表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
25/35

妖葉樹林8

 灰色の葉を生やした多数の柳の枝が頭上から一斉に襲ってきた。


「舐めんなぁっ!!」


 ムチのようにしなる枝を櫂杖(パドルロッド)で払いのける。絡め取られる可能性を考え〈パリィ〉を発動させておく。


 パドルロッドの平部分で思いっきり弾き飛ばされた枝が霧の奥へと引っ込んでいく。


 休む間もなく新たな枝が触手のように次々と迫る。それらを紙一重でかろうじて捌いていく。


 とにかく数が多い。しかも濃霧で視界は最悪。もちろん足下の"灰色の葉"にも要注意の三連チャンだ。捌ききるのは難易度ベリハどころかヘルである。


 それでも攻撃の予兆を知る手立てはある。


 なにしろ相手はこっそり忍び寄るのを止めて激しく攻め立てているのだ。必然、葉音も派手に立つ。


 よくよく耳をすませていれば攻撃方向やタイミングを察知できなくもないのだ。


 どこぞの"瘴気の洞窟"みたいに無音で毒飛ばしてくるクソ機構(ギミック)搭載ダンジョンに比べりゃまだまだ有情。聴力と勘を総動員してとにかく〈パリィ〉&回避!


「!」


 俺の粘りに焦れたのか、細く黒い枝が束になって襲いかかってくる。それらを一度の〈パリィ〉でひとまとめに弾き返してやる。


 ほんの一瞬だが相手の攻勢に間が生じる。同時に〈パリィ〉の耐用限界。効果が消失する。


 このまま守るだけではジリ貧――そう考えた俺はすばやく攻撃術式(スキル)を刻む。


「〈ヒートエッジ〉ィッ!!」


 ふたたび伸びてきた鞭のような枝を今度は炎の刃で斬り裂いた。


 両断された枝は地面に落ちる前に紫色の煙となってかき消えていく。


「この反応、枝は魔物で確定ですね!」


 リスナーに情報を伝えつつ柳の枝を次々返り討ちにしていく。スキルの効果時間が切れたらいったん退避しつつ刻み直し、再発動。


 頭上だけではなく、側面からも枝が伸びてくる。こっそり回り込んでいたようだがあいにく察知できていた。半身を返しつつ両断する。


 一見すれば順調、だがしょせんは防戦に過ぎない。


 なにしろ相手は霧の向こうから長い枝を伸ばしてきているだけだ。それを斬っただけで討伐に繋がっているとは到底考えられない。


 その枝の攻撃も止まる気配がない。


 それどころか斬り裂いた枝の一本が再生しているのが見えた。


 つまりこのまま斬り続けてもおかわりが無料で生えてくるだけだ。


 ただでさえ難易度ヘルをギリギリでしのいでいる状態なのだ。このまま続けばいずれスタミナ切れ、およびスキルを使うための魔力切れに追い込まれる。


 かといって進むも退くもままならない――


「……?」


 と考えた時、森全体がざわめいた。


 濃霧の奥、全周囲から激しい葉音が立つ。枝が擦れる音があちこちから聞こえる。虫たちも狂ったような鳴き声を響かせる。


 なんだ?


 なにかの大技か?


 予想ができない。うかつに動けない。スキルを刻み直して周囲を警戒。


 音がやかましい。これでは攻撃の予兆が分かりづらい――ああ、そういうことか。



 こっちが音で攻撃を察知しているのに気づいたのか。


 だから単純な方法で対処(じゃま)してきた、と。


 難易度ヘルギミックがクソギミックへ進化した、と。



「ッンちくしょおがぁっ!!」


 気づくと同時に柳の枝が全方位から一斉に伸びてきた。同時に〈ヒートエッジ〉再発動。その場で一回転、全周囲から槍のように迫る枝をまとめて薙ぎ払う!


 間髪を入れず迫る細い枝。パドルロッドをひたすら振り回しながらガムシャラに斬り払う。


 スキル効果消失。それでも枝は止まらない。武器を振り上げて追い散らす。


 が、スキルの乗っていないうえ体勢にも無理があった。隙を突かれ一本の枝に杖が絡みつかれる。


 クソッ!


 咄嗟に武器を手放す。死ぬほど惜しいが迷いは命取りだ。すばやくその場から跳んで退避――



「――足下ッ!! 葉っぱッ!!」



 瞬間、女性の声が耳朶を打った。


 反射的に視線を地面に這わす。例の灰色の葉が滑るようにこちらへ向かってくるのが見えた。


「っぶねぇっ!!」


 着地、即座にステップ。ギリギリで回避。


 あの葉動くのかよ! 警告がなけりゃ引っかかってたところだよ!


「はぁっ!!」


 霧の奥からひとつの人影が飛び込み、右手を一閃。


 握られているのは刀だった。俺の杖を絡め取った枝が切り裂かれる。パドルロッドが地面に落ちる。


「助かりましたっ!!」


 声の主へ言いつつすばやく回収する。


 いったい誰だろうか。心当たりはない。振り向いて人影を確認する――



「まだ油断しちゃダメよ!」


 ――そこには、刀を持った二足歩行の白狐が立っていた。



 端的に言って、ケモかった。


お読みいただきありがとうございます。

『謎のケモの正体は一体!?』と思われた方は下部からブックマークおよびポイント評価(☆マーク)をお願いいたします。

執筆の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ