妖葉樹林3
「この魔物は大狼ですね! 数はざっと十数体ほどぉっ! 森などを始めとしたぁ屋外系ダンジョンに広く出現する魔物でらぁあっ!! 攻撃手段は獣型の定番体当たり噛む爪で裂くのハッピーセットその隙へ〈ファイアボール〉ッ!! 群れによる連携攻撃が得意でぇっ個体ごとにそれぞれ追い込み退路断ちトドメの役割が〈ありまットエッジ〉ィッ!!」
コメント
・あ、戦闘に集中してもらって結構ですので……
・混ざってる混ざってる
・勝手にスキル捏造するなw
ナナミン・がんばれー
・マルチタスクの落とし穴(なお誰も通らない道に空いてる模様)
・こんなでも敵の動きはきっちり見切ってるのな
・すげえ早さで敵減ってる
解説しつつ超大型犬ほどの体格のダイアウルフをいなす。
いま襲ってきているのは追い込み役だ。標的を攻め立てて後方に退避させるのが役割である。そして背後に回り込んでいた個体が退路を断つ。獲物が混乱し疲弊しているところを群れの実力者が一気に襲いかかり仕留める。
牙と俊敏さに意味を与えて振るう、野生のなかで磨き上げられた戦術。持久戦ではなく短期戦という大きな違いはあれどおおむね地球の狼に似た生態である。
裏を返せば"同時に"攻めてくる数には限りがあるということだ。群れのすべてがまとめて襲ってくる訳ではない。個体ごとの役割を見極めたうえで冷静に数を減らしていけばいい。
スキルを併用しつつ一体、また一体と倒していく。ダイアウルフの身体能力は高いがさすがにオークほどのタフさは持ち合わせていない。さして時間もかからずのこり三体まで減らす。
「頃合いですかね! つー訳で実験しようぜ! お前被験者な!」
一体のダイアウルフを誘い込んで突進を避け、その尻へ全体重をかけた渾身の蹴りを見舞う。勢いを殺しきれなかった大狼を首尾よく灰色の葉へとブチ込む。
変化は明白だった。
瞬間、足下の葉が舞い上がり踊るようにダイアウルフの全身へまとわりつく。同時に赤い光が大狼の体を包み込む。
あれはなんらかの魔力効果が発揮されたものと見ていいだろう。やはりただの落葉ではなかったか。
別の個体へ〈魔力吸収〉を振り下ろしながら観察を続ける。灰色の葉に引っかかった個体が吠え、俺に飛びかかろうとする。
だが動きにキレがない。筋肉のしなやかな連動が生み出すあの躍動感が失われている。蹴りのダメージだけでは説明がつかないほどの鈍さだ。
「ふっ!」
櫂杖を振るって易々と返り討ちにする。その場に魔石と素材を残し、ダイアウルフは赤紫の煙と消えた。
「急に動きが鈍くなりましたがあれは葉の効果でしょうか? このまま検証を重ねてみます!」
そう言いつつ灰色の葉へと視線を移す――も、その場にはなにもない。あのくすんだアッシュグレイの群れが影も形も見当たらない。
これは……効果が発動したから消えた?
一度きりってことか?
思考しつつも横合いから飛びかかるダイアウルフを避ける。その背を追った視線がまったく別の箇所にある灰色の葉を捉えた。
記憶違いでなければあそこにはなかったはず。舞い上がったあとあそこへ落ちたのか?
だがああもまとまって落ちるものか?
それとも新たに出現したのか?
なんであれ確かめるまでだ。
「はーいお客様一名ごあんなーいッ!!」
一体の大狼をさきほどと同じ要領で灰色の葉へと蹴り飛ばす。
葉が舞い光に包まれる魔物。今度は青い光だった。
瞬間、ダイアウルフの身体から魔力の波長が放出された。
視覚的に見えた訳ではない。感覚的にそれを捉えたのだ。脳がザワッとする感覚。
俺の魔力探知は並程度の技量しかないがそれでも容易に感じ取れる。波長を『拾い上げる』というよりむしろ『押し込められる』ほどの強さだ。たとえ物陰に隠れていようが暗闇で息を潜めていようが簡単に見つけられるだろう。
なにかのスキルを使用した可能性は? いや、その気配はない。あの葉の影響と見て間違いない。
『VOWッ!!』
ダイアウルフが駆ける。その動きは変わらず俊敏だ。荒々しくも洗練された疾駆。あっという間に距離を詰めて飛びかかってくる。
さっきと効果が違う?
内心首をかしげながらも鋭い牙を避け反撃の〈ヒートエッジ〉。櫂のフチ部分に沿って形成された炎の刃が大狼の胴体を容赦なく両断。泣き別れにされた胴体はふたたび地面に触れることなくそのまま虚空へとかき消える。
すぐに灰色の葉を確認。またもやその場からなくなっていた。さっと視界を巡らすがどこにも見当たらない。
やはり効果は一度きりなのか――そう考えながら側面から襲ってきた最後の一体にパドルロッドを振り下ろす。脳天を叩き割られたダイアウルフは地面に倒れ伏し、そのまま消滅した。
これで全滅である。
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