第6話 社会人1年生(2)
6月。梅雨の季節に相応し、雨がざんざか降る。太陽というものを何日見てないだろうか、というほどに降っていた。しかしそれでも仕事は休みなんてない。いつものように着替え、いつものように出社する。それがいつもの流れだった。しかし今日は何か物足りない。数分考えてわかった。宇宙といっしょじゃない。忘れ物をしたふりをして大急ぎで家に戻る。しかし宇宙がいつも寝ている布団はもぬけの殻だった。見えなくなってしまったんだろうか。と思っていると机の上に書き置きを見つけた。初めて見る宇宙の字。それは雑でも、かと言って丁寧でもなく、程よい読みやすさだった。「純へ 死のうと思って一旦宇宙に里帰りすることにしました。死ぬとなったら純の顔を見たいから地球で死にます。すぐに戻ってきます」僕はその手紙をビリビリに破いて、再度会社へ向かった。普通に歩いていれば遅刻するのは目に見えていた。なので走りながらもひとつのことを考えていた。宇宙の大馬鹿野郎。軽々しく、死ぬとか言わないで欲しい。友人のいない僕に手を差し伸べたのは宇宙だ。子供と思っているわけではないが、親より先に子が逝くとかこの世界では御法度としか言い様がないだろう。それすら宇宙にはないのか。つい声に出して叫びたくなるほど、宇宙には呆れていた。
数日間、それが続いた。だからこそ、宇宙が帰っているのを見つけたときは嬉しさと怒りが半々だった。丁度会社の昼休みだったこともあって、雨降る屋上へ連れて行った。「宇宙、そんなに死にたいか。俺の顔が見たくないのか」怒りのせいか、一人称まで変わってしまった。宇宙はすぐに首を横に振った。「違う。そんなんじゃない。地球は汚れている。こんな穢れた世界に長くいられないんだ!宇宙がどれだけ快適なのか、今の地球人はわかっちゃいない!やれ火星旅行だなんだ言ってるけどな!地球の汚れをこっちに持ってこられたら清らかな宇宙は汚れていく!!そんな気持ちをわかってない奴が多いんだよ!言うなればリフレッシュみたいな感じでこっちに来たんだぞ!」妙に説得力があった。しかしそれはもはや後付けだった。気づいたときには宇宙を押していた。柵もない屋上から。すーっと、音を立てるでもなく宇宙は下に降りていった。どうせ死んでも誰も悲しまない、そんな気持ちが先行していたのかもしれない。




