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27.約束のプレゼント

――五回裏。


スコアボードには、4対1の数字が灯っていた。


ジャガーズは三点を追う苦しい展開。


それでもスタンドを埋め尽くした観客は、まだ誰一人として諦めてはいなかった。


実況席から江川の声が響く。


「五回裏、ツーアウト、一塁。バッターボックスには田村。カウントはフルカウントです」


球場全体の空気が張り詰める。


マウンドでは野口が何度もロジンバッグを握り直し、大きく息を吐いた。


その様子を、大地は固唾をのんで見つめていた。


両手を膝の上でぎゅっと握り締め、瞬きさえ忘れている。


幸雄も、ひとみも、誰ひとり言葉を発しない。


ただ、田村の背中だけを見つめていた。


「野口、振りかぶって――投げました!」


白球が一直線にホームベースへ吸い込まれる。


田村の身体が鋭く反応した。


――カキーン!


乾いた打球音が、大阪ドームいっぱいに響き渡る。


「打った!」


江川の声が一段高くなる。


「打球はライトへ! ぐんぐん伸びる!」


ライトが後退する。


フェンス際まで追う。


だが――。


その足が止まった。


見上げるしかなかった。


一瞬の静寂。


次の瞬間だった。


「入ったぁぁぁぁっ!」


江川の絶叫が歓声に飲み込まれる。


「田村、第十六号ツーランホームラン!


これで四対三!


ジャガーズ、一点差に迫りました!」


大歓声がドームを揺らす。


割れんばかりの拍手と歓声が、波となってスタンドを包み込んだ。


ひとみは思わず目元を押さえ、小さくつぶやく。


「大地……。


田村選手、本当に打ってくれたね……。」


その声を聞いた瞬間だった。


「やったぁぁぁ!」


大地が勢いよく立ち上がる。


何日も病室のベッドで過ごしていたことなど忘れてしまったかのように、夢中で拍手を続ける。


「タムだ! タムがホームラン打った! 本当に打ったよ!」


瞳は涙で潤みながらも、今までで一番輝いていた。


幸雄はそんな息子の姿を見つめ、胸の奥が熱くなるのを感じていた。


――約束は、果たされた。


病室で交わした小さな約束は、一振りのバットによって現実になった。


そのホームランは、ジャガーズに一点差まで迫る反撃の一打であると同時に、一人の少年へ贈られた、世界でたった一つの誕生日プレゼントでもあった。


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