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凋落の地下遺跡1

 カメラを回し始めると同時に精霊さんにコメント欄画面を投影してもらう。


 開始時点で同接数が軽く一〇〇〇を越えている。なんかもう嬉しいを通り越して怖い。『これ本当に俺の配信か?』とほっぺつねり上げたい気分である。


 ……いやいや、臆するな堂崎大地(どうざきだいち)。彼らは敵じゃない、俺を応援してくれる味方

だ。普段通り堂々と行け、堂々と!


「はい、皆さまどうも。堂崎大地です」



コメント

・来た!

・不可能を可能にした男!

・切り抜き見ました! すごかったですね!

・あれはヤバかった



 猛烈な勢いで流れるコメント欄に圧倒されつつ続ける。


「どうも先日、俺の戦う姿が他の配信者様の動画に映りこんでいたらしくて、なんかこんな騒ぎになっちゃいました。正直驚いてます」



コメント

・ちょっと声震えてるw

・緊張してますねw

・さもありなん

・丁寧だけど普段はボス倒してオラアアァァって雄叫びあげる人なんでしょ?

・猫かぶってるなw

・一番驚いてるのは撃破不能ボス倒すところ見せられた俺らだよw

ナナミン・がんばれー



 七海(ナナミン)のコメントにちょっと落ち着く。持つべきは可愛い妹である。


「それで、初めての方が大半だと思いますので俺のチャンネル方針について説明しておきます。基本はダンジョン攻略が主眼ですね。と言っても、ご存じかとは思いますがダンジョンの構造は不定期的に変化しますので、その点を念頭にあくまでも参考に留めておいてください」


 つまり、時間が経つと通路や部屋の形状・繋がりから(トラップ)宝箱(トレジャー)の位置・内容などがガラッと変わるのである。さすがに『火のダンジョンが水に』みたいな性質そのものの変化はないが。


「次に俺の総戦闘力(レベル)と戦闘スタイルを紹介しようかと思います。まずレベルですが現在は四十五ですね」



コメント

・高っ

・普通に高くて草

・まあ高威力スキル覚えてたしそれくらい行くわな

・レベル二十台で引退する探索者がゴロゴロいるなかでそれは凄い

・上級ダンジョン攻略もいけるじゃん

・レベル四十台ってだけでも強い、ましてや学生でそのレベルはやばい



「ありがとうございます。それで戦法ですが、基本的には炎の魔術系スキルを用いたアタッカーです。武器はこれを使用しています」


 俺は右手に持った木製の杖を掲げる。



コメント

・あれぇ、なんでボート()ぐやつ持ってるんですかぁ?(すっとぼけ)

・パドルロッド使いか

・結構珍しい

・扱い難しいんだよね



「はい、ご存じの方も多いパドルロッドです」


 一見、船を漕ぐ(パドル)に似た形状のこれは『櫂杖(パドルロッド)』と呼ばれる武器である。


 平たく広がった先端部には魔術系スキルの発動補助や威力増幅の機能を付与する術式が刻まれている。それだけでなく杖そのものの硬度を強化する術式までセット、おまけに敵をブン殴りやすい。


 つまり、


「これは俺の基本路線である"最前線で物理的暴力を振るいながら魔術も使う魔法使い"スタイルにピッタリの武器なのです!」



コメント

・言い方よ

・猫の皮剥げてますよ

・せめて魔法戦士とかさ

・だからその使い分けが扱い難しいって言われる原因なんだってばw

・魔法蛮族スタイル

・破天荒よくばりスタイル



 ちなみに"雷霆(らいてい)座主(ざしゅ)"と戦った際に用いた大杖はまた別の武器で、そっちは魔術スキルの威力増幅にのみ特化した代物である。


「で、今回挑戦いたしますのは『凋落(ちょうらく)の地下遺跡』。難易度は中級者向け。部屋同士を通路で繋いだスタンダードな構造の石造りダンジョンです。……それでは、さっそく攻略していきましょう!」


 俺は通路へと向かった。





 ダンジョンとしてはスタンダードな石造りの通路を進んでいくと、前方の床から赤紫色の煙がブスブスと湧き始めた。


 あれはダンジョンが魔物を出現させる前兆である。


「敵ですね」



コメント

・さて、どうするか

ナナミン・いけー

・煙の規模的に数多そうなんだよなぁ

・魔物の種類がわからんとなんとも言えん

・まず様子見

・距離を取ったほうがいい

・ソロで複数を相手するのはキツくね?

・いまなら十分逃げられる



 チラ見したコメント欄では逃げる優勢っぽいが――


「リザードマン八体。では燃やします」


 煙の規模と形状、分布から推論を弾き出し即断。


 俺はパドルロッドを構え、空中に術式を刻む。


 術式とはいわばマナの回路だ。これに空気中のマナを集めて(これは術式側が半自動でやってくれる)流し込むことで対応する各種スキルが発動する仕組みである。


 ではその回路はなにで出来ているかと言えば……これもマナである。ひとことで

"マナ"と言ってもその性質は様々なのだ。


 (たと)えれば『雪を固めて水の通路を作る』『岩を組んで砂利が流れる道を通す』ようなものだと思ってもらえればいい。


 床の赤紫煙から魔物の上半身が出てくる――同時に術式を刻み終えた俺はスキルを発動する。


 さあまず最初の見せ場だ、いっちょ気合を入れて!


「――〈火炎放射(フレイムスロワー)〉!」


 杖の先端から吹き出した火炎が魔物――事前予想の通り八体のリザードマンを飲み込む。全体を丹念に薙ぎ払うように右から左、左から右と動かす。


 動き出すまえに黒焦げにされたリザードマンたちが赤紫の煙となって消滅。その場に大半の魔物共通の戦利品(ドロップ)である魔素結晶石(魔石)や、ウロコや牙などのリザードマン固有の各種素材を残した。


 数は八体分、推論通りである。


 まずはよし、続けて有用な攻略情報を提供すれば完璧――!!





「ご覧の通り、リザードマンは二足歩行するトカゲの魔物です。出現するダンジョンは手広くこうした遺跡系から洞窟系、樹海系なんかにも現れます。火山系や雪原系などにも現れる亜種なんかも基本的には同じ性質を持っていますので参考になるんじゃないかと思います。彼らは剣や弓などの武器を持ち、仲間との連携で探索者を襲う亜人系魔物定番の特徴を持っています。武器種によってリザードマンソルジャー、同アーチャー、メイジなどの種類に細分化される点も同じです。なかでもリザードマンは比較的知能が高く例えばゴブリン辺りと比べて連携も巧妙化しています。また身体能力も全般的に優れ動作が敏捷なのでその点に注意を払いましょう。反面群れの規模はゴブリンよりも小さめですね。ゴブリンを十とすれば彼らはおおよそ六~七くらいかな? 焦らず各個撃破して数を減らしていきましょう。皮膚もそこそこ硬いウロコに覆われてますので剣など刃物で攻撃する際は狙う場所を工夫すると効率がいいです。具体的には首元、(わき)、関節の内側などの可動部が狙い目です。巷ではたまに『身体の前面はウロコに覆われていない範囲が広いから防御も薄い』と言われることもあるんですよね。いちおう事実ではありますけど現実にはたいてい鎧などで固められているため実戦的な考え方ではないですね。基本彼らは動きやすさを重視した軽鎧を好みますのでさっき言った首や腋なんかを意識したほうがいいですね。まあそうは言っても『刃を通さない』というほど硬いわけではないので特に筋力ステータス高めの方なら基本的に装備のない箇所だけ意識していればいいでしょう。弱点は氷など冷却系の攻撃、ただ耐性は全体的に並ですので炎とかでも問題なく通用します。ただしまれに属性耐性持ちの鎧やら盾やらを装備した個体もいますので変わった装備品を持ってる個体が混ざっていたら気をつけてください。ですが倒した際にそれら所持品をドロップできる可能性もありますのでがんばって狙ってみるのもいいでしょう。


 このようにダンジョンに出現する魔物の特性を覚えておけば探索を有利に進めることができます。ぜひ、覚えておきましょう」




コメント

・ぜ ひ じ ゃ ね え

・まず色々突っ込ませろw

・会話をしろ

・会話のマシンガンノック

・めっち饒舌になったなw

・すごい。濃密な情報のなかに俺らが聞きたいものがひとつも含まれてない

・『ご覧の通り』 ← ドロップしか見えないんだが

・この人おかしいよぉ

・俺らを置いていくなw

・違う、知りたいのはそれじゃない

・なんで魔物出現前に種類と数言い当てられるんですかね……

・スキル発動まで早すぎやしない?



 ……あれ? 思ってた反応と違う。

お読みいただきありがとうございます。

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