人物紹介(第一部)
第一部に出てくる人だけを並べておく。 この先どうなったかは、書かない。
第一部は二〇〇四年から二〇一一年の三月まで。僕は六歳から十二歳になる。
高梨 秀真
この記録を書いている人間。 学年で一番だった。走るのも速かった。 褒められることに慣れていて、褒められないとどうなるかを知らなかった。
高梨 佳代子/母
専業主婦。短大を出て二年働き、結婚して辞めた。 料理がうまい。記憶力がいい。よく笑う。息子の友達の名前を全員覚えている。 一度も怒鳴ったことがない。
高梨 隆/父
製薬会社の営業。医者に頭を下げて生きている。 家にほとんどいない。年に何度か、短い言葉を残して出ていく。 息子に医者になれと言ったことは、一度もない。
高梨 千尋/妹
四つ下。第一部ではまだ小さい。 兄が好きで、後ろをついて歩く。 彼女には、何も習わせなかった。
大山 航/隣の家
同学年。宿題をやらない。ゲームばかりしている。給食を全部食べる。うるさい。 そして、誰よりも気前がいい。 僕を「しゅうちゃん」と呼ぶ。そう呼ぶのは、この家の外では航だけだった。
桑野先生/書道教室
八十近い。教室は自宅の和室で、生徒は五人しかいない。 上手いともへただとも言わない。 その日書いた十数枚の中から一枚だけ選んで「これ」と言う。理由は言わない。
佐倉 実咲/ピアノ教室
同学年。僕より練習量が多い。親からの管理も、たぶん同じくらい厳しい。 弾いているとき、誰も見ていないような顔をする。
森下 拓也/塾
同学年。頭がいい。口が悪い。面白い。 十歳で、この仕組みの全体を見抜いていた。 夏でも長袖を着ている。
梶原 亮太/従兄弟
母の姉の息子。三つ上。正月にだけ会う。 第一部では、名前しか出てこない。 比較の対象として。
父方の祖母
年に何度か訪ねる。 父に向かって「隆はもっとできたのにねえ」と言う。 父は言い返さない。
以上。 この中の一人が、いまの僕を作った。母ではない。




