」
「嫉妬するならなおさら伝えておかないといけないよな……そうだ、マツリからの連絡がないし少し遅いような気もするのだけれど」
「あー……確かにちょっと遅いかも。ご主人、迎えに行きましょ。さっきの話じゃないけど、遅くなるなら連絡があっておかしくないことだし、ね」
「方向はわかるか? 案内してくれ」
「了解」
イノリは小さい形態になって俺の肩に乗る。それを確認して、玄関の扉を開ける。
「なあ、これってまずいことじゃないか?」
「非常によろしくない……近場で獣帯たちが戦争でもしているのかしら」
妖精の悪意、そのモヤがそこら中に、避けて進むのが困難なほどの数ばらまかれていた。
平穏に過ごすことは難しいことらしい。
「急ぎましょ。マツリなら1つ2つくらいならどうにかできそうだけど、この数だと対処が間に合わないかも」
「俺が行ってどうにかなるか?」
「どうにかできるわ、ご主人」
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次回投稿は少し遅くなる予定です。




