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仲が良い

「そういえば、イノリはちびマツリ形態になれるのか?」


 そもそもちびマツリとして出てきたのは、俺へのお守りとかそんな感じの扱いがきっかけだったように思う。


「あー、なれなくはないですよ。ただ、小さくなっちゃうとまた圧力とかで爆発するように戻ります」


 一瞬だけ、ゲームでたまに見かけるバグ演出のノイズのようなひび割れが視界に走り、それが直るころにはイノリはちびマツリ形態になっていた。いやちびイノリか?


 髪型や色はイノリと同じように変わっている。この状態をちびマツリと呼ぶべきか、ちびイノリと呼ぶべきかはちょっと悩みどころである。


「どっちでもいーんじゃないですか? イノリはイノリなので。ちびマツリの方もイノリの方も、新しい小さい状態をちびイノリと呼ぶのなら、3つとも『わたし』の名前ですから」


「それはちょっとズルいのでは?」


「何言ってるんですか、マツリは。私がこうなる様に誘導したのはマツリなんですよ?」


「イノリ、ダメよ。ちゃんとお姉ちゃんって呼びなさい」


「絶ッッ対に嫌」


「まあまあ、喧嘩しないで……」


 そういう他あるまい。喧嘩せずにいてくれた方が良いのだが。


「大丈夫ですよ、ご主人。私とイノリは姉妹、つまりある事柄についてだけは張り合うような状態になってます。他の事柄は、基本的に協力しあうようになっています」


 マツリは指を振りながら、問題ないから安心するようにと俺に解説する。


「ある事柄、というのは?」


「ご主人から寵愛を受けるということに関して、よ」


 イノリは小さい形態のまま、こちらにアピールをしてくる。なんとなくで手の上に呼び寄せてしまったが、可愛らしいのでこのままにしておこう。しかし。


「いやいや、寵愛って」


 そんな大袈裟なものではないだろうに。


「今回の場合はそれほど大きなモノじゃあないですが、一度に2個も名前という贈り物を貰う様子を見てしまえば、流石に嫉妬が過ぎるというものです。まあ、だからと言っても何かしらの不都合やら不具合がある訳ではないですが……ただの嫉妬です」


「それを言ったら、姉さんの方が先にご主人といろいろしているのよ」


「記憶はイノリだって持っているでしょうに」


「あら、記憶があっても体験はしていないのよ? 他人の日記を読んだところで、それは記録でしかないのだから」


 本人達が問題ないというのなら止めなくても良いのだろうか。根が小心者のせいだろう、自分がキッカケで喧嘩が起きそうになっているのはなんとなく心苦しさを感じる。


 そういえば、ちびマツリの時と比べて口調だけではなく、性格も随分と変わったように感じる。古き良きテンプレ的な、ツンデレ妹を意識させる。いや厳密には違うのかもしれないけど、俺にはそんな風に思えて仕方ない。


「ツンデレが何かはよくわからないけど、たぶんそれじゃない……と思う。性格が変わった、っていうのは、アレよ、ほらアレ。なんだっけ」


「あれあれ言われても通じませんよ、イノリ」


「うっさい、事あるごとに保護者面しようとすんなッ。えーっと、そうそう。私はもう『分身のような式神』じゃなくて、『良く似た妹』になった訳よ。姉妹だから仲良くしていてもたまには喧嘩するし、そっくりだと言っても同一じゃない、とかいう理屈であってるはず。です」


「ふむ、名実共に別人になった訳だ」


「まあ私達は人じゃないですけど。私は元々獣帯ですらないので、ご主人達よりも妖精側に踏み込んでますね。結論だけ言うと、術に関してだけはこの3人の中でも尖った性質になります。ご主人が気にする事じゃないですけどね」


「まあ、マツリとイノリは俺と一緒にいてくれるんだろう? だったら問題ないよ」


「思ったんですけど、ご主人ってあまりにあっさりといろいろ受け入れすぎじゃあありませんか? 普通、人間じゃなくなっただとか言われたり、そもそも突然出てきたメイドのいう事なんて信用しませんよ」


「それは私も思ったっ」


「昔から、なんでも信じて詐欺にあったりしないか心配だってよく言われた」


 家族からは契約書には絶対サインするなと何度も何度も言われた。自分自身がそこまでバカじゃないと信じたいが、あんまり信用できないのも事実なんだよな。


「まあ、そのおかげで私をあっという間に受け入れてもらえたのはありますけれど」


「悪いことばかりじゃぁない、けど私達がご主人を守ってあげなきゃなんだよねー」


 見た目が若いメイドに守る宣言をされてしまうのは、なんというか男として悲しいのと嬉しいのと、いろいろ混ざり合った感情が湧き上がる。


 そもそも養ってやるとまで言われている段階まで入っていたので、そのあたりを気にするのは今更の様な気もする。


「でもご主人。私達、見た目通りの年齢じゃあありませんから。そのあたり気にしたところで関係ないですよ?」


「そーそー。私なんて生後2日ですし。大きいほうはたぶんご主人より年上だよ」


「いや、マツリは17って……いや、17年とは言ってない気がするけど、そのあたりは聞かないほうが良さそうだ……と、そろそろ寝直そうかな」


「あ、じゃあ今度は私が膝枕するッ」


 再びノイズのような歪みが見えて、イノリは小さいけど大きいサイズに戻った。


 やましい気持ちに流されてもいいかもしれない、と考えたのは内緒にしておきたいが、たぶん念話で筒抜けになってしまうんだろうなぁ。


 考えていたら、たっぷりと圧力をかけられてしまった。

次回投稿は水曜日の朝予定です。


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