第10話 別れ
ショックだった。久しぶりに会えた宇宙は姿なんてものはなく、声だけしかなかった。何が悪かったのかと自分を戒めた。しかし宇宙は気にするなという。しかしそれでも足掻いてもがいていた。もういいや、という結論に至ったのはそれから1ヶ月後で、それ以降は声だけ聞こえる無二の友人になった。そして時は何度も何度もめぐる。そして、出会って10年という月日が経っていた。僕は24歳、宇宙も24歳になっている・・・はずだ。声しか聞こえなくなって2年。年齢感覚すら怪しかった。本当に宇宙は同い年なのか、と。
そんなある日、宇宙が「なあ、市民祭に行かないか」と声をかけた。しかし僕は昔からこういう祭りごとは苦手だ。ましてや市民祭と謳っているが、爺さんや婆さんが集まってわいわい言っているだけだろう。そんなもん興味のきの字もない。「行きたいなら勝手に行け」つい、冷たくあしらってしまった。それが最期だと思わずに。
別れてから数時間経った。案外楽しいのか、なかなか帰ってこない。失敗だったかな、と思いながらなんとなく居間のテレビをつけた。そこで見たものは驚愕以外の何者でもなかった。地元が映っている。いや、市民祭会場だったはずの市民会館が映っている。それだけならまだ驚かない。驚愕させたのは右上のテロップだった。「 [速報] ○□市民会館で火災 17人死亡か」 いや、17というのは世間一般の数字であり、僕には18だった。事実、アナウンサーは17人と言っていたし。残る1人が誰なのか。言うまでもなく、聞くまでもない。宇宙だ。事実、家族と一緒に見た夜のニュースには犠牲者として宇宙の文字があった。
翌日も翌々日も、僕は宇宙を待った。しかし宇宙は帰ってこなかった。骨の1つすら。自分を悔いた。どうせ死ぬなら一緒に死ねばよかったんだ。宇宙は死を恐れていた。しかしいつだったか言っていた。「どうしても死ぬなら、純と一緒に死ぬ」と。それすら叶えられなかった。自分の手がいかに無力なのか、しみじみと両手を見て思った。いつにもまして、両手が冷たかった。




