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妖葉樹林2

 "妖葉ようよう樹林"の名の通り、周囲は大小様々な樹木に囲まれていた。


 標準的なダンジョンのような壁・通路・部屋の区別はない。場の空気的には一見、開放的なように思える。


 だが実際には濃密な草や高低さまざまな木々、あいだに張り巡らされたつる植物などによって進路は大きく制限されるうえ見通しもかなり悪い。たまに開けた空間(へや)に出ることもあり、感覚的には人工の建物内を探索している時とさして変わらない。


 むしろ探知能力の高い魔物であれば『壁』の向こうから俺を発見できるだろうし小型の魔物や俊敏な魔物ならば『壁』を無視して移動できる。普段以上に周囲へ注意を払わなければならないだろう。敵方に有利な空間だと言える。


 もっともダンジョン探索とはすなわち敵のホームグラウンドへ足を踏み入れる行為である。こちらが不利なのは今更だ。そういう意味では普段と同じだ。油断も気後れもせず、ほんのり湿り気を帯びた黒土を蹴って歩いていく。


 その後しばらくは接敵することなく薄暗い森を進んでいった。遠くからかすかに聞こえる葉音。頭上から届く虫の羽音。だが見上げても密集した枝葉のせいで空、というより天井は見えない。


 だが光量そのものに問題はない。いかなる魔力の働きか、ダンジョン内は基本的に照明要らずの空間なのである。


 そうしてつつがなく動いていた足が、ふと止める。


「……見えますか? あそこの地面に灰色の葉が散っていますが、あれは一体なんでしょうかね」


 緑の濃淡が支配する地面にアッシュグレイの細長い葉たちが半径五十センチメートルほどの範囲にまとめて敷かれている。


 ぱっと見は燃えカスか枯れ葉かに思えるがよくよく見れば表面にツヤがある。ついさっき枝から落ちたばかりのように瑞々しいが頭上の樹木は濃い緑色の広葉。明らかに不自然である。


 "落葉すると形が代わって灰色になる異世界産のそういう樹木"という可能性もゼロではないかも知れないが……もっと単純に作為の匂いがする。このダンジョン特有のなにがしか、と見るべきだろう。


 事前に調べた情報にはなかったが……たぶん目撃した探索者たちが"怪しい"と感じて近づかなかった結果だろう。ここの攻略者自体が少ないし、分からないのも不自然ではない。そもそも俺の調べ方も甘いし

(検索かけて適当なサイト眺めただけ)。



コメント

・どう考えてもなんかある

・罠とか?

・形状的に柳の葉かな?

・実は魔物説に一票

ナナミン・毒とか?

・妹さん!?

・メインコンテンツ来たああああああああああ!!

・そのアイコン、管理者(モデ)権限貰ったんですね

・出世したなあ

・毒ですね

・俺も最初から毒だと思ってた

・絶対毒だよね



 (ナナミン)の登場で空気変わったのは置いといて。


「毒と仮定した場合でも『食べなきゃセーフ』なのか『触れるだけで影響あり』なのかが分からないんですよね」


 そもそも最初から触れさえしなければなんの問題もない。


 だが万一触れさせられた(・・・・・)場合はどうなるのか。例えば魔物に、例えばダンジョンの機構(ギミック)によって。


 それに情報共有すれば他の探索者の攻略の手助けになる。リスナーたちも話題に食いついているし、配信的にも都合がいい。なによりダンジョンの未知を解き明かすために骨を折るのはやぶさかでない。


 探索を開始したばかりのいまこそ、気力体力魔力が充実しているいま現在だからこそ検証を行う絶好の機会である。


「あの葉がいったいなんなのか、検証してみましょう」


 精霊さん(カメラ)に向けて言いつつ適当な小石を拾い上げる。


「魔物である可能性も視野に入れ、まずこれを投げて反応を見てみましょう」



コメント

・やったれ

・爆発したりして

・爆発オチなんてサイテー!

・油断しないように



「ではいきます」


 一〇メートルほどの距離から下手で投げる。転がりながら通過。反応なし。


 少し近づいて石を投げる。今度は分布半径内で停止。反応なし。何度か距離を詰めて同様に。いずれもすべて反応なし。


「次はスキル〈情報表示〉を試してみます」


 このスキルをアイテムに使えば名称や効果が、魔物に使えば名称や総戦闘力(レベル)が空中投影文字によって表示される。だが反応なし。


 続けて〈罠探知〉。このスキルは床や壁などに隠された罠に反応して警告表示を出す。もちろん暴かれた罠に直接使用しても同じだ。しかし反応なし。


 どうやら魔物・アイテム・罠のいずれでもないらしい。もっとも魔物の擬態までは見破れないし、俺のさして高くない探知スキルの技量より対象の隠匿スキル技量が上回れば見破れない。まだなにも断定できない。


「ひとまず魔物や罠ではないと仮定はできますが……確実ではありません。それ以上のことは分からないですね」



コメント

・堅実に調べててえらい

・単にそういう植物じゃね?

・毒説を推す

・スキルの効果にも限界あるからなー



「俺が直に触って確かめれば確実なのですが。それは次善策としておきたいんですよね」



コメント

・下策だよw

・なぜそれが二番目w

・普通は最悪の手段なんだよw

・出たわねダンジョン小僧

・身を削りすぎw

ナナミン・だから無茶はやめなさいとあれほど



「そりゃあ嫌は嫌ですけど。でも判明すれば気分もスッキリしますし、情報は今後も無駄になりませんし。総合的には得ですよね」


 最初にその辺の枝で触れて、それでも枝や俺自身に異変がなければ満を持してまず左の小指から……などと段取りを立てていた時。かすかに茂みが揺れる気配を感じ取った。


 すぐに武器を構えてそちらを注視。いや、周囲からも同様の気配がする。


 おそらく魔物。囲まれている――そう考えた瞬間、四足歩行の獣が次々と飛び出してきた。


「っしゃモルモット確保ぉ――――――ッ!!」



コメント

・第一声がそれかw

・草

・外道かな?

・妖怪め

・人の心とかないんか?



 俺は速攻で魔物たちに飛びかかった。

お読みいただきありがとうございます。

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